オックスフォード大学を中心とする国際チームが学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に発表した、超フカフカな惑星のニュースだ。
木星ほどの大きさがあるのに、密度は綿あめ(約0.05g/cm³)を下回る。そうした惑星が同じ星系に2つ並んでいた。
綿あめ並みに密度が低い惑星「TOI-791」系
密度は0.038g/cm³と0.047g/cm³
舞台は南半球のとびうお座(Volans)の方向、地球から約1,110光年離れた場所にあるF7型の恒星「TOI-791」だ。
論文によると、この恒星は質量が太陽の約1.28倍、半径が約1.47倍で、表面温度は約6300Kだ。その周りを回る2つの新発見の惑星が「TOI-791 b」と「TOI-791 c」である。
論文で示された密度はTOI-791 bが0.038g/cm³、TOI-791 cが0.047g/cm³しかない。
論文で示された密度は1立方センチメートルあたり0.04グラム前後と、非常に小さい。
比較として、地球の平均密度は5.5g/cm³、太陽系で最大のガス惑星である木星でも1.33g/cm³ある。今回の惑星は、木星の密度のおよそ28〜35分の1に過ぎない。
質量は、TOI-791 bが地球の約9.5倍、cが約18.6倍と求められた。
ただし、この質量は2つの惑星の通過時刻のずれ(TTV)から計算したもので、論文は観測を続けて確かめる必要があるとしている。
上限はbが地球の40倍、cが35倍で、この範囲は観測の系統誤差があっても変わらないという。
木星サイズなのに、密度は木星の30分の1前後
ふたつの惑星の半径は、どちらも木星とほぼ同じだ。論文によればTOI-791 bが木星半径の約0.99倍、TOI-791 cが約1.16倍。
それでも密度は木星の28〜35分の1しかない。大きさが同じでも、含まれる物質の量がはるかに少ないということだ。
大学の発表は、綿あめの密度を約0.05g/cm³として比べている。
TOI-791の2惑星は、その綿あめより低い。ただしTOI-791 cの密度は0.047±0.006g/cm³で、誤差を考えると綿あめの0.05に近い。
こうした極端に密度の低い巨大惑星は「スーパーパフ(super-puff)」と呼ばれる。
論文は、ケプラー51系の惑星との似た点から、TOI-791の2惑星も「スーパーパフかもしれない」と慎重に書き、確かめるには恒星の年齢の測定が重要だとしている。

キクこんなにフカフカな2つの惑星、それぞれ何日くらいかけて星のまわりを回っているんだろう?
5:3の共鳴に近い2つの惑星
TOI-791 bとTOI-791 cは、同じ原始ガス円盤から一緒に生まれた「きょうだい」とみられている。2つの公転周期の比は、5:3の平均運動共鳴にごく近い(ずれは0.07%)。
論文は、2つはこの共鳴にはまっている可能性が高いとするが、確定には偏心率などの測定が必要だとしている。
内側の惑星が5周するあいだに、外側の惑星はほぼ3周する。両者は互いに重力で引っぱり合い、通過時刻が最大で約50分ずれる。
この「ずれ」を解析して、それぞれの質量が求められた。
公転周期は、TOI-791 bが約139日、TOI-791 cが約232日だ。
これまでにスーパーパフ惑星が複数見つかっている惑星系は、TOI-791のほかにたった4系統しか知られていない。
大学の発表は、TOI-791を、こうした惑星の形成と進化を調べる「きわめて珍しい実験の場」としている。論文によると、巨大惑星が複数通過する系は、TOI-791が9例目だ。
8年がかりで姿を確かめた国際チーム


異変に最初に気づいたのは市民科学者
惑星の候補を最初に見つけたのは、プロの天文学者ではなく、市民のボランティアだった。
NASAが運用する系外惑星探査衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)が撮影した膨大な明るさデータを、世界中の市民が手分けして調べる「Planet Hunters TESS」というプロジェクト。
参加した有志が、TOI-791 bを2019年に、TOI-791 cを2023年に「惑星かもしれない天体」として報告した。
TESSは2018年に打ち上げられた。TOI-791は、TESSが長く観測し続けられる南天の「連続観測領域」にある。
南極から11時間の通過を見届けたASTEP望遠鏡
候補を本物の惑星と確かめるため、研究チームは星の前を横切る現象「トランジット(食)」を地上の望遠鏡でも観測した。
だがTOI-791の惑星は、1回の通過に11時間以上もかかる。
その中心になったのが、南極のコンコルディア基地にあるASTEP(Antarctic Search for Transiting ExoPlanets)望遠鏡だった。
南極の冬は何か月も暗闇が続く。この長い夜を使って、ASTEPは2つの惑星の11時間を超えるトランジットを、途切れることなく全体にわたって観測できた。
論文によれば、これらは地上から全体が観測されたトランジットとして、継続時間が最も長い。
TESSと地上望遠鏡を組み合わせて質量を割り出す
確定には、宇宙のTESSと南極のASTEPに加え、チリ、オーストラリア、南アフリカの地上の観測所のデータも使われた。
データ収集は8年に及んだ。
惑星が星の手前を通ると、地球から見た星の明るさがわずかに暗くなる。この明るさの落ち込みの深さから惑星の大きさが分かる。
さらに、惑星どうしの引き合いによる通過時刻のズレを丁寧に解析することで、それぞれの質量も割り出した。
研究チームを率いたオックスフォード大学のジョージ・ドランスフィールド博士は、大学の発表で次のように述べている。
「スーパーパフ惑星として知られているのはほんの一握りで、同じ系で2つ見つかるのはさらに珍しい。密度がきわめて低いので、惑星系がどう形成され進化するかを理解するうえで興味深い対象になる」
極端に低い密度の理由は、まだ分かっていない
なぜこれほど密度が低いのかは、まだよく分かっていない。論文が挙げる説の1つは、質量の20%を超える割合を水素とヘリウムの厚い大気が占めている、というものだ。
もう1つは、密度が普通の惑星が、光を通さないリングを真正面から見せているだけだという説で、複数の惑星が同じ低密度を示す系では、すべてが似たリングを持つ必要があり、説明が難しいとされる。
星から遠い冷たい領域で生まれたとする説
大学の発表によると、この説では、厚いガスの層は、星から遠い原始ガス円盤の冷たい領域で、ガスが冷えながら固体の核のまわりに素早く集まってできたと考える。
ただしこれはスーパーパフ全般について挙げられている説で、TOI-791の2惑星で確かめられたわけではない。研究チームは追加の観測で、有力な説明のいくつかを除外したいとしている。
ジェイムズ・ウェッブで大気を読む次の計画
研究チームは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)でTOI-791の2惑星を観測することを提案している。
狙いは、ふくらんだ大気に炭素・窒素・酸素を含む分子があるかを調べることだ。
バーミンガム大学のアマウリ・トリオー教授(ASTEPの英国側の責任者)は、次のように述べている。
「この系は、スーパーパフ惑星がどう形成され進化するかを理解するための、またとない実験室になる。私たちは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による宇宙からの観測を提案している。ふくらんだ大気に炭素・窒素・酸素を含む分子があるかを調べ、これらの珍しい惑星がどう生まれたかについて新しい手がかりを得るためだ」
ASTEPの責任者であるコートダジュール大学のトリスタン・ギヨ教授は、こう述べている。
「こうした多惑星系は複雑で、惑星どうしの重力の相互作用は、数十年あるいはそれ以上という非常に長い期間にわたって変化する」



ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で大気の分子を調べれば、綿あめより密度の低いこの惑星たちがどう生まれたかの手がかりが見つかるかもしれないんだね。
参考文献:
ASTEP confirmation of a pair of long-period Jupiter-sized planets with extremely low densities transiting TOI-791 (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 2026)
DOI: 10.1093/mnras/stag864
論文(全文・arXiv): arxiv.org/abs/2606.30016
発表: University of Oxford, Researchers discover pair of giant ‘super-puff’ planets lighter than candy floss
出典: MNRAS / University of Oxford









