はかせ、赤ちゃんの時に食べたものって、大人になってからも影響するの?
すごくいい質問ですね! 実は、生まれる前とお母さんのお腹の中にいる時の砂糖の量が、何十年も先の心臓の健康に関係していることが分かったんです
アメリカの研究チームが、イギリスで戦後に行われていた砂糖配給制度のデータを分析したところ、驚くべき事実が明らかになった。お母さんのお腹の中にいる時と、生まれてから最初の2年間に砂糖を控えめにしていた人たちは、大人になってから心臓発作や脳卒中、心不全のリスクが約20〜30%も低かったのだ。
イギリスの砂糖配給制度が教えてくれたこと


戦後イギリスで起きた「天然の実験」
この研究の舞台は、1940年代から50年代のイギリスだ。第二次世界大戦中とその直後、イギリス政府は食料不足に対応するため、砂糖や肉、乳製品の配給制度を実施していた。
砂糖の配給は1953年9月に終了したのだが、これが科学者にとっては貴重な「実験」になった。配給が終わる前に生まれた人と、終わった後に生まれた人では、赤ちゃんの時に食べた砂糖の量が大きく違っていたからだ。
配給制度の下では、大人1人あたりの砂糖は1日約40グラムに制限されていた。これはティースプーン約10杯分で、現代の平均的なアメリカ人が摂取する量の半分以下だ。配給が終わると、イギリス人の砂糖消費量は一気に2倍近くに跳ね上がった。
60,000人のデータを追跡調査
南カリフォルニア大学とカリフォルニア大学バークレー校の研究者たちは、イギリスのUK Biobankという巨大なデータベースを使って、約60,000人の健康記録を分析した。
彼らは1951年10月から1956年3月の間に生まれた人たちに注目した。つまり、配給制度の終了前後に生まれた人たちだ。この時期に生まれた人たちは現在60代後半から70代前半で、心臓病のリスクが高まる年齢に達している。
研究チームは、配給終了の前と後で生まれた人たちの健康状態を比較した。すると、配給制度の下で育った人たちの方が、心臓発作のリスクが約20%低く、2型糖尿病のリスクも35%低かった。
いつの砂糖が一番重要なのか
研究者たちはさらに詳しく調べた。お母さんのお腹の中にいる時の砂糖と、生まれてからの砂糖、どちらがより影響するのか?
答えは「両方とも大事だが、タイミングによって効果が違う」だった。お腹の中にいる時の砂糖制限だけでも、糖尿病のリスクは約3分の1減った。しかし、生まれてから最初の2年間も砂糖を控えると、その効果はさらに大きくなった。
特に興味深いのは、糖尿病の発症が平均で4年遅れたことだ。50代で糖尿病になる代わりに、60代まで健康でいられるというのは、人生の質を大きく変える。
なぜ赤ちゃんの時の砂糖が重要なのか


「味覚の記憶」が一生を左右する
赤ちゃんの時に食べたものが、何十年も先まで影響するのはなぜだろう? 研究者たちは、味覚の好みが生後早期に形成されることを指摘している。
生まれて最初の1,000日間(お腹の中にいる約280日+生後2年間)は、人間の味覚が発達する重要な時期だ。この時期に甘いものをたくさん食べると、「甘い味が普通」という記憶が脳に刻まれる。逆に、砂糖を控えめにすると、自然な甘さで満足できる味覚が育つ。
配給制度の下で育った人たちは、大人になってからも甘いものを控えめに食べる傾向があった。子供の頃の食習慣が、一生の食の好みを決めるのだ。
代謝のプログラミング
もう1つの理由は、代謝システムの「プログラミング」だ。お母さんのお腹の中にいる時、赤ちゃんの体は急速に発達している。この時期に砂糖をたくさん摂取すると、赤ちゃんの体は「砂糖がたくさんある環境」に適応しようとする。
具体的には、インスリンを作る膵臓の細胞や、血糖値を調整する肝臓の働き方が、この時期の栄養状態によって決まる。砂糖が多い環境で育つと、体は「砂糖を処理するのが大変」な状態で一生を過ごすことになる。
逆に、砂糖が少ない環境で育つと、体は効率よく糖を処理できるように発達する。これが、何十年も先の糖尿病や心臓病のリスクに影響するのだ。
配給制度の終了で何が変わったか
1953年9月に配給が終わると、イギリス人の食生活は劇的に変化した。砂糖だけでなく、お菓子やジャム、甘いお菓子が店頭に溢れるようになった。
データによると、配給終了後に生まれた赤ちゃんたちは、配給制度の下で育った赤ちゃんに比べて、砂糖の摂取量が2倍近くになった。特に生後6ヶ月から2歳の間の差が大きかった。この時期は、離乳食が始まり、家族と同じものを食べ始める時期だ。
現代の私たちへの教訓


今の赤ちゃんは砂糖を摂りすぎている
この研究結果は、現代の子育てに重要な示唆を与える。アメリカ小児科学会は、2歳未満の子供には砂糖を加えた食品を与えないことを推奨しているが、実際にはどうだろう?
アメリカの調査によると、生後6ヶ月から1歳の赤ちゃんの約85%が、毎日何らかの形で砂糖を摂取している。ベビーフードやヨーグルト、ジュースなど、一見健康的に見える食品にも、驚くほど多くの砂糖が含まれていることが多い。
例えば、市販のフルーツヨーグルト(赤ちゃん用)には、1カップあたり10〜15グラムの砂糖が含まれていることがある。これは角砂糖3〜4個分だ。
妊娠中の食事も重要
この研究は、妊娠中のお母さんの食事も重要だと示している。お母さんが妊娠中に砂糖をたくさん摂ると、赤ちゃんの代謝システムに影響が出る可能性がある。
妊娠中の糖尿病(妊娠糖尿病)は、生まれてくる赤ちゃんが将来、肥満や糖尿病になるリスクを高めることが知られている。今回の研究は、妊娠糖尿病にならないレベルでも、砂糖の摂取量が赤ちゃんの将来に影響する可能性を示唆している。
小さな変化が大きな効果を生む
研究者たちが強調しているのは、完全に砂糖をゼロにする必要はないということだ。配給制度の下でも、人々は1日40グラムの砂糖を摂取していた。ゼロではない。
重要なのは、現代の過剰な砂糖摂取を「適度なレベル」に戻すことだ。ジュースの代わりに水や牛乳を飲む、市販のお菓子の代わりにフルーツを与える、といった小さな変化でも、長期的には大きな効果がある。
研究チームの試算によると、もし現代のアメリカ人全員が、配給制度と同じレベルまで砂糖を減らせば、心臓病による医療費が年間数十億ドル削減される可能性があるという。
じゃあ、今からでも砂糖を減らせば効果あるのかな?
もちろんです! この研究は赤ちゃんの時の影響を調べたものですが、大人になってからも砂糖を減らすことは健康に良いですよ
ただ、この研究が教えてくれるのは、人生の「スタート地点」がいかに大切かということだ。赤ちゃんの時の食習慣が、一生の健康の土台を作る。妊娠中や子育て中の親にとって、この知識は大きな武器になるはずだ。
参考文献:
Less sugar as a baby, fewer heart attacks as an adult
出典: Science Daily










コメント