火星で、探査車のドリルに岩がくっついて取れなくなった。岩には「Atacama」という愛称が付けられていた。
NASAによると、ドリルで岩の上の層が割れたり外れたりしたことはこれまでもあったが、岩がドリルに付いたまま残ったのは初めてだった。
キク火星の探査車のドリルに付いて持ち上がった岩って、ドリルのどこにくっついてたんだろう?
始まりはいつものドリル作業だった
2026年4月25日、火星のゲール・クレーターで活動中のNASA火星探査車Curiosityは、いつものように岩石サンプルを採取しようとしていた。
ロボットアームの先端に付いたドリルを地面の岩に押し当て、回転を始めたところまでは予定通りだった。
ターゲットの岩の愛称「Atacama」は、南米チリのアタカマ砂漠にちなむ。ミッションブログによると、アタカマ砂漠は中緯度の砂漠としては世界で最も乾燥していて、年間の降水量は15ミリしかない。
通常、ドリルは岩の表面に押し当てたまま回転して、岩の一部だけを砕き、粉状になった試料を筒状の先端部分(ドリルスリーブ)に取り込む。
アームを引き上げる頃には、岩は地面に残ったまま、サンプルだけがドリルの中に収まっているはずだった。
ところがこの日、アームを引き上げると、岩そのものが地面から持ち上がった。ミッションブログによると、この岩は地面に根づいた岩盤ではなく、離れて転がっていた塊だった。
岩をつかんでいたのは回転するドリルの刃ではなく、刃のまわりを囲む固定された筒(スリーブ)だった。
推定13キログラムの予期せぬ獲物
NASAの推定によれば、Atacamaは底の直径が約0.5メートル(1.5フィート)、厚さが約15センチメートル(6インチ)、重さは約13キログラム(28.6ポンド)だった。
Curiosityのアームは、ドリルで削った岩の粉を機体の分析装置まで運ぶための装置だ。その先に13kgの岩がぶら下がったことになる。
幸い、アームは岩の重みで壊れなかった。
火星探査13年で初めての出来事
Curiosityは2012年8月にゲール・クレーターに着陸して以来、火星の岩石サンプル採取を何度も繰り返してきた。
それでも、岩がドリルに付いたまま外れなくなったのは初めてだった。
ミッションブログによると、Curiosityは双子のような探査車Perseveranceと違って、試料を保管する役目を持っていないため、ドリルを岩から外すしかなかった。


6日間続いた火星での攻防戦
第1作戦は振動で振り落とすこと
NASAの管制チームが最初に試したのは、ドリルに搭載されたバイブレーション機能を使う作戦だ。
このバイブレーションは本来、ドリル内部に詰まった岩石粉末を払い落とすために組み込まれた仕組みで、強く揺らすことでこびりついた試料を切り離せる。
チームはこれを作動させて、Atacamaを振り落とそうとした。
結果、変化はなかった。火星の重力は地球の約3分の1なので、13kgの岩は火星では5kg弱ほどの重さになるが、それでも振動だけでは離れなかった。
4日後の第2作戦は姿勢変更
4月29日、エンジニアたちはアームの向きを変え、もう一度ドリルを振動させた。
今度は岩から砂が落ちる様子が映っていたが、岩はドリルに付いたままだった。
一つの動作ごとに地球と火星のあいだで通信が行き来し、結果を画像で確かめてから次の指令に進む。これが火星での作業に時間がかかる理由だ。
遠隔操作ならではのもどかしさ
火星と地球は大きく離れているうえに、その距離は両惑星の公転にともなって常に変わり続ける。近いときで約5500万km、遠いときには約4億km。
電波は光の速さで進むが、それでも片道の通信に最短で数分、遠いときには片道で20分以上かかる。
地球の管制室からリアルタイムでアームを操作することはできず、「指令を送る → 結果を待つ → 次の指令を考える」というやり取りを繰り返すしかない。
これがCuriosityの脱出劇を引き延ばした要因の一つだ。地上ロボットなら数分で試せる動きが、火星では1日仕事になる。
地球側のチームは、毎回の指令を入念にシミュレーションしてから送らなければならなかった。
5月1日、ついに振り払われた瞬間
4つの動きを組み合わせた決め手
最初のトラブルから6日目の5月1日、地球のチームは戦術をさらにエスカレートさせた。
5月1日、チームはドリルをさらに傾け、ドリルを回しながら振動させ、ドリルの刃も回転させた。チームはこの動作を何度か繰り返すつもりだった。
1回目の試行で岩は砕け散った
ところが1回目で岩はドリルから外れ、地面に落ちて割れた。
NASAは、岩がドリルに付いてから外れるまでの一連の様子をGIF画像で公開している。撮影したのは、車体の前にある白黒のハザード回避用カメラと、マスト(頭部)にあるナビゲーションカメラだ。



探査車のドリルにくっついた岩は、揺らすだけじゃ取れなかったのに、ドリルを傾けて回しながら揺らしたら1回目で外れたんだね。
その後のCuriosity
何事もなかったように任務へ復帰
ミッションブログによると、ドリルを外す作業のあいだ、アームを使う観測はできなかったが、レーザーで岩の成分を調べるChemCamなど、離れた場所から調べる観測は続けていた。
岩が外れたあとは、岩があった場所の下の砂や、岩でおおわれていた明るい色の石も調べた。
一方で、Atacamaで削った粉は外す作業の途中で失われたため、チームはもっとしっかり地面に根づいた別の岩を探して掘り直す予定だ。
Curiosityは2025年で火星着陸から13年を超え、当初予定の2年間というミッション期間をはるかに上回って働き続けている。









