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セロハンテープが「キーッ!」と鳴く理由が判明 音速超える亀裂のイタズラ

2026 2/28
テクノロジー
2026年2月28日
🕑この記事は約5分で読めます
シルミー

はかせ、セロハンテープを剥がすときに変な音がするのって何で?

はかせ

あの「キーッ!」って音ですね。実は、テープの中で音速を超える亀裂が走っているんです

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、この謎を解明した。研究結果はPhysical Review Letters誌に掲載されている。

目次

テープを剥がすと何が起きているのか

セロハンテープを剥がす様子
Photo by Savons Arthur on Unsplash

超高速カメラが捉えた衝撃波

研究チームはまず、毎秒100万フレームで撮影できる超高速カメラを使って、テープを剥がす瞬間を観察した。普通のカメラでは絶対に見えない、ミクロの世界の出来事を捉えるためだ。

すると驚くべきことが分かった。テープの接着面に沿って、無数の微細な亀裂が次々と発生していたのだ。しかもこの亀裂の移動速度は、なんと秒速340メートル以上。音速を超えている。

音速を超える物体が空気中を進むと、戦闘機が作り出すような衝撃波が発生する。テープの中でも同じことが起きていた。亀裂が音速を超えて進むとき、周囲の材料に衝撃波を発生させる。この衝撃波が、あの耳障りな音の正体だったのだ。

亀裂は一定速度で進まない

研究チームのリーダーであるマイケル・パターソン博士は、もう一つ面白い発見をした。亀裂の速度は一定ではなく、断続的に加速と減速を繰り返すというのだ。

まるで渋滞する高速道路のように、亀裂は「進んでは止まり、進んでは止まり」を繰り返す。この加減速のたびに、異なる周波数の音が発生する。これが「キーッ!」という複雑な音色を作り出していた。

粘着剤の種類で音が変わる理由

実験では、5種類の異なるテープを使って比較を行った。すると、粘着剤の化学組成によって、音の高さや大きさが大きく変わることが判明した。

特に興味深かったのは、アクリル系の粘着剤を使ったテープだ。このタイプは亀裂の速度が最も速く、秒速400メートル近くに達した。一方、ゴム系の粘着剤は亀裂の進行が遅く、音も小さかった。

なぜ今までこの現象が解明されなかったのか

超高速で進む亀裂のイメージ
Photo by Michael Petrila on Unsplash

観測技術の壁

セロハンテープが音を立てることは、誰もが知っている。だが、その原因を突き止めるのは驚くほど難しかった。理由は単純で、現象があまりにも速すぎるからだ。

1960年代から、何人もの研究者がこの謎に挑戦してきた。しかし当時の技術では、音速を超える亀裂の動きを捉えることができなかった。ようやく2020年代に入り、超高速撮影技術と音響センサーが進化したことで、この研究が可能になった。

複雑すぎる材料の挙動

もう一つの壁は、テープという材料の複雑さだった。テープは単なるプラスチックフィルムではない。基材フィルム、粘着剤層、剥離層という3つの層が重なった構造をしている。

剥がすとき、この3層がそれぞれ異なる挙動を示す。粘着剤は伸びたり切れたりし、フィルムはしなり、剥離層は滑る。これらの複雑な相互作用を数式で表現するのは、至難の業だった。

パターソン博士のチームは、分子動力学シミュレーションという手法を使って、この問題を解決した。コンピューター上で粘着剤の分子一つ一つの動きを再現し、マクロな現象との関係を明らかにしたのだ。

この発見は何の役に立つのか

医療用粘着テープ
Photo by Markus Winkler on Unsplash

静かに剥がせるテープの開発

最も直接的な応用は、音が出ないテープの開発だ。オフィスや図書館で、テープを剥がすたびに周囲に響く「キーッ!」という音。実は多くの人がストレスに感じている。

今回の研究で、亀裂の速度を音速以下に抑えれば、衝撃波が発生しないことが分かった。粘着剤の配合を調整すれば、静かに剥がせるテープを作れる可能性がある。

医療用テープへの応用

もう一つの応用先は、医療現場だ。病院では毎日、無数の絆創膏や医療用テープが患者の肌から剥がされている。このとき、皮膚へのダメージが問題になる。

研究チームは、亀裂の進行パターンと皮膚への負担には相関関係があることを発見した。亀裂が断続的に進むタイプの粘着剤は、皮膚を引っ張る力が大きい。逆に、亀裂が滑らかに進むタイプは、皮膚への負担が小さい。

この知見を応用すれば、高齢者や乳幼児の繊細な肌にも優しいテープを開発できる。米国食品医薬品局(FDA)も、この研究に注目しているという。

産業用接着剤の品質管理

さらに意外な応用先が、工場の生産ラインだ。自動車や電子機器の製造では、接着剤を使った部品の組み立てが欠かせない。このとき、接着の品質を検査する必要がある。

従来は、接着した部品を実際に引き剥がして、強度を測定していた。しかしこの方法では、製品を壊してしまう。パターソン博士は、剥離時の音を分析することで、非破壊で接着品質を評価できると提案している。

音のパターンから、接着剤が均一に塗布されているか、気泡が混入していないかなどを判定できる可能性がある。実用化されれば、製造コストの削減につながる。

シルミー

たかがテープの音なのに、こんなに色々応用できるんだね!

身近な現象の中に、実は深い科学が隠れている。セロハンテープの「キーッ!」も、その一つだった。パターソン博士のチームは現在、他の粘着テープや接着剤でも同様の研究を進めているという。

参考文献:
Scientists crack the case of “screeching” Scotch tape
出典: Ars Technica

アイキャッチ画像: Photo by Pawel Czerwinski on Unsplash

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