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太陽の熱を半年も貯められる液体が誕生! 冬に夏の暖かさを取り出せる?

2026 2/27
テクノロジー
2026年2月27日
🕑この記事は約6分で読めます
シルミー

はかせ、夏の太陽の熱を冬まで取っておけたらいいのにって思わない?

はかせ

実はそれ、もう実現しつつあるんですよ。スウェーデンの研究チームが、太陽の熱を液体に閉じ込めて、数ヶ月後に取り出せる技術を開発したんです

チャルマース工科大学の研究チームが開発した液体は、太陽光を浴びると分子の形が変わり、そのエネルギーを化学結合として保存できる。まるで電池のように熱を蓄えておいて、必要なときに暖房として使える仕組みだ。

目次

分子が形を変えて熱を閉じ込める仕組み

分子構造の変化を示すイメージ
Photo by Omar:. Lopez-Rincon on Unsplash

ノルボルナジエンという特殊な分子

この技術の主役はノルボルナジエンという炭素と水素からできた分子だ。普段は透明な液体だが、太陽光を浴びると分子の構造が変化する。

変化後の分子はクアドリシクランと呼ばれ、元の形よりもエネルギーが高い状態で安定する。これは坂を登ったボールが頂上で止まっているようなもので、外から刺激を与えない限りそのままの状態を保つ。

研究チームはこの分子を改良し、18個の炭素原子を持つ大型バージョンを作った。分子が大きくなると、より多くのエネルギーを蓄えられるようになる。

触媒で一気に熱を取り出す

蓄えた熱を取り出すには、コバルト触媒を使う。この触媒に液体を通すと、クアドリシクランが元のノルボルナジエンに戻る反応が起きる。

このとき、坂の上にあったボールが一気に転がり落ちるように、化学結合に閉じ込められていたエネルギーが熱として放出される。研究チームの実験では、液体の温度が63度まで上昇した。

触媒を通すタイミングは自由に選べるため、夏に蓄えた熱を冬まで保存しておき、暖房が必要なときに使うことができる。実際の保存期間は最長18年間という計算結果も出ている。

MOSTシステムの全体像

この技術はMOST(Molecular Solar Thermal Energy Storage)と名付けられた。システム全体は4つの部分からできている。

まず屋根に設置された透明なパネルで太陽光を集める。液体はパイプを通ってこのパネルに流れ込み、紫外線を吸収して化学変化を起こす。変化した液体は地下のタンクに貯蔵される。

熱が必要になったら、液体を触媒装置に通す。熱を放出した液体は再びパネルに送られ、また太陽光を吸収する。このサイクルを何度でも繰り返せるのがこのシステムの強みだ。

従来のエネルギー貯蔵との決定的な違い

太陽エネルギーを貯蔵するシステムのイメージ
Photo by Daniele La Rosa Messina on Unsplash

バッテリーは長期保存に向かない

太陽光発電で作った電気をバッテリーに貯める方法はすでに普及している。しかしリチウムイオン電池は自然放電するため、数ヶ月単位での保存には向かない。

また、バッテリーは容量が大きくなるほど高価になる。一般家庭用の蓄電池でも100万円以上するものが多く、夏から冬まで使える容量となると莫大なコストがかかる。

MOSTシステムは化学結合として保存するため、放電の心配がない。液体を大きなタンクに入れておけば、ほぼ無限に保存できる。

お湯を貯めるのとどう違う?

太陽熱温水器も熱を利用する技術だが、これは文字通りお湯を貯めているだけだ。断熱タンクに入れても、数日経てば冷めてしまう。

MOSTの液体は常温で保存できる。タンクを断熱する必要もなく、夏に集めた熱を冬まで持ち越せる。これは化学エネルギーとして保存しているからこそ実現できる芸当だ。

また、お湯を運ぶには断熱配管が必要だが、MOST液体は普通のパイプやトラックで運べる。離れた場所に熱を届けることも可能になる。

他の研究との性能比較

分子に太陽エネルギーを貯める研究は以前からあった。MITのチームも似た技術を開発しているが、触媒が高価な白金を使うため実用化のハードルが高い。

チャルマース工科大学のチームは安価なコバルト触媒を使い、さらに分子設計を工夫することでエネルギー密度を2倍に高めた。1キログラムの液体に250ワット時の熱を蓄えられる計算になる。

これは同じ重さのリチウムイオン電池とほぼ同等だが、MOSTは電気ではなく熱として取り出すため、暖房用途では変換ロスが少なく効率がいい。

実用化への道のり

冬の暖房で暖まる家のイメージ
Photo by Wolfgang Hasselmann on Unsplash

まだ残る技術的課題

実験室レベルでは成功しているが、実用化にはまだ壁がある。最大の課題は変換効率だ。

現在のシステムでは、太陽光のエネルギーのうち液体に蓄えられるのは約1.1%にとどまる。これは分子が紫外線しか吸収できないためだ。太陽光の大部分を占める可視光を使えていない。

研究チームは分子構造を改良し、可視光にも反応する新しいバージョンを開発中だ。これが実現すれば効率は大幅に向上する見込みだ。

コスト削減の見通し

量産化されていない現時点では、液体の製造コストが高い。しかし研究を主導するカスパー・モス・ペダーセン教授は「大量生産すれば従来の暖房システムと競争できる価格になる」と語る。

触媒に使うコバルトは白金より安価で、リサイクルも可能だ。システム全体で見ても、特別な高圧装置や極低温設備が不要なため、製造コストを抑えやすい。

すでにスウェーデン国内で小規模な実証実験が始まっており、実際の住宅に設置して冬季の暖房に使えるかテストしている。

北欧の冬を救う技術になるか

スウェーデンやノルウェーなど北欧の国々では、冬の暖房が大きなエネルギー消費源だ。夏は白夜で太陽が沈まない一方、冬は日照時間がわずか数時間しかない。

MOSTシステムがあれば、夏の余った太陽光を液体に蓄えておき、暗く寒い冬に暖房として使える。これは北欧にとって理想的なエネルギーサイクルだ。

さらに、液体はトラックで運搬できるため、日照条件のいい南部で蓄えたエネルギーを北部に届けることも可能になる。化石燃料の代わりに、太陽エネルギーを「輸送」できる時代が来るかもしれない。

シルミー

夏の太陽を冬まで取っておけるなんて、まるで魔法みたい!

実用化にはまだ時間がかかるが、この技術が完成すれば暖房だけでなく、工場の熱源や車の暖房など幅広い用途に使える可能性がある。太陽の恵みを無駄なく活かす未来が、すぐそこまで来ているのかもしれない。

参考文献:
A fluid can store solar energy and then release it as heat months later
出典: Ars Technica

アイキャッチ画像: Photo by Laura Ockel on Unsplash

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