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月にも地球より強い磁場があった!? アポロの石が明かす45億年前の謎

2026 3/08
宇宙・天文
2026年3月8日
🕑この記事は約6分で読めます
シルミー

はかせ、月って磁石みたいに磁場があるの?

はかせ

今はほとんどないんですが、実は35億年から45億年前の月には、地球よりも強い磁場があったことが分かったんです

オックスフォード大学の研究チームが、アポロ計画で持ち帰られた月の石を最新技術で分析し、長年の論争に決着をつけた。月の磁場は弱かったのか、それとも強かったのか。この謎を解く鍵は、石の中に閉じ込められた古代の磁気記録にあった。

目次

月の石に残された磁気の記憶

月面に残されたアポロ計画の痕跡
Photo by Himmel S on Unsplash

アポロ計画が持ち帰った宝物

1969年から1972年にかけて、アポロ計画で宇宙飛行士たちが月から持ち帰った石は約382キログラム。これらの石は50年以上経った今でも、科学者たちに新しい発見をもたらし続けている。

今回研究チームが注目したのは、35億年から45億年前に形成された月の石だ。この時期は月がまだ若く、内部がドロドロに溶けていた時代。地球でいえば、恐竜どころか生命そのものが誕生するはるか前の時代にあたる。

石の中には、形成された当時の磁場が記録として残っている。まるで古代の録音テープのように、石は当時の磁場の強さを今に伝えているのだ。

矛盾だらけの過去のデータ

ところが、これまでの研究では結果がバラバラだった。ある研究者は「月の磁場は地球と同じくらい強かった」と主張し、別の研究者は「いや、地球の1000分の1程度しかなかった」と反論する。

なぜこんなに結果が違うのか。実は、月の石は地球に落ちてくる隕石の衝突や、宇宙線の照射によって、後から磁気を帯びてしまうことがある。これが本来の磁気記録を上書きしてしまい、正確な測定を困難にしていた。

たとえるなら、古い写真に後から落書きされて、元の画像が見えなくなってしまったようなものだ。

新技術で「ノイズ」を取り除く

オックスフォード大学のチームが開発したのは、段階的熱消磁法という技術。石を少しずつ加熱しながら、後から加わった磁気だけを選択的に消していく方法だ。

研究チームは石を25度刻みで加熱し、各段階で磁気を測定した。すると、ある温度を超えたところで、後から加わった「ノイズ」が消え、本来の古代の磁気記録が姿を現した。

この手法を使って分析した結果、月の磁場の強さは地球の磁場に匹敵、あるいはそれを上回るレベルだったことが判明した。具体的には、70マイクロテスラ以上。これは現在の地球の磁場(約50マイクロテスラ)よりも強い数値だ。

どうして月に強い磁場があったのか

月の内部構造と核の断面図
Photo by iuliu illes on Unsplash

月の内部で起きていたこと

地球の磁場は、地球の中心部にある液体の鉄が対流することで生まれる。巨大な発電機のようなものだ。これをダイナモ効果と呼ぶ。

月にも昔は同じような仕組みがあったと考えられている。月が形成された直後、内部には溶けた鉄の核があり、それが対流することで磁場を生み出していた。

ただし、月は地球の約4分の1の大きさしかない。小さな天体がどうしてそんなに強い磁場を持てたのか。ここにも謎がある。

「ダイナモの強化」説

研究チームが提唱する仮説の1つは、月の核の対流が何らかの理由で通常よりも激しかったというもの。たとえば、巨大な隕石の衝突や、月と地球の潮汐力の相互作用が、核をかき混ぜるエネルギーを与えた可能性がある。

もう1つの説は、月の核が冷えて固まり始める過程で、軽い成分と重い成分が分離し、その際に対流が一時的に強まったというもの。ちょうど鍋の中でお湯が沸騰するときに激しく動くように、月の核でも似たようなことが起きていたかもしれない。

なぜ今は磁場がないのか

現在の月には、ほとんど磁場がない。アポロ計画で設置された磁力計の測定では、地球の磁場の1000分の1以下しか検出されなかった。

これは、月の核が冷えて固まってしまい、対流が止まったからだ。小さな天体は冷めやすい。たとえるなら、小さなコーヒーカップは大きなポットよりも早く冷めるのと同じ理屈だ。

月の核は約30億年前までに完全に冷え、ダイナモ効果が停止した。それ以降、月は磁場を失い、現在のような「磁気的に死んだ」天体になった。

この発見が意味すること

太陽系の歴史を書き換える

月の磁場の強さが分かったことで、太陽系の形成初期に何が起きていたのか、新しい理解が得られる。月は約45億年前、地球に火星サイズの天体が衝突した際に飛び散った破片から形成されたと考えられている。

もし月が強い磁場を持っていたなら、その磁場は月の表面を宇宙線から守り、大気を保持する助けになっていた可能性もある。現在の月には大気がほとんどないが、もしかしたら初期の月には薄い大気があったかもしれない。

他の惑星の磁場研究にも応用

今回開発された分析技術は、月だけでなく、火星や小惑星から持ち帰られたサンプルにも応用できる。たとえば、火星も昔は強い磁場を持っていたが、今はほとんどない。その理由を解明する手がかりが得られるかもしれない。

また、将来の月探査計画では、さらに古い石や、異なる地域の石を採取することで、月の磁場がどのように変化していったのか、時系列で追跡できるようになる。

地球の磁場の未来を考える

地球の磁場は、私たちの生活に欠かせない。磁場がなければ、太陽からの有害な宇宙線が地表に降り注ぎ、生命は存在できない。GPSや通信システムも磁場の影響を受けている。

ところが、地球の磁場は過去200年間で約10%弱まっているというデータもある。月の磁場が消えたように、地球の磁場もいつかは消えるのか。それはいつなのか。

月の磁場の研究は、そうした疑問に答えるヒントを与えてくれる。地球の核がどのように冷えていくのか、磁場がどのように弱まるのか、そのメカニズムを理解することは、私たちの未来を考える上でも重要だ。

シルミー

月にも昔は磁場があったんだね。宇宙って不思議だなあ

アポロ計画から50年以上経った今も、月の石は新しい秘密を明かし続けている。PNAS誌に掲載されたこの研究は、月が単なる「死んだ岩の塊」ではなく、かつては地球のように活発な内部活動を持っていたことを示している。今後の月探査ミッションでは、さらに深い場所から石を採取し、月の歴史をより詳しく解き明かす計画が進んでいる。

参考文献:
Apollo moon rocks reveal lunar magnetic field was briefly stronger than Earth’s
出典: Phys.org

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PNAS アポロ計画 オックスフォード大学 ダイナモ効果 地球 地質学 太陽系 宇宙探査 惑星科学 月 火星 磁場 隕石
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