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大西洋の海底に500kmの巨大な谷! グランドキャニオンを超える裂け目の正体

2026 2/27
生き物・自然
2026年2月27日
🕑この記事は約7分で読めます
シルミー

はかせ、海の底にグランドキャニオンより大きな谷があるって本当?

はかせ

本当なんです。ポルトガルの沖合1000キロメートルの海底に、長さ500キロメートルもの巨大な谷があるんですよ

この谷はキングス・トラフと呼ばれている。水深4000メートルを超える深海に横たわり、その規模はアメリカのグランドキャニオンをはるかに上回る。

驚くべきことに、この巨大な地形は川の浸食でできたのではない。地球内部の力が海底を引き裂いてできたのだ。

目次

海底を引き裂いた地球内部の力

音波探査を行う調査船
Photo by NOAA on Unsplash

マントルの上昇流が海底を押し上げた

キングス・トラフができたのは、およそ1億3000万年前のことだ。当時、この海域の地下深くで異変が起きていた。

地球の表面は十数枚の巨大なプレートで覆われている。プレートの下にはマントルと呼ばれる高温の岩石層があり、ゆっくりと対流している。このマントルの一部が上昇してくると、海底のプレートを下から押し上げる力が働く。

ポルトガル沖の海底では、マントルの上昇流が特に強く、海底プレートに巨大な圧力がかかった。プレートは引っ張られ、ついに500キロメートルにわたって裂けたのだ。

この裂け目が、今日のキングス・トラフの原形となった。深い谷や盆地が連なる複雑な地形は、プレートが引き裂かれたときの激しい動きの痕跡だ。

プレートの動きが止まった理由

面白いことに、キングス・トラフは途中で成長を止めている。地球上には現在も活発に広がっている海底の裂け目がたくさんあるが、キングス・トラフは約1億年前に活動を停止した。

なぜ途中で止まったのか。研究チームは、マントルの上昇流が弱まったか、プレートの動く方向が変わったためだと考えている。

地球内部の対流パターンは数千万年単位で変化する。ポルトガル沖のマントル上昇流も、ある時期を境に勢いを失ったようだ。それ以降、キングス・トラフは静かに海底に眠り続けている。

似た地形が世界中に存在する

キングス・トラフのような「途中で止まった裂け目」は、実は珍しくない。大西洋の各地に似た地形が散らばっている。

例えば、アフリカ西岸沖の海底にも、途中で成長が止まった裂け目がいくつも見つかっている。これらはすべて、過去にマントルの上昇流が活発だった場所だ。

研究者たちはこうした「失敗した裂け目」を調べることで、地球内部の動きがどう変化してきたかを知ることができる。キングス・トラフは、地球の歴史を読み解く重要な手がかりなのだ。

最新技術が明かした海底の姿

地球内部の構造とマントルの対流
Photo by Murat Ts. on Unsplash

音波で海底を透視する

キングス・トラフの詳しい地形が分かったのは、音波探査技術のおかげだ。

調査船から海底に向けて音波を発射すると、音波は海底で反射して戻ってくる。戻ってくるまでの時間を測れば、水深が分かる。さらに、音波の一部は海底を突き抜けて、地下の岩石層まで到達する。

研究チームは、この音波探査を使ってキングス・トラフ全体をスキャンした。得られたデータをコンピュータで解析すると、海底の立体的な地形図ができあがる。

その結果、キングス・トラフが単純な一本の谷ではなく、複数の深い盆地と尾根が複雑に入り組んだ地形であることが明らかになった。最も深い部分は水深5000メートルを超える。

岩石サンプルが語る過去

海底から採取した岩石も重要な情報源だ。研究チームは、キングス・トラフ周辺の海底から玄武岩のサンプルを採取した。

玄武岩は、マントルが溶けてできた岩石だ。マントルの上昇流が強い場所では、高温のマントル物質が溶けて、海底に噴き出す。それが冷えて固まったものが玄武岩だ。

キングス・トラフの玄武岩を分析すると、岩石の年代は約1億3000万年前から1億年前に集中していた。この期間にマントルの活動が活発だったことの証拠だ。

また、岩石に含まれる化学成分から、当時のマントルの温度や組成も推定できる。研究チームは、キングス・トラフができた当時、マントルの温度が通常より約100度高かったと結論づけた。

他の海底地形との比較

研究者たちは、キングス・トラフを中央海嶺と比較している。中央海嶺とは、海底プレートが生まれる場所で、大西洋の真ん中を南北に走っている。

中央海嶺では今も活発にプレートが広がり続けているが、キングス・トラフは途中で止まった。両者を比べることで、「プレートが広がり続ける条件」と「途中で止まる条件」の違いが見えてくる。

研究チームの分析によれば、キングス・トラフはマントルの上昇流が弱すぎたために、新しいプレートを作り続けることができなかったようだ。中央海嶺では強力な上昇流が継続しているが、キングス・トラフでは途中で力尽きてしまった。

地球の進化を理解する手がかり

大陸分裂の初期段階だった可能性

キングス・トラフは、もしかしたら新しい大洋の誕生につながるはずだったのかもしれない。

地球上では、過去に何度も大陸が分裂し、その間に新しい海ができてきた。例えば、南米とアフリカはもともと1つの大陸だったが、約2億年前に分裂し始め、その間に大西洋が生まれた。

キングス・トラフも、大陸分裂の初期段階だった可能性がある。もしマントルの上昇流がもっと強ければ、ヨーロッパの一部が裂けて、新しい海ができていたかもしれない。

しかし実際には、マントルの力が足りずに途中で止まった。地球の歴史には、こうした「失敗した分裂」の痕跡がたくさん残っている。

プレートテクトニクスの新しい視点

キングス・トラフの研究は、プレートテクトニクス理論に新しい視点をもたらしている。

これまで、プレートの動きは比較的単純なモデルで説明されてきた。プレートは海嶺で生まれ、海溝で沈み込む。このサイクルが地球の表面を動かしている、というわけだ。

しかし実際には、プレートの動きはもっと複雑だ。キングス・トラフのように、途中で止まってしまう裂け目もある。マントルの対流パターンも、場所や時代によって大きく異なる。

研究チームは、こうした「例外的な地形」を詳しく調べることで、プレートテクトニクスのより正確なモデルを作ろうとしている。地球内部の動きは、まだまだ謎だらけなのだ。

未来の海底探査への期待

キングス・トラフの調査は始まったばかりだ。今後、より高精度な探査技術が開発されれば、さらに詳しいことが分かるだろう。

例えば、無人潜水艇を使って海底を直接観察すれば、岩石の分布や断層の様子がもっとはっきり見える。また、海底に地震計を設置すれば、地下深くの構造も分かるかもしれない。

研究者たちは、世界中の「失敗した裂け目」を系統的に調べるプロジェクトも計画している。キングス・トラフはその第一歩だ。

シルミー

海の底にこんな大きな谷があるなんて、びっくりだね

キングス・トラフは、地球が生きている証だ。プレートは今も動き続け、マントルは対流し続けている。海底の巨大な谷は、地球の壮大な物語を静かに語りかけている。

参考文献:
A hidden force beneath the Atlantic ripped open a 500 kilometer canyon
出典: ScienceDaily

アイキャッチ画像: Photo by ohsoshy on Unsplash

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キングス・トラフ プレートテクトニクス マントル 中央海嶺 地球科学 地質学 大西洋 大陸分裂 海底地形 海洋探査 深海 玄武岩 音波探査
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