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ブラジルの鉱山事故でバナナに鉛が!? 土から植物への有害物質の移動を確認

2026 2/27
生き物・自然
2026年2月27日
🕑この記事は約6分で読めます
シルミー

はかせ、バナナに有害な金属が入ってるって本当なの?

はかせ

ブラジルで起きた鉱山事故の影響で、汚染された土壌で育ったバナナから鉛やカドミウムが検出されたんです

2015年11月、ブラジルのマリアナ市で鉱山廃棄物を貯めたダムが決壊する事故が起きた。流れ出た廃液は約650キロメートル先の大西洋まで達し、その途中にある農地を汚染した。

科学者たちが汚染地域で栽培された農作物を調べたところ、バナナ、キャッサバ、カカオといった食用植物が土壌から有害金属を吸い上げていることが判明した。特にバナナの一部からは、人間の健康に影響を及ぼす可能性がある濃度の鉛が検出されている。

目次

2015年の鉱山ダム決壊事故とは

東京ドーム40個分の廃液が流出

事故が起きたのは、ブラジル南東部ミナスジェライス州のマリアナ市だ。鉄鉱石の採掘に伴って出る廃棄物を貯めていたダムが決壊し、約5,000万立方メートルの泥水が一気に流れ出した。これは東京ドーム約40個分の量に相当する。

泥水は川沿いの村や町を襲い、19人が犠牲になった。さらにドセ川という大きな川を通って約650キロメートル下流の大西洋まで流れ込み、その間にある農地や漁場を汚染した。ブラジル史上最悪の環境災害と呼ばれている。

廃液に含まれていた有害物質

流れ出た廃液には、鉄鉱石の採掘過程で出る様々な物質が混じっていた。その中には鉛、カドミウム、ヒ素、マンガンといった有害な重金属が含まれていた。

これらの金属は土壌に堆積し、そこで栽培される農作物に影響を及ぼす可能性が懸念されていた。事故から数年が経ち、科学者たちは実際に植物がこれらの物質を吸収しているかを調べることにした。

なぜ今、調査が行われたのか

事故直後は汚染の範囲や被害状況の把握が優先されていた。しかし時間が経つにつれ、土壌に蓄積した有害物質が食物連鎖を通じて人間の健康に影響を及ぼす可能性が心配されるようになった。

研究チームは事故から数年後の土壌と農作物のサンプルを採取し、実験室で詳しく分析した。植物がどの程度の金属を吸収しているか、そしてそれが人間にとって危険なレベルなのかを調べるためだ。

バナナ、キャッサバ、カカオへの影響

バナナが最も高濃度の鉛を吸収

調査の結果、バナナが最も多くの鉛を吸収していることが分かった。一部のバナナからは、食品安全基準を超える濃度の鉛が検出された。

バナナは果物の中でも特に栽培が盛んで、ブラジルでは主食に近い存在だ。日本でも毎日のように食べる人がいるほど身近な果物なので、この発見は大きな懸念材料となっている。

鉛は神経系に影響を及ぼす物質で、特に子どもの脳の発達に悪影響を与えることが知られている。長期間にわたって鉛を含む食品を食べ続けると、記憶力や集中力の低下といった問題が起きる可能性がある。

キャッサバとカカオからもカドミウム

バナナだけでなく、キャッサバ(タピオカの原料になる芋)とカカオからもカドミウムが検出された。カドミウムは腎臓にダメージを与える重金属だ。

キャッサバはブラジルをはじめとする南米諸国で広く栽培されており、主食として毎日食べる地域も多い。カカオはチョコレートの原料で、ブラジルは世界有数のカカオ生産国だ。

研究者たちは、これらの作物が根から土壌中の金属を吸い上げ、茎や葉を通って実の部分にまで運んでいることを確認した。つまり私たちが食べる部分にも有害物質が蓄積されているということだ。

植物による金属の吸収メカニズム

植物は根から水分と一緒に栄養素を吸い上げる。このとき、必要な栄養素だけを選んで吸収するわけではない。化学的な性質が似ている物質は、栄養素と間違えて吸い上げてしまうのだ。

例えば鉛はカルシウムと化学的な性質が似ているため、植物がカルシウムを吸収する際に一緒に取り込まれてしまう。カドミウムは亜鉛と似た性質を持つため、同じように吸収される。

バナナが特に多くの鉛を吸収した理由は、バナナの根の構造と関係していると考えられている。バナナは浅く広がる根を持つため、表層の汚染土壌と接触する面積が大きいのだ。

人間の健康への影響と今後の課題

どれくらい食べると危険なのか

研究チームの分析によると、汚染地域で採れたバナナを毎日1本ずつ食べ続けた場合、健康リスクが高まる可能性がある。特に成長期の子どもや妊婦は影響を受けやすい。

ただし、すべてのバナナが危険というわけではない。汚染されていない地域で栽培されたバナナは何の問題もない。問題は、どのバナナが汚染地域産なのかを消費者が見分けられない点にある。

ブラジル政府は事故後、汚染地域での農業を制限したが、小規模農家の中には生活のために栽培を続けているケースもある。これらの作物が市場に出回る可能性は否定できない。

土壌の浄化は可能なのか

汚染された土壌を元に戻すのは非常に難しい。表土を入れ替える方法もあるが、広大な農地すべてで行うには莫大な費用がかかる。

別のアプローチとして、ファイトレメディエーションという技術が注目されている。これは特定の植物を使って土壌から有害物質を吸い取る方法だ。例えばヒマワリやヤナギといった植物は重金属を大量に吸収する性質がある。

これらの植物を数年間栽培して刈り取ることを繰り返せば、少しずつ土壌中の金属濃度を下げられる。ただし完全に浄化するには10年以上の時間がかかると見られている。

同じような事故は他でも起きている

実はこの種の鉱山事故はブラジルだけの問題ではない。2019年には同じくブラジルの別の鉱山でダム決壊事故が起き、270人以上が犠牲になった。

中国、インド、アフリカ諸国でも鉱山開発に伴う環境汚染が問題になっている。日本でも過去に足尾銅山鉱毒事件やイタイイタイ病(カドミウム汚染)といった深刻な公害が発生した歴史がある。

今回の研究結果は、鉱山事故の影響が事故直後だけでなく、長期間にわたって食の安全を脅かすことを示している。鉱山開発を行う企業や政府には、より厳格な安全管理と事故後の対応が求められる。

シルミー

汚染されたバナナかどうか、見た目じゃ分からないんだね…

はかせ

そうなんです。だからこそ、産地の管理や検査体制が重要になってくるんですよ

この研究は、環境災害が私たちの食卓に直接影響を及ぼすことを改めて示した。ブラジル政府は現在、汚染地域の農産物の流通を監視するシステムの強化を進めている。同時に被災した農家への補償と、代替農地の提供も課題となっている。

研究チームは今後、他の作物への影響や、土壌浄化の効果的な方法についても調査を続ける予定だ。

参考文献:
Toxic metals found in bananas after Brazil mining disaster
出典: ScienceDaily

アイキャッチ画像: Photo by Jerry Wei on Unsplash

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