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セロハンテープが「キーッ!」と鳴く理由が判明 音速超える亀裂のイタズラ

2026 4/18
テクノロジー
2026年2月28日2026年4月18日
🕑この記事は約4分で読めます

セロハンテープをロールから引っ張るとき、あの「キーッ!」という耳障りな音が鳴る。オフィスでも教室でも、誰もが経験しているはずだ。

「接着面が剥がれるときの摩擦音でしょ?」――多くの人はそう思っている。だが実際の原因は、想像をはるかに超えていた。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームがPhysical Review Letters誌に発表した答えは、「テープの中を音速を超える亀裂が走っている」というものだった。

目次

「摩擦の音」ではなかった

セロハンテープを剥がす様子
Photo by Savons Arthur on Unsplash

テープを剥がすと音がする。素朴に考えれば、粘着面がくっついた相手から離れるときの「ベリベリ」という剥離音だろう。実際、1960年代からそう考えた研究者が何人もいた。

しかし音を録音して周波数を分析すると、摩擦音では説明できない高周波成分が含まれていた。何か別のメカニズムが働いている。それが分かっていながら、正体がつかめなかったのだ。

壁になったのは現象の速さだった。テープの接着面で起きている出来事は、人間の目はもちろん、従来のカメラでも捉えられないほど高速だった。ようやく2020年代に入り、超高速撮影技術と音響センサーが進化したことで、MITのチームがこの60年越しの謎に挑むことができた。

音速を超える亀裂 — 本当の正体が見えた

超高速で進む亀裂のイメージ
Photo by Michael Petrila on Unsplash

毎秒100万フレームが捉えたもの

研究チームは毎秒100万フレームで撮影できる超高速カメラを使い、テープを剥がす瞬間を観察した。すると、接着面に沿って無数の微細な亀裂が次々と発生していた。

しかもこの亀裂の移動速度は秒速340メートル以上。音速を超えている。戦闘機が音速を超えるとソニックブームという衝撃波が生まれるのと同じ原理で、テープの中でも衝撃波が発生していた。これがあの「キーッ!」の正体だ。

「進んでは止まり」の断続パターン

研究チームのリーダーであるマイケル・パターソン博士は、さらに面白い発見をした。亀裂は一定速度では進まない。渋滞する高速道路のように、加速と減速を断続的に繰り返すのだ。

この加減速のたびに異なる周波数の音が発生し、それが混ざり合って「キーッ!」という複雑な音色になっていた。テープの音が単純な「ピー」ではなく、不快な叫びのように聞こえるのはこのためだ。

粘着剤が音の高さを決める

5種類のテープで比較実験を行うと、粘着剤の化学組成で音が大きく変わることが判明した。アクリル系は亀裂速度が最も速く秒速400メートル近くに達し、甲高い音を出す。一方ゴム系は亀裂の進行が遅く、音も小さい。

シルミー

テープの種類で音が違うのって、そういうことだったんだ!

テープの3層構造という難問

解明が遅れたもう一つの理由は、テープが見た目以上に複雑な材料だからだ。基材フィルム、粘着剤層、剥離層の3層構造で、剥がすときに各層が異なる挙動を示す。パターソン博士のチームは分子動力学シミュレーションで分子一つ一つの動きを再現し、マクロな現象との関係をようやく解き明かした。

テープの「音」から広がる科学

医療用粘着テープ
Photo by Markus Winkler on Unsplash

静かに剥がせるテープは作れるのか

亀裂の速度を音速以下に抑えれば衝撃波は発生しない。つまり粘着剤の配合を調整すれば、音が出ないテープを作れる可能性がある。オフィスや図書館であの音に悩まされなくなる日が来るかもしれない。

肌に優しい医療用テープへ

亀裂が断続的に進むタイプの粘着剤は、皮膚を引っ張る力が大きい。逆に亀裂が滑らかに進むタイプは皮膚への負担が小さい。この知見を応用すれば、高齢者や乳幼児の繊細な肌にも優しいテープを開発できる。米国食品医薬品局(FDA)も注目しているという。

音で接着品質を見抜く

さらに意外な応用が、工場での非破壊検査だ。自動車や電子機器の製造では接着剤の品質検査が欠かせないが、従来は部品を引き剥がして壊すしかなかった。パターソン博士は、剥離時の音パターンから接着品質を評価できると提案している。接着剤が均一か、気泡が混入していないかを、音で判定できる可能性がある。

次にテープを引っ張るとき、あの「キーッ!」が聞こえたら思い出してほしい。その小さな音の中で、音速を超える亀裂が走っていることを。

参考文献:
Scientists crack the case of “screeching” Scotch tape
出典: Ars Technica

アイキャッチ画像: Photo by Pawel Czerwinski on Unsplash

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この記事を書いた人

シルミー編集者のアバター シルミー編集者

科学メディア「シルミー」の運営者。子供の頃から宇宙や生き物の図鑑を読みあさり、大人になった今も科学ニュースを追いかける日々。海外の学術メディアから面白い研究を見つけて、日本語でわかりやすく届けることをライフワークにしています。

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