ブラジル本土から約1100キロ沖の大西洋にあるトリンダージ島は、定住する住民がおらず、海軍の隊員30〜40人が交代で滞在するだけの火山島だ。
アオウミガメの産卵地でもあるこの島で、サンパウロ州立大学(UNESP)の研究チームが、プラスチックが固まってできた岩を5年にわたって調べた。
論文は2025年12月に学術誌Marine Pollution Bulletinにオンライン掲載され、2026年3月号(224巻)に収録された。
キク誰も住んでいない島なのに、プラスチックの岩はどこから来たんだろう?
人の住まない孤島に「プラスチックの岩」
論文によると、調べたのは島のパルセル・ダス・タルタルガス海岸にある、プラスチックと堆積物が固まった岩だ。ブラジルでプラスチックの岩が最初に見つかったのも、この海岸だった。
2019年の時点で、海岸にその場で固着した岩(論文は「プラスティストーン」と呼ぶ)は、約12平方メートルの範囲を覆っていた。
ラマン分光法で分析すると、この岩も、そこから削れたかけらも、高密度ポリエチレン(HDPE)でできていた。
染料にはフタロシアニン系のものが含まれ、プレスリリースによると、緑色のもとは銅を含む染料だ。分析の結果、岩もかけらも部分的に溶けた海上用ロープに由来するとされた。
電子顕微鏡では、溶けて流れた跡や気泡のような空洞も見つかり、溶けてできたことを裏づけている。
トリンダージ島は、トリンダージ島・マルティン・ヴァス諸島・コルンビア山の国定記念物に含まれ、完全保護の区分に入っている。
生物の種類が豊かな火山島だが、プラスチックごみは島の浜辺にも届いている。
「プラスティグロメレート」とは何か


この種の岩は、2014年にハワイ島のカミロ海岸で報告された「プラスティグロメレート」が知られる。溶けたプラスチックに、砂や玄武岩の破片、貝殻、木片などが混ざって固まったものだ。
今回の論文は、その場に固着した岩を「プラスティストーン」、削れて割れたかけらを「プラスティクラスト」と呼び分けている。
2014年の論文によると、カミロ海岸では、キャンプのたき火で溶けたプラスチックに砂などがくっついた。
そのぶん密度が増し、1.7〜2.8 g/cm3と、プラスチックだけの粒子(0.8〜1.8 g/cm3)より重くなって、風や波で運ばれにくく、埋もれて残りやすくなる。
近くで溶岩が流れた記録はなく、人の活動でできたと判断された。トリンダージ島の岩の熱源は、入手できた抄録とプレスリリースからは確認できない。
カミロ海岸は北太平洋の亜熱帯環流の中にあり、ごみがたまりやすい浜だ。長さは約700メートルで、四輪駆動車でしか行けない。
訪れた人が長く滞在してたき火をすることが、プラスチックが溶ける条件になったと論文は指摘している。
岩の材料は、漁や船で使われたロープ


プレスリリースで筆頭著者のサントス氏は、HDPEのロープと銅を含む染料が見つかったことについて、漁業や船舶といった海の活動への警告だと述べている。
これは世界でもっとも大きい種類の海洋汚染源だという。


ウミガメの巣のくぼみに、プラスチックのかけらが集まっていた


調査したタルタルガス海岸は、アオウミガメ(Chelonia mydas)が産卵する浜だ。
波打ち際に打ち上げられたものが並ぶ線に沿って、1平方メートルあたり平均で約24個の中サイズのかけらと22個の微小なかけらがあった。
ウミガメが産卵のために掘ったくぼみの中にも、かけらはあった。最大で1平方メートルあたり1.3個で、深さ約10センチまで埋まっていた。
プレスリリースによると、大小のプラスチック片の多くは、ウミガメが毎年卵を埋めるくぼみに集まっていた。
ただし、入手できた抄録とプレスリリースには、プラスチックが卵のふ化や子ガメに与える影響を測った記述はない。
サントス氏は、このプラスチックをウミガメだけでなく魚や鳥、カニも飲み込んでいると考えられる、と推測している。





ウミガメが毎年卵を埋めるくぼみに、プラスチックのかけらが集まっていたんだね。
巣に埋まったプラスチックは、地層に残りやすい


論文は、ウミガメの巣のくぼみが人工の石を集める天然のわなになっていて、そのぶん石が埋まりやすく、地質記録にも残りやすくなると結論している。
元素分析では、かけらの内部にカルシウムが多く見つかった。これは周りの堆積物との反応がすでに始まっているしるしで、地質学的な過程に少しずつ取り込まれていくことを示すという。
筆頭著者のサントス氏はプレスリリースで、こう説明している。
「人新世を新しい地質時代とみなすための条件のひとつは、まさに人工の物質が堆積物に埋まっていることです。まだ議論の途中ですが。巣の中では地表の下最大10センチにあったので、ここは今後100万年にわたって蓄積される可能性のある場所です」。
2014年のカミロ海岸の論文も、題名は『An anthropogenic marker horizon in the future rock record』(未来の岩石記録における人為的な指標層)で、この種の石が人類の汚染の指標層になりうると提案していた。


5年で面積が45%減った岩


2019年に約12平方メートルあったその場の岩は、2024年までに面積が45%減った。波や風による浸食が少しずつ進んだためだ。
プレスリリースでは、元の大きさの約40%を失ったと書かれている。
削れたかけらは島の6つの浜で見つかり、とくにタルタルガス海岸には残り続けた。
電子顕微鏡では、表面に機械的な摩耗と化学的な風化の跡があり、微細な繊維(マイクロファイバー)が生じていることも確認された。
研究チームは、海上用ロープの管理を中心にしたごみ対策と、ウミガメが産卵する浜を優先した海岸清掃が必要だとしている。
参考文献
Santos FA, da Silva MB, Diorio GR, Tosta PG, Fontes G, Alessio P, Constantino CJL. 『Anthropogenic stones on a remote oceanic island: formation, transport, and burial in a sea turtle nesting beach』 Marine Pollution Bulletin 224, 119101, 2026(オンライン公開は2025年12月). DOI: 10.1016/j.marpolbul.2025.119101
Corcoran PL, Moore CJ, Jazvac K. 『An anthropogenic marker horizon in the future rock record』 GSA Today, 2014. DOI: 10.1130/GSAT-G198A.1
論文の抄録(PubMed): https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41391278/
プレスリリース(FAPESP): https://www.eurekalert.org/news-releases/1117986









