スタンフォード大学とカリフォルニア大学の共同チームが、CTスキャンやMRIでも映らない初期のがんを、血液数滴から検出する技術を開発した。肺がん検査では92%の精度で患者を正しく識別。成果はNature Biotechnology誌に掲載されている。
3つの技術を束ねた超高感度センサー

がん細胞は成長の過程で、特定のタンパク質や遺伝物質を血液中に放出する。がんバイオマーカーと呼ばれるこれらの物質は、初期のがんほど微量で、従来の方法では見逃されてきた。東京ドームいっぱいの砂から特定の数粒を探すようなものだ。
DNAナノテクノロジー + CRISPR + 量子ドット
新センサーは3つの技術を組み合わせている。まずDNAナノテクノロジーで、がんバイオマーカーだけに反応する極小の「わな」を作る。次にCRISPR(本来は遺伝子編集技術)で検出信号を何百倍にも増幅。最後に量子ドットが光を発して、たった数個の分子でもはっきりとした信号として検出する。
画像診断に対する3つの優位性

CTスキャンやMRIは、がんが数ミリメートル以上にならないと映らない。血液検査なら、画像に映る前の段階でバイオマーカーから存在を察知できる。肺がんはステージ1で見つかれば5年生存率70%超だが、ステージ4では10%以下。数ヶ月の差が生死を分ける。
身体的な負担も段違いだ。CT検査の放射線被ばく、MRIの閉所拘束、造影剤の注射――血液検査なら採血だけで済む。定期的なスクリーニングに向いている。
1回の血液検査でいろんながんをまとめてチェックできたらすごいね
実際、この技術は設計次第で複数のバイオマーカーを同時に検出できる。肺がん、大腸がん、膵臓がんなど、1回の検査で複数のがんをスクリーニングできる可能性がある。現在のように部位ごとに胃カメラ、大腸内視鏡、マンモグラフィーと別々に受ける必要がなくなるかもしれない。
実用化までのハードル

大規模臨床試験と偽陽性
現段階では小規模試験で有効性が確認されたに過ぎない。異なる人種・年齢・健康状態での検証が必要で、今後2〜3年以内に複数の医療機関と連携した臨床試験を開始予定。順調なら5年以内に医療現場で使われる可能性がある。
最大の課題は偽陽性だ。バイオマーカーの中には炎症や他の病気でも増加するものがあり、がんでない人を誤って陽性と判定するリスクがある。複数のバイオマーカーを組み合わせて精度を上げる工夫がされているが、完璧ではない。
コストの壁
DNAナノテクノロジーや量子ドットを使うため、現時点では1回数万円かかる可能性がある。健康診断に組み込むには数千円レベルまで下げる必要がある。ただしCRISPR技術も登場当初は高価だったが、今では日常的に使われるまで安くなった。同じことが起こる可能性は高い。
がんが「見つけたら手遅れ」の病気から「見つけたら治せる」病気に変わる日は、血液検査の進化にかかっている。
参考文献:
This new blood test could detect cancer before it shows up on scans
出典: ScienceDaily
アイキャッチ画像: Photo by Testalize.me on Unsplash


コメント