はかせ、ピーナッツの殻でスマホが作れるって聞いたんだけど、本当なの?
正確にはピーナッツの殻から「グラフェン」という特別な素材を作れるようになったんです。UNSW(ニューサウスウェールズ大学)の研究チームが、捨てられるはずの殻を未来の電子機器に使える材料に変える方法を見つけたんですよ。
グラフェンは「夢の素材」と呼ばれる炭素素材だ。鋼鉄の200倍の強度を持ちながら、紙のように薄くて軽い。さらに銅よりも電気をよく通すという驚異的な性質を持っている。
これまでグラフェンの製造には高価な設備と大量のエネルギーが必要だった。ところが今回の発見で、農業廃棄物から安く作れる道が開けた。
グラフェンってどんな素材なの?


炭素原子1個分の薄さ
グラフェンは炭素原子がハチの巣のように並んだシート状の物質だ。その厚さはわずか0.34ナノメートル。髪の毛の太さの約20万分の1しかない。
2004年にイギリスの研究者が初めて取り出すことに成功し、2010年にノーベル物理学賞を受賞した。それ以来、世界中の科学者がこの素材に注目してきた。
スマホからロケットまで使える万能選手
グラフェンの用途は幅広い。スマートフォンの画面に使えば、今より薄くて折り曲げられるディスプレイができる。バッテリーに使えば、充電時間が10分の1になり、容量は2倍になる可能性がある。
さらに太陽電池の効率を高めたり、海水を真水に変えるフィルターを作ったりもできる。NASAは宇宙服や宇宙船の軽量化にも使えると考えている。
製造コストが最大の壁だった
こんなに優れた素材なのに、なぜまだ身の回りで使われていないのか。答えは製造コストの高さにある。
従来の方法では、1000度以上の高温で特殊なガスを分解してグラフェンを作る。この装置は数千万円もするし、大量の電力を消費する。グラフェン1グラムを作るのに数万円かかることもあった。
ピーナッツの殻から作る画期的な方法


農業廃棄物に目を付けた理由
UNSW化学工学部のZhao Jun Han博士率いる研究チームは、植物の構造に注目した。植物は光合成で作った炭素を体内に蓄えている。つまり植物は「炭素の塊」なのだ。
世界では毎年約5000万トンのピーナッツが生産される。その殻は重量の約30%を占めるため、年間1500万トンもの殻が廃棄されている計算になる。
研究チームはこの殻に含まれる炭素を、グラフェンに変換できないかと考えた。成功すれば、ゴミが宝の山に変わる。
800度で2時間焼くだけ
新しい製造プロセスは驚くほどシンプルだ。まずピーナッツの殻を細かく砕いて粉末にする。次にこの粉末を特殊な容器に入れ、酸素がない状態で約800度で2時間加熱する。
すると殻に含まれるタンパク質や脂肪分が分解され、純粋な炭素の層だけが残る。この炭素層をさらに処理すると、高品質なグラフェンシートができあがる。
従来の方法より200度も低い温度で作れるため、エネルギー消費は約40%削減できる。設備も安価なものでいい。
品質は従来品と同等以上
Han博士のチームは、ピーナッツ殻から作ったグラフェンの性能を詳しく調べた。電子顕微鏡で観察すると、炭素原子が美しいハチの巣構造を作っていることが確認できた。
電気伝導率のテストでは、高価な原料から作ったグラフェンと同等の性能を示した。強度テストでも合格点だった。
「農業廃棄物から作ったとは思えない品質です」とHan博士は語る。「むしろ不純物が少なく、用途によっては従来品より優れているかもしれません」
実用化への道のりと可能性


他の農業廃棄物でも成功
研究チームはピーナッツの殻だけでなく、米の籾殻、コーヒーかす、ココナッツの殻でも同じ方法を試した。すべてで高品質なグラフェンが得られたという。
これは世界中のどの地域でも、その土地で出る農業廃棄物を使ってグラフェンを作れることを意味する。地産地消型の素材生産が可能になるわけだ。
途上国の農家に新しい収入源
この技術は発展途上国にとって特に大きな意味を持つ。たとえばアフリカや東南アジアの農村部では、収穫後の殻や籾殻の処理に困っている。
もしこれらをグラフェンに変えて販売できれば、農家の新しい収入源になる。設備投資も比較的少なくて済むため、小規模な加工場でも始められる可能性がある。
環境問題の解決にも貢献
現在、農業廃棄物の多くは焼却処分されるか、畑にそのまま放置されている。焼却すればCO2が出るし、放置すればメタンガスが発生する。どちらも地球温暖化の原因だ。
これらをグラフェンに変換すれば、炭素を安定した形で固定できる。しかも価値ある製品として使える。廃棄物問題と資源問題を同時に解決する可能性を秘めている。
量産化に向けた課題
実用化にはまだいくつかの課題がある。現在の方法では1回に数グラムずつしか作れない。工業製品に使うには、年間数トン規模の生産が必要だ。
UNSWは現在、オーストラリア国内の電池メーカーと共同で、量産技術の開発を進めている。3年以内にパイロットプラントを稼働させる計画だという。
また、ピーナッツの殻は産地や収穫時期によって成分が微妙に違う。安定した品質のグラフェンを作るための原料管理システムも必要になる。
ピーナッツの殻が最先端の素材になるなんて、すごいね!
そうですね。捨てられるものに価値を見出す、まさに「宝の山」を掘り当てた研究だと思います。数年後には、あなたが使っているスマホにもピーナッツ由来のグラフェンが使われているかもしれませんよ。
この研究は循環型社会への大きな一歩だ。ゴミを資源に変える技術が、未来の産業構造を根本から変えるかもしれない。ピーナッツを食べるとき、その殻の可能性を思い出してみるのも面白いだろう。
参考文献:
Peanut waste can be turned into high-quality futuristic graphene
出典: Phys.org
アイキャッチ画像: Photo by engin akyurt on Unsplash










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