はかせ、月って磁石みたいに磁場があったりするの?
実は昔はあったんです。しかも地球よりずっと強い磁場が、短い期間だけ何度も現れていたことが分かったんですよ
オックスフォード大学の研究チームが、アポロ計画で持ち帰られた月の石を最新技術で再分析したところ、40年間続いた論争に決着がついた。月は弱い磁場を持っていたのではなく、地球の磁場の100倍以上という超強力な磁場を、短時間だけ何度も発生させていたらしい。
40年続いた月の磁場論争


アポロが持ち帰った謎の石
1969年から1972年にかけて、アポロ計画で月から約380キログラムの岩石が地球に持ち帰られた。科学者たちがこれらの石を調べると、石の中に磁気の記録が残っていることが分かった。
地球の岩石も同じように磁気を記録している。溶岩が冷えて固まるとき、その時代の地球の磁場の強さと向きが岩石に刻まれるのだ。月の石も同じ原理で、約35億年前の月の磁場を記録していた。
ところが問題があった。測定結果がバラバラだったのだ。ある石からは地球と同じくらい強い磁場の証拠が見つかり、別の石からはほとんど磁場がない証拠が出た。
2つの仮説が真っ向対立
科学者たちは2つのグループに分かれて論争を続けた。
一方のグループは「月には弱いけど長く続く磁場があった」と主張した。もう一方は「短時間だけ超強力な磁場が現れていた」と考えた。どちらも証拠があったため、決着がつかなかった。
この論争が続いた理由は、測定技術の限界にあった。1970年代の装置では、石に記録された磁気の細かい変化を正確に読み取れなかったのだ。
最新技術が明かした真実


量子ダイヤモンド顕微鏡という武器
オックスフォード大学のクレア・ニコルズ博士らの研究チームは、量子ダイヤモンド顕微鏡という最新装置を使った。この装置は、ダイヤモンドの中にある特殊な構造を利用して、極めて弱い磁気まで測定できる。
従来の装置が1ミリメートル四方の平均値しか測れなかったのに対し、量子ダイヤモンド顕微鏡は髪の毛の太さの10分の1という細かさで磁気を測定できる。これは、本の1ページ全体をざっくり読むのではなく、1文字ずつ虫眼鏡で見るようなものだ。
両方の説が正しかった
研究チームがアポロ15号と17号が持ち帰った石を詳しく調べた結果、驚くべき事実が判明した。同じ石の中に、強い磁場の記録と弱い磁場の記録が混在していたのだ。
つまり、月の磁場は一定ではなく、急激に強まったり弱まったりを繰り返していた。強いときには地球の磁場の100倍を超え、弱いときにはほとんどゼロになっていた。
「どちらの研究者も間違っていなかったんです。ただ、測定した石のサンプルがたまたま強い時期のものか弱い時期のものかで、結果が違って見えただけだったんですね」とニコルズ博士は説明する。
衝突が磁場を生み出した
では、なぜ月の磁場はこんなに激しく変動していたのか。研究チームは、巨大隕石の衝突が原因だと考えている。
直径数キロメートルの隕石が月に衝突すると、膨大なエネルギーが解放される。このエネルギーによって月の内部の液体金属層が激しくかき混ぜられ、一時的に強力な磁場が発生する。これは、スプーンでコーヒーをかき混ぜると渦ができるのに似ている。
この磁場は数日から数週間しか持続しない。しかし、その短い間に溶岩が冷えて固まれば、超強力な磁場の記録が石に刻まれる。衝突がない時期には弱い磁場しかないため、その時期に固まった石には弱い磁場の記録が残る。
月の歴史が書き換わる


ダイナモ理論の限界
地球の磁場は、ダイナモ効果という仕組みで生まれている。地球の核には液体の鉄があり、これが対流することで磁場が発生する。地球の自転と熱対流が組み合わさって、安定した磁場が何十億年も維持されている。
月にも昔は液体の核があったと考えられているが、月は地球より小さいため、すぐに冷えて固まってしまったはずだ。そのため、月のダイナモは数億年しか動かなかったと推定されている。
今回の発見は、月の磁場がダイナモだけでは説明できないことを示している。隕石衝突という外部からの刺激が、磁場を一時的に復活させていたのだ。
他の天体でも起きている?
この発見は、月以外の天体にも当てはまるかもしれない。火星や水星も、かつては磁場を持っていた証拠がある。これらの天体でも、隕石衝突が磁場を強めていた可能性がある。
特に火星は、太陽系最大級のクレーターをいくつも持っている。これらの衝突が、火星の磁場の歴史に影響を与えていたかもしれない。
生命の可能性への影響
磁場は、宇宙からの有害な放射線を防ぐバリアの役割を果たす。もし月が定期的に強い磁場を持っていたなら、その時期には表面の環境が今よりずっと穏やかだった可能性がある。
将来、月面基地を作るときには、この磁場の歴史が重要な情報になるかもしれない。かつて磁場が強かった場所には、放射線にさらされにくい環境が残っているかもしれないからだ。
月にもこんなドラマチックな歴史があったんだね!
そうなんです。今も夜空に見える月が、35億年前には地球より強い磁場を持っていたなんて、ロマンがありますよね
この研究は科学誌Natureに掲載され、世界中の研究者から注目されている。アポロ計画から50年以上経った今も、月の石は新しい発見を私たちに教えてくれている。
参考文献:
Apollo rocks reveal the Moon had brief bursts of super-strong magnetism
出典: ScienceDaily










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