はかせ、星が死んだあとに新しい惑星が生まれることってあるの?
それを確かめる手がかりが、25年以上前のハッブル望遠鏡のデータから出てきたんだ。まだ「候補」だけどね。
地球をふくむ太陽系の惑星は、星が生まれたときに残った材料からできました。
ところが、燃え尽きた星の残りである白色矮星のまわりにも、惑星があるかもしれません。それも、星自身が死ぬときに吐き出した物質から生まれた惑星かもしれない、という研究が発表されました。イギリスのウォーリック大学などのチームが、2026年10月に学術誌『Nature Astronomy』で報告したものです。
手がかりは、白色矮星「HS 0209+0832」の大気に混ざっていたニオブという金属でした。その量は太陽の1000倍以上で、ふつうの惑星のかけらに多いはずのケイ素や鉄はほとんど見つかっていません。
論文の題は「白色矮星に降り積もる第2世代の惑星の候補の発見」です。どこまでが分かったことで、どこからがまだ候補なのか。順番に見ていきます。
白色矮星は、まわりの惑星のかけらを吸い込んでいる
白色矮星は、太陽のような星が核の燃料を使い切ったあとの姿です。燃える時期の終わりに外側の物質の大半を宇宙へ吐き出し、熱い芯だけが残ります。ふつうの白色矮星は、太陽の半分ほどの重さなのに、大きさは地球より少し大きいだけです。
この星の大気では、重い原子は下に沈み、軽い原子が表面に残ります。それなのに、大気から金属が見つかる白色矮星がたくさんあります。これまでの研究で、その多くは壊れた惑星のかけらを吸い込んだ跡だと分かってきました。これまで調べられたかけらの成分はさまざまですが、全体としては太陽系の天体によく似ていました。
これまでに見つかった印は、ふつうはケイ素や鉄のような、岩をつくる元素が中心です。白色矮星の大気を調べると、まわりを回っていた天体が何でできていたかが分かるわけです。白色矮星そのものの姿は、白色矮星の光から色を計算した記事でも紹介しました。
ハッブルの古いデータに残っていた謎の線
今回の白色矮星は、1999年1月にハッブル宇宙望遠鏡で紫外線の観測が行われていました。1999年のこの観測データには、正体の分からない元素の印が約100本ありました。以前の研究では、何かを吸い込んでいることまでは分かったものの、その出どころは分からないままでした。
筆頭著者で博士課程の学生のジェイミー・ウィリアムズさんは、新しくなった元素の線のデータベースを使って、この記録を見直しました。すると謎の線の多くが、ニオブの線と合ったのです。論文では、正体不明だった線の多くを銅とニオブの線と特定し、ニオブは5本のNb III線と57本のNb IV線で見分けています。
ウィリアムズさんは「保管されたデータで最初に見つけたとき、その線の形に見覚えがなかった」と話しています。
チームは、2002年12月に遠紫外線分光探査衛星FUSEで撮られた別のスペクトルも調べました。そこから求めたニオブの量は、ハッブルのデータの値と誤差の範囲で一致しました。
さらに、金属を含むほかの白色矮星33個のFUSEのスペクトルも調べ、どれにもニオブが無いことを確かめています。ウォーリック大学のボリス・ゲンジッケ教授は「ニオブについて聞かれたときは本当に仰天した。これまで調べられたどの白色矮星でも報告がない元素だったから」と話しています。
ニオブは太陽の1000倍以上、鉄は見つからない
チームは9種類の金属の量を測り、15種類の金属については「多くてもこれ以下」という上限を出しました。
目立ったのは、亜鉛・銅・ニオブなど鉄より重い元素が多いことです。論文によると、特にニオブは太陽より1000倍以上多く含まれていました。
反対に、岩をつくる元素は少ない結果でした。これまでの研究の値では、地球全体でケイ素と鉄を合わせると重さの約48%を占めます。ところがこの白色矮星の大気では、ケイ素はわずかで、鉄は見つかりませんでした。ニッケルと鉄の比は2.09より大きく、鉄に対してニッケルがとても多いことも分かりました。
この白色矮星くらいの温度では、光の押し上げる力が、ある元素を沈まないように支えることがあります。チームはこの影響を計算に入れても、吸い込まれている物質は鉄より重い元素が本当に多いと結論づけています。
窒素・酸素・リン・硫黄も少ないので、氷の多い彗星のような天体を吸い込んでいるわけでもありません。岩のかけらを吸い込んでいる白色矮星の全例や太陽系の隕石と比べても、成分が合うものはありませんでした。この白色矮星は外から物質を勢いよく吸い込んでいて、その成分は太陽系のどれともまったく違う、というのが論文の結論です。
星の最期にだけできる元素
ニオブは太陽系にもあり、地球ではアクセサリーや医療の画像装置などに使われています。では、なぜこの白色矮星のニオブが特別なのでしょうか。
研究チームのニコラス・ストーン博士(アメリカのウィスコンシン大学マディソン校)は「ニオブなど鉄より重い元素は、多くのふつうの元素と違い、星の中心の核融合ではできない」と話しています。こうした元素は、死にかけた星の中に短い間だけ生まれる特別な条件の中でしかつくられない、とストーン博士は説明します。
こうした元素をつくる仕組みの1つが、中性子をゆっくり取り込んで重い元素を育てるs過程です。論文によると、宇宙にあるs過程の元素の大部分は、一生の終わりに膨らんだ星(AGB星)の中でつくられます。
チームは、別の研究で作られた138個のAGB星の計算モデルを使い、星が吐き出す物質の元素の増え方を見比べました。その予測では、ストロンチウムとニオブは大きく増えることが多くなっていました。炭素の増え方は、モデルによって幅がありました。
論文は、ふつうの惑星と見分ける決め手を、s過程でできる元素がとても多いことだとしています。ストーン博士は「この元素の並びはs過程の目印で、ふつうの第1世代の惑星が持つはずのない化学の特徴だ」と話しています。
星の灰から惑星ができるまでの筋書き


地球など太陽系の惑星は、星が生まれたときの残りの物質からできた第1世代の惑星です。これに対して第2世代の惑星は、星の残りのまわりで、その星が捨てた物質からできる惑星を指します。
これまで第2世代とみられてきた惑星は、パルサー(中性子星)のまわりのもので、白色矮星のまわりでは見つかっていませんでした。これまでの理論研究では、星が全方向に同じように物質を吐き出すなら、相棒のいない星のまわりに惑星のもとになる円盤はできにくいとされます。ただし、相棒の星がいれば円盤ができる仕組みがいくつかあるとも考えられてきました。
今回の論文が描く筋書きはこうです。この白色矮星のもとの星には、近くを回る軽い相棒がいて、星が最期に膨らんだときにその外側に包み込まれたのかもしれません。そのとき外側のガスが吹き飛ばされ、星のまわりにs過程の元素が多い円盤ができた、という考えです。その円盤の中で、ガスが重力で直接固まって、第2世代の巨大惑星ができた可能性があります。もう1つの筋書きとして、もとからあった小さめの惑星が円盤に飛ばされてきて、第2世代の大気をまとった可能性も挙げています。
ウィリアムズさんは「この状況で惑星のもとになる円盤をつくるのは簡単ではなく、それがこうした惑星がとても珍しい理由の説明になる」と話しています。円盤をつくるには、吐き出された物質を逃がさず軌道に引き戻す相棒の星が、たぶん必要だったとみています。
ほかの説明も検討されました。遠くでできた惑星が内側へ飛ばされてきたとすると、それが白色矮星の冷え始めからの約500万年のうちに全部起きる必要がある、と論文はみています。相棒が褐色矮星だったとしても、s過程の元素の多さを説明できるほど物質を集められないと計算されています。大気のヘリウムも吸い込まれたものとみられ、岩の天体が出どころという考えは外れます。
4.4日ごとに明るさがわずかに揺れる
惑星そのものの手がかりは、NASAの衛星TESSの観測にありました。TESSは2021年と2023年にこの白色矮星を観測していました。チームはその記録から、4.399日周期で明るさが0.120%だけ規則的に変わる信号を見つけています。
ケプラー望遠鏡で観測された別の研究では、白色矮星の自転はふつう1.25日くらいで、4日より長いのは20個のうち1個だけでした。論文は、今回の変化が白色矮星から0.04天文単位の所を回る巨大惑星で説明できるとしています。NASAの発表では約600万kmで、水星と太陽の距離よりずっと近い所です。
チームは、この候補が木星くらいの大きさのガス惑星で、大気を急速に失っていると見積もりました。白色矮星はできてまだ新しくとても熱いので、強い光で惑星の外側のガスをはぎ取っているとみられます。逃げたガスが白色矮星の表面に降り積もり、大気の金属になるという見方です。計算した惑星の蒸発の速さは、白色矮星に降り積もる速さの測定値より大きく、この見方と矛盾しません。
明るさの変化の原因は、まだ決まっていません。惑星の昼の面と夜の面が交互に見えているのかもしれませんし、蒸発するガス惑星の彗星のような尾が前を横切っているのかもしれません。
ほかの白色矮星の惑星の候補と比べると
白色矮星の近くの惑星は、これまでにも報告があります。2019年には、ゲンジッケ教授らが別の白色矮星で、氷の巨大惑星の大気の深い層に似たガスを吸い込んでいる例を報告しました。2019年の研究では、そのガスを毎秒約33億グラム吸い込んでいました。2019年の同じ研究は、スペクトルで見つかる近い巨大惑星をもつ白色矮星を、約1万個に1個と見積もっています。
2020年に別のチームが報告した白色矮星WD 1856+534では、木星とほぼ同じ大きさの惑星の候補が1.4日ごとに星の前を横切っていました。
論文によると、ほかに知られている白色矮星の近くの惑星は、0.02〜0.07天文単位の所を回っています。
ただ、これらは近くに来た惑星やそのかけらを見た例で、白色矮星自身の材料からできた惑星だという話ではありません。今回の候補が目を引くのは、成分から「星の灰でできたかもしれない」と言える点です。
「候補」にとどまる理由
ウォーリック大学の発表文は「白色矮星のまわりを回る第2世代の惑星の初めての例を見つけた」と言い切っています。一方、論文の題は「候補」で、はっきり示したのは「第2世代の惑星の候補から物質を吸い込んでいる」ことまでです。発表文も、確かめられれば第2世代の惑星をもつ初めての白色矮星になる、と書いています。
論文には、まだはっきりしない点も書かれています。TESSの観測区間のうち、2つ(セクター42と70)では、統計的に意味のある周期が見つかりませんでした。明るさのばらつきは約2.1%と信号よりずっと大きく、観測区間ごとに約6周期しか観測できていません。チームは、この信号の大きさなら2つの区間で見つからなくてもおかしくないと試算し、約4.4日の変化がずっと続いているという見方と矛盾しないとしています。
ニオブが多ければストロンチウムも多いはずですが、ストロンチウムは見つかっていません。論文は、ストロンチウムに比べてニオブが多いAGB星の仲間がいることや、惑星の中で元素の割合が変わったことを、理由の候補に挙げています。第2世代の惑星の大気がどんな成分になりそうかを決めるには、詳しい計算がまだ必要です。第2世代の惑星がどうできるのか、どのくらい珍しいのかも、分かっていないことが多いとウィリアムズさんは話しています。
論文は、熱い白色矮星の紫外線のスペクトルで炭素とs過程の元素の多さを探せば、ほかの候補も見つけられるとしています。そうした例を集めれば、第2世代の惑星のでき方を調べる手がかりになります。ゲンジッケ教授は、1つ見つかると「ほかにいくつあるのか、太陽系にも太陽の灰から第2世代の惑星ができるのか」という疑問がわく、と話しています。
星が死んだあとにも、惑星の物語に続きがあるかもしれないんだね。
そう。でもまだ候補だから、ほかの例が見つかるかどうかが大事なんだ。
この発見は、昔の観測データを新しい元素の線の一覧で読み直したことから始まりました。データを残しておくと、問いが変わったときに、同じ記録から別の答えが出てくることがある。この研究は、そんな例にも見えます。




参考文献:
一次ソース: Williams, J. T., Gänsicke, B. T., Stone, N. C. et al., Discovery of a second-generation planet candidate accreting onto a white dwarf(Nature Astronomy, 2026)DOI:10.1038/s41550-026-02983-7
研究機関: ウォーリック大学(イギリス)ほか / 発表文: University of Warwick「The phoenix planet」、NASA「Suspected Second-generation Planet Solves NASA Hubble Cold Case」
別の研究: Gänsicke, B. T. et al., Accretion of a giant planet onto a white dwarf star(Nature, 2019)DOI:10.1038/s41586-019-1789-8 / Vanderburg, A. et al., A giant planet candidate transiting a white dwarf(Nature, 2020)DOI:10.1038/s41586-020-2713-y
基礎知識: NASA Imagine the Universe!「White Dwarf Stars」









コメント