夜空の星をよく見ると、色に少しずつ違いがあります。ベテルギウスやアンタレスのような明るい星ははっきり赤っぽく、シリウスやリゲルは少し青っぽく見えます。
では、緑色の星はあるのでしょうか。イギリスのウォーリック大学の天文学者たちは、ある白色矮星が、人の目には緑に見えるはずの初めての星だと発表しました。研究にはドイツのキール大学の研究者も加わっています。
白色矮星は、太陽のような星が一生を終えたあとに残る、密度の高い燃えかすです。今回の研究では黄色やピンク、シアンや紫に見えるはずの白色矮星の例も挙げられました。
ただし、この緑は望遠鏡をのぞいて見えた色ではありません。星の光を波長ごとに分けたデータを、人の色の見え方のモデルに通して計算した色です。論文は2026年に、学術誌『RAS Techniques and Instruments』に掲載されました。
私たちが見ている「色」がそもそも何なのかは、シルミーのYouTubeでも動画で解説しています。
星の色は、ふつう温度で決まる
ほとんどの星では、色は温度の目安になります。冷たい星はオレンジ、太陽のような星は白、最も熱い星は淡い青に光ります。かじ屋の鉄が熱くなるにつれて、赤からオレンジ、そして白く光るのと同じ並びです。
白色矮星も、これまではこの決まりに従うと考えられていました。白色矮星という名前も、昔最初に見つかったものが意外に熱く、白から淡い青に光っていたことから付いたものです。
研究を率いたのは、ウォーリック大学のマーク・ホランズ博士です。博士は「白色矮星の多くを含め、ほとんどの星は『完全な放射体』のようにふるまうので、色はほぼ温度だけで決まります」と話しています。そのうえで「白色矮星でほかに何がありうるのか、きちんと調べた人はいませんでした」と続けています。論文も、白色矮星のような一生の終わりの星の見た目の色は、知る限り特に調べられてこなかったと書いています。
星の色が変わって見えた例は、巨大な赤い星が黄色に変わった記事でも紹介しました。今回の主役は、それとはまったく違う種類の星です。
NASAの解説によると、白色矮星はふつう地球くらいの大きさですが、重さは地球の数十万倍もあります。自分で新しい熱を作らないため、数十億年かけてゆっくり冷えていきます。太陽も約100億年後には、赤色巨星の時期を経て白色矮星になるとされています。
望遠鏡ではなく、光の「指紋」から色を出した
白色矮星の色は、目では確かめられない
NASAの解説によると、白色矮星は暗すぎて肉眼では見えません。発表文も、色を直接見られるほど近い白色矮星は無いと書いています。
望遠鏡を使えばよい、とはいきません。論文によると、暗い星を望遠鏡でのぞいても、暗い所では目が色を見分けにくくなります。そのため、近くで見たときの色は正しく伝わりません。
天体の写真の色も、本当の見た目とは限りません。たとえば広い空を撮る観測「SDSS」の画像は、i・r・gという3つの波長の帯を、赤・緑・青に当てはめて作られています。こうした色の付け方は科学には役立ちますが、星の本当の見た目を誤解させるおそれがあると、論文は指摘しています。
スペクトルを、人の目のモデルに通す
そこで研究チームが使ったのが、天文学者がふだん集めているスペクトルというデータです。スペクトルは、星の光を波長ごとに分けた「指紋」のようなものです。プリズムが日光を虹に分けるのと同じ考え方です。
論文は、見た目の色を決める情報は、目に見える光のスペクトルにすべて含まれていると述べています。チームはこのスペクトルを人の色の見え方のモデルに通して、それぞれの星の光が目にどんな色に見えるかを出しました。
色は、パソコンの画面で標準的なsRGBという決まりで表しました。星の見た目を示すのが目的なので、色合いを保ったまま、できるだけ明るく表示しています。本物の星はずっと明るく、発表文は、実際の星は画面で見せられるより何百万倍も明るいと書いています。
試しに計算した太陽の色温度は約5870Kで、画面の白の基準の6500Kより少し低くなりました。そのため太陽は、ほんのわずかに赤っぽく見えます。色温度は、物の色を完全な放射体の色とくらべたもので、電球の色を言い表すのにも使われています。発表文の例では、「暖かい白」が3000K、「冷たい白」が6000Kです。
濃い大気が、光を吸う幅を広げる
では、白色矮星はなぜ温度の決まりから外れることがあるのでしょうか。カギは大気の濃さです。
これまでの研究で、知られている最も冷たい白色矮星の大気は、1立方センチあたり約1グラムに達することが分かっています。ほぼ水と同じ密度で、太陽の表面の数百万倍の濃さです。
こうした大気に炭素やカルシウム、ナトリウムがわずかに混ざると、まわりの濃いヘリウムのプラズマと影響し合います。その結果、薄い所よりずっと広い範囲の色の光を吸うようになります。こうして星の色が、オレンジ・白・青の並びから外れていくわけです。
論文の言い方では、原子や分子が光を吸う幅が極端に広がり、スペクトルが完全な放射体の形からかけ離れることがあります。一方で、ほぼ水素だけかほぼヘリウムだけの大気の白色矮星は、だいたい完全な放射体と同じ色になりました。
論文によると温かい白色矮星では、惑星のかけらの金属が混ざっていても吸収の線が細く、見た目の色にはほとんど影響しません。色を大きく変えうるのは、冷たくて大気が濃い星の場合です。
これまでの研究では、白色矮星の大気にある金属は、その星の惑星系の小惑星や彗星のかけらが落ちてきたものと理解されています。そうした白色矮星は、今では2000個近く知られています。
黄緑に光るはずの星「WD J1330+6435」

今回の研究で最も目を引くのが、WD J1330+6435という白色矮星です。
2021年に同じグループが行った研究では、この星を含む冷たい白色矮星4つの大気から、リチウムが見つかっていました。その研究は、4つとも惑星の地殻のかけらを取り込んだことが強く示唆されるとしています。
今回はナトリウムの吸収の形をより正確なデータで計算し直し、この星の表面温度を4240Kと求めました。発表文では、表面は約4000℃と書かれています。この星は自分の惑星系の岩の物質を取り込み、大気にカルシウムやリチウム、ナトリウムが増えています。
計算では、強く幅の広いナトリウムの吸収がオレンジの光を吸い、カルシウムが紫の光を吸っていました。そのため光の山は約500ナノメートルに来て、シャルトルーズ・グリーンという黄緑に見えるという結果になりました。
ホランズ博士は「この白色矮星の大気にわずかにあるナトリウムが、スペクトルのオレンジの部分を吸い、幽霊のような緑の光が残ります」と語っています。「惑星に立って緑の星を見上げるところを想像してみてください。SFの世界のようです」とも話しています。
研究者の知る限り、緑の星はほかに無い
発表文によると、研究者の知る限りでは生きている星でも死んだ星でも、緑だと信頼できる形で報告された星はほかにありません。発表文はこの星を、天の川銀河で初めて知られた本当に緑の星だとしています。
論文も、どんな種類の星でも緑と主張されたものは知る限り無く、今のところ白色矮星が緑の星を生む唯一の知られた方法だと書いています。
円盤の真ん中とふちで色が違う
チームは、この星を近くから見たときの円盤の画像も作りました。真ん中はあざやかな緑ですが、ふちに向かうと色が薄くなります。よく見ると、いちばん外側の画素はオレンジがかっていました。
チームは金属を含む白色矮星を、2017年の研究で集めた231個の一覧から33個選び、特に変わったスペクトルの3個を足して合計36個を調べました。この36個のうち緑はWD J1330+6435だけではなく、WD J0851+1543とWD J1351+2645も緑に見えました。ただしこの2つの色は、ずっと淡いものでした。
ピンク、黄、シアン 大気の中身で色が分かれる
空のあちこちの白色矮星に同じ方法を当てはめると、色は大気の中身ごとのグループに分かれました。炭素の多い白色矮星はピンクか紫、砕けた小惑星や彗星のかけらを取り込んだものは黄色っぽくなります。
水素とヘリウムが混ざった大気の冷たい白色矮星は、シアンや淡い青になることが多いという結果でした。とても濃い大気の中で、水素の分子がヘリウムの原子とぶつかるためです。
知られている中で最も赤いかもしれない星
反対の極端として、チームはこれまでで最も赤い星かもしれないものを挙げました。WD J1011+2845という白色矮星です。
これまでの研究によると、この星は地球から48光年の近さにあります。深い対流の層が、中心の炭素を表面まで持ち上げていると考えられています。
今回の計算では、炭素の分子が光を大きくゆがめ、ほとんどの光が600ナノメートルより長い波長に押し込まれていました。その結果、ふつうの星には無い深いサーモンピンクに見えます。論文は、見た目の色では知られている中で最も赤い星だろうとみています。
冷たいのに青い星
WD J2356-2054という白色矮星も、変わった結果になりました。この星は2001年に別のチームが見つけたもので、ナトリウムの吸収が光の大部分に広がるスペクトルは、当時「奇妙」と書かれました。
今回の計算では、この星は表面温度が約4000Kと冷たいのに、あざやかな青に見えるという結果でした。論文はこの星を、緑の星のもっと極端な版とみています。冷たい白色矮星を十分たくさん調べれば、あざやかな緑やシアン、青の星が今後の観測で見つかるかもしれないとしています。
近くの白色矮星を全部調べると、平均は白だった
こうした変わった色の星は、どれくらいあるのでしょうか。チームは偏りのない集団として、20パーセク(約65光年)以内にある白色矮星を全部調べました。論文によると、その数は152個です。
そのうち5個は完全な放射体の色から外れ、黄色が2個、ピンクが3個でした。論文は、決めた基準以上に外れる白色矮星は3.4%だけだと結論づけています。発表文はこの結果から、宇宙の白色矮星のおよそ30個に1個は変わった色に光ると考えられる、としています。
残り147個の色温度は、3000Kから2万5000Kにわたりました。真ん中の値(中央値)は6768Kで、人には白に見える色です。画面の白の基準である6504Kにとても近い値でした。
論文は、青っぽく描かれることの多い白色矮星は平均すると本当に白で、名前どおりだったと書いています。ただし幅は広く、95%の星が色温度3800Kから1万8700Kの間に入ります。
では、なぜ「白色矮星は青い」と思われてきたのでしょうか。発表文によると、熱く青い白色矮星は明るく、遠くからも見えます。そのため明るさだけで選ぶ観測では、数が多く入りすぎてしまうのです。
ウォーリック大学のボリス・ゲンジッケ教授は「30個に1個は大した割合に聞こえないかもしれませんが、宇宙の白色矮星全体で見れば、変わった色の星はたくさんあります」と話しています。
計算で出した色の、確かなところと弱いところ
今回の色は、どれも近くで見られたならという前提で計算したものです。実際にその色を目で確かめた人はいません。
論文は、WD J1330+6435のスペクトルは雑音がやや多く、実際の色合いは少し違う可能性があると認めています。ただ、2021年の古いモデルで色を出しても似た色合いになったため、緑に見えることには自信があるとしています。
炭素の多い白色矮星の例も、偏りのない代表的な集団ではありません。ありうる色の幅と最も極端な色を見せるために選んだものだと、論文は断っています。変わった色の星がどれくらいの割合でいるかを示すのは、近くの白色矮星を全部調べた結果の方です。
チームは、星の円盤の本物らしい画像を作れることも示しました。こうした画像は、科学を広く伝える場で役立つと期待しているそうです。
緑の星って、ほんとに見てみたいな。でも、望遠鏡で見えた色じゃないんだね
そうなんだ。星の光を分けたデータを人の目のモデルに通して、近くで見たときの色を出したんだよ
名前の由来になった「白」が、近くの白色矮星を偏りなく数え直したら本当に平均の色だったというのは、少し出来すぎた話にも見えます。次に気になるのは、論文が予想するあざやかな緑や青の白色矮星が、これからの観測で本当に見つかるかどうかです。


参考文献:
一次ソース: Hollands et al., Any colour you like: the diverse chromaticities of white dwarfs(RAS Techniques and Instruments, 2026)DOI:10.1093/rasti/rzag069(受理原稿: arXiv)
研究機関: ウォーリック大学、キール大学 / 発表文: University of Warwick「Astronomers reveal surprising true colours of white dwarfs」
紹介した別の研究: Hollands et al., Alkali metals in white dwarf atmospheres as tracers of ancient planetary crusts(Nature Astronomy, 2021)DOI:10.1038/s41550-020-01296-7
基礎知識: NASA Science「Types of Stars」










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