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  3. 女性の慢性痛が長引くのはなぜ? 性ホルモンが痛みの記憶を作っていた

女性の慢性痛が長引くのはなぜ? 性ホルモンが痛みの記憶を作っていた

2026 3/21
人体・医学
2026年3月21日
🕑この記事は約6分で読めます
シルミー

はかせ、女の人の方が痛みが長く続くって聞いたんだけど、本当なの?

はかせ

実は本当なんです。そして今回、なぜ女性の慢性痛が長引くのか、脳の仕組みから解明されたんですよ

「気のせいでしょ」「大げさじゃない?」そんな言葉を浴びせられた経験がある女性は少なくない。でも、それは気のせいではなかった。ラトガース大学の研究チームが、女性の慢性痛が男性より長く続く理由を、脳のメカニズムから明らかにした。研究結果はScience Advances誌に掲載されている。

目次

痛みは脳に記憶される

脳のスキャン画像
Photo by Pawel Czerwinski on Unsplash

痛みを覚えているのは体じゃなく脳

慢性痛は、ケガが治った後も続く痛みのことだ。例えば捻挫が治っても、その場所が何ヶ月も痛み続けることがある。実はこれ、体に問題があるわけじゃない。脳が痛みを記憶しているから起きる現象なんだ。

脳の海馬という部分は、出来事を記憶する場所として有名だ。「去年の夏、海に行った」みたいな思い出を保存している。でも最近の研究で、海馬は痛みの経験も記憶していることが分かってきた。

ちょうどトラウマ的な出来事を思い出すと心臓がドキドキするように、脳に刻まれた痛みの記憶が、実際に痛みを感じさせ続けるわけだ。

女性ホルモンが記憶を強化する

ここからが今回の発見のポイントだ。研究チームはマウスを使った実験で、エストロゲンという女性ホルモンが、海馬での痛みの記憶を強化することを突き止めた。

具体的には、海馬にあるBDNFというタンパク質の量が、メスのマウスでオスの約1.5倍に増えていた。BDNFは「脳由来神経栄養因子」の略で、神経細胞をつなぎ合わせて記憶を定着させる働きがある。

つまり女性ホルモンが、痛みの記憶をより強く、より長く脳に刻み込んでいたんだ。だから同じケガをしても、女性の方が慢性痛になりやすく、回復にも時間がかかる。

遺伝子レベルでも違いがあった

研究チームはさらに詳しく調べるため、海馬の細胞を遺伝子レベルで解析した。すると、NR2Bという遺伝子の活動が、メスのマウスで特に高まっていることが判明した。

NR2Bは痛みの信号を受け取る受容体を作る遺伝子だ。この受容体が増えると、脳は痛みの信号をより敏感にキャッチするようになる。つまり同じ強さの痛みでも、女性の脳はより強く感じ取ってしまう設計になっていた。

なぜ女性だけこんな仕組みを持っているのか

腰痛に悩む女性
Photo by Brooke Cagle on Unsplash

出産の痛みを記憶するため?

じゃあなぜ、女性の脳は痛みを強く記憶するようにできているんだろう? 研究者たちは、出産と関係があるんじゃないかと考えている。

出産は人生で最も強い痛みの1つと言われる。もしこの痛みを脳がしっかり記憶していなかったら、2人目、3人目を産むとき、体が十分に準備できないかもしれない。痛みの記憶が、次の出産に備えるための「学習」になっている可能性がある。

ただしこれはまだ仮説の段階で、今後の研究で確かめる必要がある。

月経周期でも痛みの感じ方が変わる

女性ホルモンの影響は、月経周期によっても変化する。エストロゲンの量は生理が終わった後に増え、排卵期にピークを迎える。このタイミングで痛みを感じやすくなる女性は多い。

逆に生理中はエストロゲンが減るので、痛みの記憶は弱まる。でも今度はプロスタグランジンという別の物質が増えて、生理痛を引き起こす。女性の体は、常にどこかで痛みと向き合っているわけだ。

慢性痛患者の7割が女性

実際、慢性痛を抱える患者の約70%は女性だ。線維筋痛症、片頭痛、関節リウマチなど、痛みが主症状の病気は圧倒的に女性に多い。

これまでは「女性は痛みに敏感だから」「ストレスを感じやすいから」といった曖昧な説明しかなかった。でも今回の研究で、脳の構造とホルモンの関係という、生物学的な根拠が示された。

新しい治療法につながるか

医学研究室
Photo by Navy Medicine on Unsplash

BDNF受容体を狙った薬の開発

研究チームは現在、BDNF受容体の働きをブロックする薬の開発を進めている。もしこの薬が実用化されれば、女性の慢性痛を根本から治療できるかもしれない。

既存の痛み止めは、痛みの信号を一時的に遮断するだけだ。でも脳に記憶された痛みには効果が薄い。新しいアプローチは、痛みの記憶そのものを弱める、あるいは消すことを目指している。

性別を考慮した医療の必要性

今回の研究は、医療における性差の重要性を改めて浮き彫りにした。これまでの医学研究は、主に男性の体を基準に進められてきた。でも痛みに関しては、男女でまったく違うメカニズムが働いている。

研究を率いたトレーシー・ジバウド博士は、「女性患者が『痛みは気のせい』と言われてきた歴史に、科学的な答えを出せたことが嬉しい」とコメントしている。

男性の慢性痛はどう違う?

では男性の慢性痛はどう起きるのか? 実は男性でも慢性痛は存在するが、脳の別の部位が関わっていると考えられている。特に扁桃体という、感情を処理する部分が関係しているらしい。

つまり男性と女性では、同じ「慢性痛」でも、脳の使う回路が違う。だから治療法も、性別に応じて変える必要がある。今後は「男性用の痛み止め」「女性用の痛み止め」という分け方が出てくるかもしれない。

シルミー

じゃあ、女の人が痛いって言ってるのを信じなきゃダメだね

はかせ

その通りです。痛みは目に見えないけど、脳では確実に起きている現象なんですよ

慢性痛に苦しむ人は世界中に何億人もいる。そのうちの大半が女性だ。今回の研究は、長年「心の問題」として片付けられてきた女性の痛みに、生物学的な裏付けを与えた。新しい治療法の開発には時間がかかるが、少なくとも「気のせい」ではないことが証明された意味は大きい。

参考文献:
Study probes why chronic pain lasts longer in women
出典: Medical Xpress

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人体・医学
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