火星探査車キュリオシティは、シャープ山の斜面で「ボックスワーク」と呼ばれるクモの巣のような地形を調べている。
NASAの発表によると、高さ1〜2メートルほどの低い尾根が、砂のくぼみをはさんで数マイルにわたって交差している。
地下水が岩盤の大きな割れ目を流れて鉱物を残し、周りの岩が風で削られて尾根が残った、という説明が提案されている。
もしそうなら、火星の地下水は、軌道からの観測で考えられていたより後の時代まで流れていた可能性がある。ただし、できかたの全体はまだ分かっていない。
クモの巣模様「ボックスワーク」の正体
この網目模様は、地質学で「ボックスワーク」と呼ばれる構造だ。
NASAの発表では、地下水が岩盤の大きな割れ目を流れて鉱物を残し、その部分が補強されて尾根になり、鉱物のない部分が風で削られてくぼみになった、という説明が提案されている。
積み上がったのではなく、周りが削られて残った地形だ。
地球の洞窟にもある
地球にもボックスワークはある。有名なのは、アメリカのサウスダコタ州にあるウィンド・ケイブ国立公園だ。
国立公園局は、ほかの洞窟にも少量はあるが、これほど発達して豊富な洞窟はおそらく世界にない、と説明している。方解石の薄い刃のような結晶が壁や天井から突き出し、蜂の巣のような模様を作っている。
ただし、できかたは洞窟最大の謎の一つとされている。
火星のものとの違いは大きさだ。NASAによると、地球のボックスワークの尾根は高さが数センチを超えることがまれで、洞窟や乾いた砂地で見つかる。
火星のものは高さ1〜2メートルあり、探査車が尾根の上を走れるほどだ。
キュリオシティが登る、火星の年代記
キュリオシティが登っているシャープ山は、高さ約5キロメートルの山だ。NASAによると、山の層はそれぞれ、変化していく火星の古い気候の別の時代にできた。
高く登るほど、水が時間とともに乾いていった跡が目立つようになるが、ときどき湿った時期が戻り、川や湖が現れた形跡もある。
山の下の層から上の層へ進むほど、水が乾いていく時代に近づく。ボックスワークは、その山のかなり高い位置にある。
網目が語る、水が消えゆく時代
ボックスワークがあるのは、山のなかでも硫酸塩という塩の鉱物に富む層の一部だ。硫酸塩は、火星で水が乾いていく途中でできた。
地表が乾きかけた時代の層に、地下水が岩を固めた跡がある可能性がある、ということになる。
「ここまで山を登った場所にボックスワークがあるのは、地下水面がかなり高かったはずだと示唆しています。それは、生命の維持に必要な水が、軌道から見て考えていたよりずっと長く続いた可能性があるということです」と、ライス大学のTina Seeger氏は話す。
Seeger氏はこの調査を率いる研究者の一人だ。
尾根とくぼみの鉱物
ボックスワーク地域では、3つの試料がドリルで採られた。尾根の上、くぼみの岩盤、尾根に着く前の移行部の3か所だ。
粉にした試料をX線で分析すると、尾根から粘土鉱物、くぼみから炭酸塩鉱物が見つかった。NASAは、これらが地形のできかたを考える手がかりになるとしている。
軌道からの画像には、網目を横切る暗い線が写っていて、2014年に、地下水が通った中央の割れ目ではないかと提案されていた。
キュリオシティが近くで調べると、この線は実際に割れ目だった。一方、地下水の跡とされる団塊(ノジュール)は、割れ目の近くではなく、尾根の壁面とくぼみで見つかった。
Seeger氏は、その理由はまだ説明できないとしている。
別の研究では、同じゲール・クレーターの地層で見つかった硫酸カルシウムの結晶の跡の一部が、蒸発ではなく、堆積後に黄鉄鉱などが酸化してできた可能性が提案されている(Kalucha et al., 2025)。
ボックスワークの尾根を調べた研究ではないが、この地域の硫酸塩が蒸発だけでできたとは限らないことを示している。

キク探査車って、火星の岩をどうやって調べてるんだろう?
キュリオシティという、走る実験室
キュリオシティは、SUVほどの大きさで、重さが899キログラムの探査車だ。ロボットアームの先にある岩を砕くドリルで試料を採り、その粉を車体の中の分析装置に送って調べる。
ボックスワークの尾根には、車体とあまり変わらない幅のところがあり、運転チームは、尾根の上を走るか、砂のくぼみに下りて車輪の空転に注意するかを選びながら進んだ。
4つ目の試料の分析
最近採った4つ目の試料には、特に注目度の高い対象にだけ使う手法が使われた。粉にした岩を高温のオーブンに入れ、化学試薬を反応させるウェットケミストリーで、有機化合物を見つけやすくなる。
有機化合物は、生命の形成に重要な炭素ベースの分子だ。


地下水と、微生物が生き延びた期間
NASAは、ボックスワークの地下水が長く続いた可能性は、微生物が数十億年前の火星でどれだけ生き延びられたかという新しい問いを生む、と説明している。
川や湖が干上がり、凍える砂漠の世界になる前の時代の話だ。ここで示されているのは地下水が長く続いた可能性で、生命がいたことが分かったわけではない。
これから探るもの
NASAによると、キュリオシティは3月ごろにボックスワークの地域を離れる。
ただ、この地域は硫酸塩に富む層の一部で、チームは来年にかけて、この層を数マイルにわたって調べ続け、古い火星の気候がどう変わったかを探る計画だ。



分かったのは地下水が長く続いた可能性で、生命がいたかどうかはまだこれからなんだな。









