はかせ、宇宙に腐った卵みたいな匂いがする惑星があるって本当なの?
本当なんです! ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、硫化水素という物質が大気に含まれた惑星を見つけたんですよ
地球から64光年離れた場所にある惑星HD 189733b。この惑星の大気には、温泉街や腐った卵の匂いで知られる硫化水素が含まれていることが分かった。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測で、太陽系外惑星で初めて硫化水素が検出されたのだ。
HD 189733bってどんな惑星?


木星より大きなガス惑星
HD 189733bは、木星よりわずかに大きいガス惑星だ。地表がない巨大なガスの塊で、主星のすぐ近くを回っている。地球から太陽までの距離のたった30分の1しか離れていない。そのため表面温度は約900度にもなる。
この惑星はホットジュピターと呼ばれるタイプに分類される。木星のような巨大ガス惑星が、なぜか恒星のすぐ近くを周回している天体のことだ。太陽系にはこのタイプの惑星が存在しないため、発見当初は天文学者を驚かせた。
観測しやすい理想的な惑星
HD 189733bは、太陽系外惑星の研究者にとって特別な存在だ。地球から見て、ちょうど主星の前を横切る位置関係にある。これをトランジットと呼ぶ。
トランジットが起きると、惑星が恒星の光を部分的に遮る。このとき、惑星の大気を通過した光を分析すると、大気にどんな物質が含まれているか分かる仕組みだ。HD 189733bは地球から比較的近く、主星も明るいため、これまで何度も観測されてきた。
青いガラスの雨が降る過酷な環境
この惑星の環境は想像を絶する。時速8,700キロメートルという猛烈な風が吹き荒れる。これは地球上で最も速い台風の約7倍のスピードだ。
さらに驚くべきことに、雨として降ってくるのは水ではなく溶けたガラスだ。大気中のケイ酸塩という物質が結晶化し、横なぐりの風に乗って惑星を叩きつける。この惑星が遠くから青く見えるのは、このガラスの粒が光を散乱させるためだと考えられている。
硫化水素が見つかった意味


太陽系外で初めての検出
ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラを使ってHD 189733bを観測した。その結果、大気中に硫化水素の明確な痕跡を発見した。
硫化水素は、地球では温泉や火山ガスに含まれる物質だ。卵が腐ったような独特の悪臭がある。木星や土星の大気にも含まれているが、太陽系外の惑星で見つかったのは今回が初めてだ。
惑星の材料を知る手がかり
硫化水素の検出は、単なる珍しい発見にとどまらない。惑星がどんな材料から作られたのかを知る重要な手がかりになる。
硫黄は宇宙で9番目に多い元素だ。惑星が誕生するとき、主星の周りにあったガスや塵の円盤から材料を集める。硫黄がどれくらい含まれているかを調べれば、惑星がどこで、どのように形成されたかが分かる。
研究チームのリーダーであるグアンウェイ・フー博士は、「硫化水素は惑星の金属含有量を理解するための鍵だ」と語る。金属含有量とは、水素とヘリウム以外の重い元素がどれだけあるかを示す指標だ。
酸素よりも硫黄が多い?
観測データを分析すると、さらに興味深い事実が浮かび上がった。HD 189733bの大気には、予想以上に硫黄が多く、酸素が少ない可能性がある。
太陽系の巨大惑星では、酸素の方が豊富だ。しかしHD 189733bは違う形成過程を経たのかもしれない。主星により近い、高温の領域で材料を集めたとすれば、酸素を含む氷が少なく、硫黄を含む鉱物が多かった可能性がある。
他の物質も続々検出


水、二酸化炭素、一酸化炭素
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測では、硫化水素以外にも複数の物質が見つかった。水、二酸化炭素、一酸化炭素といった分子だ。
これらの物質は、過去にハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡でも観測されていた。しかしウェッブ望遠鏡の性能は桁違いだ。より詳細なスペクトルデータを取得でき、これまで見逃されていた物質も検出できる。
メタンが見つからない謎
一方で、研究チームが期待していたメタンは検出されなかった。木星や土星の大気にはメタンが豊富に含まれている。HD 189733bでも見つかると予想されていたのだ。
メタンがない理由として、高温が考えられる。表面温度900度という環境では、メタンが分解されてしまう可能性がある。あるいは、そもそも惑星形成時にメタンの材料となる炭素が少なかったのかもしれない。
重金属の可能性も
研究チームは、大気中にもっと重い元素が含まれている可能性も指摘する。ナトリウムやカリウムといった金属元素だ。これらは高温のガス惑星でしばしば観測される。
今後、別の観測モードを使えば、これらの元素の有無を確認できる。HD 189733bの大気の全体像が明らかになれば、ホットジュピター全体の理解が深まるはずだ。
もし人間がこの惑星に行ったら、どうなっちゃうの?
瞬時に蒸発してしまうでしょうね。でも、こういう過酷な環境の惑星を調べることで、地球のような穏やかな惑星がどうやって生まれたのか分かるんです
HD 189733bは人間が住める環境ではないが、惑星科学にとっては貴重な実験場だ。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は今後も多くの系外惑星を観測し、それぞれの大気組成を明らかにしていく。その中から、地球に似た惑星が見つかる日も遠くないかもしれない。
参考文献:
Astronomers discover a new type of planet that probably smells like rotten eggs
出典: Space.com










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