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パタゴニアのペンギンが危機! ピューマに7,000羽も襲われてるって本当?

2026 2/23
生き物・自然
2026年2月18日2026年2月23日
🕑この記事は約7分で読めます
シルミー

はかせ、パタゴニアのペンギンがピューマに襲われてるってニュースで見たんだけど、ペンギンって海にいるのになんで?

はかせ

実はマゼランペンギンは海岸で巣を作るんですが、何百万年も陸の天敵がいなかったので、ピューマが戻ってきたら無防備だったんです。4年間で7,000羽以上の大人のペンギンが襲われてしまったんですよ

南米パタゴニアの海岸で、思いがけない悲劇が起きている。かつてこの地域から姿を消していたピューマが戻ってきたことで、マゼランペンギンの繁殖地が危機に直面しているのだ。

ワシントン大学とアルゼンチンの研究チームが4年間にわたって調査した結果、ピューマによるペンギン襲撃は想像以上に深刻だった。

目次

陸の天敵を知らないペンギンたち

繁殖地に集まるマゼランペンギンたち
Photo by Gustavo Sánchez on Unsplash

何百万年も安全だった繁殖地

マゼランペンギンは南米の海岸に巣を作り、毎年同じ場所に戻ってくる習性がある。体長は約70センチメートル、体重は4キロ前後で、ペンギンの中では中型の種類だ。

パタゴニアの海岸は長い間、陸の大型肉食動物がいない安全な場所だった。ペンギンたちは何百万年もかけて、海の中の天敵であるアザラシやシャチから逃げる能力を進化させてきた。陸では歩くのが遅くても問題なかったのだ。

ところが20世紀の終わりごろから、状況が変わり始めた。パタゴニアでは牧畜が衰退し、人間の活動が減ったことで、ピューマが徐々に戻ってくるようになったのだ。

ピューマの「余剰殺戮」という異常行動

研究チームがプンタトンボとカボドスバイアスという2つの繁殖地を調査したところ、驚くべき事実が判明した。ピューマは食べる量をはるかに超える数のペンギンを殺していたのだ。

4年間の調査期間中、確認できただけで7,024羽の成鳥が襲われていた。これは「余剰殺戮」と呼ばれる行動で、肉食動物が食べきれない量の獲物を殺してしまう現象だ。ニワトリ小屋に入ったキツネが、必要以上の鶏を殺してしまうのと同じメカニズムだという。

ピューマ1頭あたりの記録を見ると、1日に最大34羽のペンギンを殺したケースもあった。しかも食べたのはそのうちの数羽だけで、残りは放置されていた。

繁殖期が最も危険

ペンギンが最も襲われやすいのは、9月から2月にかけての繁殖期だ。この時期、ペンギンたちは卵を温めたりヒナを育てたりするため、巣の周辺に長時間とどまる。

特に巣の入り口付近や、海と巣の間を往復する通り道で襲撃が多発していた。ピューマは待ち伏せ型の狩りをする動物で、ペンギンのルーティンを学習して効率的に狩りをしていたのだ。

研究者たちは自動カメラやGPS首輪を使ってピューマの行動を追跡した。その結果、同じ個体が繰り返し繁殖地を訪れていることが分かった。一度ペンギンを襲うことを覚えたピューマは、簡単に諦めないのだ。

生態系のバランスが崩れた理由

パタゴニアで獲物を狙うピューマ
Photo by Caio Portela on Unsplash

頂点捕食者の復活がもたらした影響

ピューマはパタゴニアの生態系における頂点捕食者だ。体長は1.5メートルから2メートル、体重は50キロから70キロほどあり、本来はグアナコという野生のラクダの仲間や、シカ類を主食としている。

20世紀の大半、パタゴニアでは牧畜業が盛んで、ピューマは家畜を襲う害獣として駆除されてきた。その結果、海岸地域からピューマはほぼ完全に姿を消していた。

ところが1990年代以降、羊の価格下落や若者の都市流出で牧場が放棄されるケースが増えた。人間の活動が減ったことで、ピューマが徐々に歴史的な生息地に戻り始めたのだ。

ペンギンには逃げる本能がない

マゼランペンギンは進化の過程で、陸上の大型捕食者に対する防衛本能をほとんど持っていない。海の中では素早く泳いで逃げられるが、陸では時速3キロメートルほどでしか歩けない。

研究チームの観察によると、ピューマが近づいてきても、ペンギンたちは逃げずに鳴き声を上げるだけだったという。中には好奇心からピューマに近づいていく個体さえいた。これは何百万年も陸の天敵がいなかった証拠だと研究者は指摘している。

他の地域のペンギン、たとえば南極のペンギンにはヒョウアザラシという天敵がいるが、これは海の中での話だ。陸上でライオンやトラのような大型肉食獣と共存してきたペンギンは、地球上にほとんどいないのだ。

繁殖地の立地が問題を悪化させている

調査対象となったプンタトンボの繁殖地には、約20万つがいのマゼランペンギンが暮らしている。これは世界最大級のマゼランペンギンのコロニーだ。

この繁殖地は海岸の砂地に広がっていて、ピューマが隠れる場所がほとんどない。それでもピューマは夜間や早朝に忍び寄り、巣の近くで待ち伏せすることに成功していた。

さらに問題なのは、繁殖地が半島の先端にあることだ。ペンギンは海と巣の間を往復するしかなく、逃げ道が限られている。ピューマにとっては格好の狩場になってしまったのだ。

保護活動の難しい選択

野生動物保護の現場
Photo by Fabrizio Frigeni on Unsplash

どちらも保護対象という矛盾

この問題の難しさは、ピューマもマゼランペンギンも両方とも保護が必要な動物だという点にある。ピューマは長年の駆除で個体数が減少し、生態系における重要な役割を果たす動物として保護の対象になっている。

一方、マゼランペンギンも近年個体数が減少傾向にあり、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されている。気候変動による餌の減少や、海洋汚染、漁網への混獲などが主な原因だった。

そこにピューマによる大量襲撃が加わったことで、一部の繁殖地では個体数の急激な減少が観測されている。研究チームの試算では、このまま襲撃が続けば、繁殖成功率が年間で30パーセント以上低下する可能性があるという。

対策の選択肢とその問題点

研究者たちはいくつかの対策を検討しているが、どれも一長一短がある。まず考えられるのは、繁殖地の周囲にフェンスを設置することだ。しかし対象地域が広大で、設置と維持に莫大なコストがかかる。

ピューマを捕獲して他の場所に移動させる案もあるが、ピューマには縄張りがあり、移動させても戻ってきたり、別の個体がやってきたりする可能性が高い。

ペンギン側の行動を変える試みも難しい。何百万年も続いてきた繁殖場所を変えさせるのは容易ではない。ペンギンは生まれた場所に強い執着を持ち、毎年同じ巣に戻る習性があるからだ。

長期的な視点での共存モデル

研究チームは、短期的な緊急対策と並行して、長期的な共存モデルを模索している。自然界では、捕食者と被食者の関係は数世代かけてバランスを取っていくものだからだ。

理論上は、ペンギンの中から偶然にもピューマから逃げる行動を取る個体が現れ、その遺伝子が次世代に受け継がれていく可能性がある。しかしそれには何十年、あるいは何百年という時間が必要だ。

その間にペンギンの個体数が危機的なレベルまで減少してしまえば、回復は不可能になる。そのため研究者たちは、少なくとも繁殖期だけでもピューマの立ち入りを制限する方法を検討している。

アルゼンチンの野生動物保護当局も、この問題を重要視し始めた。監視カメラの増設や、繁殖地でのパトロール強化などの措置が試験的に始まっている。

シルミー

ペンギンもピューマもどっちも守りたいのに、難しいんだね

はかせ

そうなんです。自然保護って、単純に「守る」だけじゃなくて、生態系全体のバランスを考えないといけないんですよね

今回の研究は、頂点捕食者が復活したときに何が起きるのかを示す重要な事例となった。世界中で野生動物の保護活動が進んでいるが、予想外の影響が出ることもある。パタゴニアのペンギンとピューマの物語は、自然保護の複雑さを私たちに教えてくれている。

参考文献:
Pumas are back in Patagonia and Penguins are paying the price
出典: ScienceDaily

アイキャッチ画像: Photo by ohsoshy on Unsplash

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