はかせ、T. レックスってドシンドシン歩いてたイメージだけど、違うの?
実はね、最新の研究でT. レックスはつま先で歩いていたことが分かったんです。バレリーナみたいに優雅だったんですよ
ティラノサウルス・レックス(T. レックス)といえば、地響きを立てて歩く巨大な肉食恐竜というイメージが定着している。映画「ジュラシック・パーク」でも、コップの水が振動するシーンが印象的だった。
ところが、ロイヤル・ソサエティ・オープン・サイエンス誌に発表された最新研究により、この常識が覆された。T. レックスは実際にはつま先立ちで歩いていたというのだ。
足跡化石が語る真実


8,000万年前の足跡を3Dスキャン
研究チームは、アメリカ・コロラド州で発見された白亜紀後期(約8,000万年前)の恐竜の足跡化石を詳しく分析した。この足跡は長さ約80センチメートルで、成体のT. レックスのものと推定される。
従来の化石研究では、足跡の平面的な形状しか見られなかった。しかし今回、研究チームは3Dレーザースキャン技術を使い、足跡の微細な凹凸まで再現することに成功した。まるで犯罪現場の足跡を鑑識が調べるように、ミリ単位で足跡の深さや角度を測定したのだ。
かかとが地面に着いていない証拠
スキャンデータを詳しく見ると、驚くべき事実が浮かび上がった。足跡の一番深い部分は前足部(指の付け根あたり)で、かかとに相当する部分はほとんど沈んでいなかったのだ。
人間が全力疾走するとき、かかとを地面に着けず、つま先だけで走る。T. レックスも同じように、体重をつま先に集中させて歩いていたことになる。体重約9トンもある巨体を、わずか3本の指で支えていたわけだ。
現代の鳥との共通点
実はこの歩き方、現代の鳥類と全く同じだ。ニワトリやダチョウをよく観察すると、かかとを浮かせて指の部分だけで立っている。恐竜と鳥が進化的につながっていることは以前から知られていたが、歩行方法まで共通していたとは驚きだ。
研究チームのメンバーであるコロラド大学の古生物学者は「T. レックスの足の骨格を見ると、かかとの骨が地面に着くような構造になっていない」と指摘する。人間でいう「かかと」は、実は地面から30センチ以上浮いた位置にあったのだ。
なぜつま先歩きだったのか


スピードを出すための進化
つま先立ちで歩くメリットは何だろうか。最大の理由は走る速度だ。人間の短距離走者がスパイクシューズのつま先だけで地面を蹴るように、つま先歩きは瞬発力を生み出す。
コンピューターシミュレーションによると、T. レックスの最高速度は時速約27キロメートル。これは人間のトップアスリート並みだ。もしかかとまで地面に着けて歩いていたら、この速度は出せなかっただろう。
足への負担を分散する構造
もう一つの理由は、衝撃吸収だ。9トンの体重で地面を踏みしめれば、足の骨には莫大な力がかかる。つま先立ちにすることで、足首の関節がバネのような役割を果たし、着地の衝撃を和らげていたと考えられる。
実際、T. レックスの足の骨には、現代のバスケットボール選手の足に見られるような強靭な腱が付着していた痕跡がある。この腱がクッションとなり、走ったり急停止したりする動きを可能にしていたのだ。
狩りの成功率を上げる静かな歩行
さらに意外なメリットもある。つま先歩きは足音を小さくする効果があるのだ。獲物に気づかれずに近づくには、ドシンドシンと地響きを立てるより、静かに歩ける方が有利だ。
現代のネコ科動物も、狩りのときはつま先だけで歩く。T. レックスも同じ戦略を使っていた可能性が高い。研究チームは「映画のイメージとは違い、T. レックスは意外と静かに獲物に忍び寄っていたかもしれない」と語る。
他の恐竜はどうだったのか


肉食恐竜はほぼ全てつま先歩き
T. レックス以外の肉食恐竜も、ほとんどが同じ歩き方だったようだ。アロサウルスやヴェロキラプトルの足跡化石を分析しても、かかとの痕跡はほとんど見つからない。
これらの恐竜に共通するのは、2足歩行で走るのが速いという特徴だ。獲物を追いかけるハンターとして、つま先歩きは必須の能力だったのだろう。
草食恐竜は違う歩き方
一方、草食恐竜の多くは違う歩き方をしていた。トリケラトプスのような4足歩行の恐竜は、足裏全体を地面に着ける蹠行性(しょこうせい)だった。人間やクマと同じ歩き方だ。
巨大な体を安定して支えるには、足裏全体で体重を分散させる必要があったのだろう。スピードよりも安定性を優先した結果だ。
首長竜は特殊なクッション構造
さらに興味深いのが、ブラキオサウルスのような首長竜だ。彼らの足跡化石を見ると、足の裏に厚い脂肪パッドがあった痕跡が残っている。
体重が50トン以上にもなる首長竜は、ゾウのような脂肪クッションで衝撃を吸収していた。これがなければ、一歩歩くだけで足の骨が砕けてしまっただろう。
恐竜って種類によって歩き方が全然違うんだね!
今回の研究は、化石から恐竜の動きを復元する新しい手法を示した。3Dスキャン技術の進歩により、これまで見えなかった恐竜の生態が次々と明らかになっている。
T. レックスが優雅につま先立ちで歩いていた姿を想像すると、恐竜のイメージが少し変わるかもしれない。もしタイムマシンで白亜紀に行けたら、その足音の静かさに驚くことだろう。
参考文献:
Forget flatfooted lumbering T. rex. New research shows it walked on tiptoes
出典: Phys.org
アイキャッチ画像: Photo by Amy-Leigh Barnard on Unsplash










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