ねえはかせ、宇宙飛行士ってキノコ食べたの? しかも宇宙で育てたやつ!
そうなんです。国際宇宙ステーションで栽培したヒラタケを、宇宙飛行士が実際に調理して食べたんですよ。無重力で育てた食材を人間が食べるのは、これが初めてなんです
これまでISSでは、レタスやミズナといった葉物野菜の栽培実験が行われてきた。だが、タンパク質を豊富に含むキノコ類の本格的な栽培と試食は、今回が初めてだ。
なぜ宇宙でキノコなのか


火星移住のカギを握る食料自給
宇宙でキノコを育てる理由は、将来の火星移住計画にある。地球から火星まで片道約7ヶ月。往復だけで1年以上かかる旅では、新鮮な食材を地球から運ぶことは不可能に近い。
そこで注目されたのが、宇宙空間での食料自給だ。キノコはタンパク質・ビタミンD・食物繊維が豊富で、栄養価が高い。さらに、栽培に必要な光が少なく、暗い環境でも育つ。
NASAと欧州宇宙機関(ESA)の共同研究チームは、数年前からキノコの宇宙栽培プロジェクトを進めてきた。地上での予備実験を経て、ようやく宇宙での本格栽培にこぎつけた。
ヒラタケが選ばれた理由
今回栽培されたのはヒラタケ(Pleurotus ostreatus)という品種だ。ヒラタケは成長が速く、栽培開始から約2週間で収穫できる。
また、木くずやおがくずを栄養源として育つため、ISSで出る植物の残骸や紙くずをリサイクルできる。これは長期宇宙ミッションにおいて、資源の循環利用につながる重要なポイントだ。
宇宙飛行士の食事は、通常レトルトパックや冷凍食品が中心。同じメニューが続くと、心理的なストレスも大きい。新鮮なキノコが食卓に並べば、クルーの士気向上にもつながる。
無重力でキノコはどう育つのか
地球では、キノコは重力に従って下向きに傘を広げる。では、無重力環境ではどうなるのか。
研究チームの観察によると、ISSで育ったヒラタケはあらゆる方向に傘を広げたという。上下の概念がない宇宙では、キノコは光の方向や気流に従って成長するようだ。
形は地上のものと少し異なるが、成長速度や栄養価には大きな差がなかった。この結果は、宇宙農業の可能性を大きく広げる発見だ。
宇宙キノコの味は? 初の試食レポート


ISSのキッチンで調理
収穫されたヒラタケは、ISSの小さなキッチンスペースで調理された。使われたのは、電気加熱式の調理器具だ。火を使えない宇宙では、すべて電気で加熱する。
宇宙飛行士たちは、ヒラタケをオリーブオイルとニンニクで炒め、ハーブで味付けした。地上のレシピと変わらないシンプルな調理法だ。
試食した宇宙飛行士の一人は、「地球で食べるキノコと味は変わらない。むしろ新鮮で美味しい」とコメントした。収穫から調理までわずか数時間というスピードが、鮮度の決め手だった。
栄養分析の結果
地上に持ち帰ったサンプルを分析したところ、タンパク質含有量は地球産のヒラタケと同等だった。ビタミンDの量もほぼ変わらない。
ただし、無重力環境では細胞壁がやや薄くなる傾向が見られた。これは、重力による物理的なストレスがないためと考えられる。食感は地上のものよりわずかに柔らかいが、調理すれば気にならないレベルだという。
安全性の確認
宇宙で育てた食材を人間が食べる前に、徹底的な安全性チェックが行われた。微生物検査、重金属検査、放射線量測定など、地上の食品検査基準をすべてクリアしている。
ISSは地球から約400キロメートル上空を飛んでおり、宇宙放射線の影響を受ける。しかし、キノコに含まれる放射線量は地球の高地で栽培されたキノコと同レベルで、健康への影響はないと判断された。
宇宙農業の未来と課題


火星での本格的な食料生産へ
今回のキノコ栽培成功は、火星での食料生産に向けた大きな一歩だ。NASAのアルテミス計画では、2030年代に火星有人探査を目指している。
火星の地表は放射線が強く、大気も薄い。地下基地を建設し、そこで農業を行う計画が検討されている。キノコは暗い環境でも育つため、地下農場に最適な作物の一つだ。
さらに、キノコには有機廃棄物を分解する能力もある。火星基地では、人間の排泄物や植物の残骸をキノコ栽培に再利用することで、完全循環型のエコシステムを作れる可能性がある。
他の菌類への応用
ヒラタケの成功を受けて、次はシイタケやマイタケの宇宙栽培実験も計画されている。品種ごとに成長条件が異なるため、それぞれ最適な栽培方法を確立する必要がある。
また、食用キノコだけでなく、薬用キノコの栽培も検討されている。例えば、霊芝(れいし)は免疫力を高める成分を含むとされ、長期宇宙ミッションでの健康維持に役立つ可能性がある。
残された技術的課題
宇宙農業の実用化には、まだいくつかの課題がある。最大の問題は水と空気の管理だ。
キノコは湿度が高い環境を好むが、ISSの閉鎖空間で湿度を上げすぎると、壁に結露が発生し、電子機器が故障する恐れがある。湿度を局所的にコントロールする栽培容器の開発が進められている。
また、キノコは二酸化炭素を吸収し酸素を放出するが、その量は植物ほど多くない。宇宙基地の空気循環システムに、キノコ栽培をどう組み込むかも課題だ。
栽培スペースの確保も問題だ。ISSは非常に狭く、農業専用のスペースは限られている。縦型栽培システムや、壁面を利用した栽培方法の研究が進んでいる。
宇宙でキノコが食べられるなんて、すごい時代になったね!
本当にそうですね。将来、火星で育てたキノコのピザを食べる日が来るかもしれませんよ
今回の実験は、人類が宇宙で自給自足する未来への第一歩だ。レタスやトマトに続き、タンパク質源となるキノコの栽培成功は、長期宇宙ミッションの実現可能性を大きく高めた。次は、宇宙産の食材だけで一食を完結させる「フルコース実験」が計画されている。
参考文献:
We ate space mushrooms and survived to tell the tale
出典: Space.com










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