はかせ、ピラミッドにまた隠し部屋が見つかったってホント?
すごい話ですよ。ギザのメンカウラー王のピラミッドの東側で、レーダーと超音波を使って空気の入った2つの空洞が見つかったんです
4500年前に造られた巨大な石の山には、まだ誰も足を踏み入れていない秘密の通路が眠っているかもしれない。エジプト・ギザの3つのピラミッドのうち、最後に建てられた末っ子の「メンカウラー王のピラミッド」で、研究者たちが長年疑っていた「もう一つの入口」の有力な手がかりが、ついに姿を現した。
紀元前2510年から眠るピラミッドと「東面の謎」


ギザ三兄弟の末っ子、メンカウラー王のピラミッド
ギザ台地に並ぶ3つの大ピラミッドは、エジプト第4王朝時代に親子3代にわたって築かれた。一番大きいのは祖父クフ王のピラミッド、次が父カフラー王、そして最後に建てられた末っ子が紀元前2510年頃に完成したメンカウラー王のピラミッドだ。
高さは現在で約60メートルを超える。クフ王の半分弱しかないが、それでも21階建てビルに匹敵する巨大さだ。しかも下半分は固い花崗岩で覆われており、3兄弟の中でも特別な仕上げが施されている。
メンカウラー王は紀元前2530年前後にエジプトを治めたとされる王で、晩年に自分の墓となるこのピラミッドの建設を始めたと伝えられる。完成しないまま王が亡くなったため、息子のシェプセスカフが上部を未完成の日干しレンガで仕上げたとも言われており、3兄弟の中でも一番ドラマのある建造物だ。19世紀には別の探検家が南面に大きな穴を開けて埋葬室を探したという過去もあり、まさに「謎の集合体」のような存在として知られてきた。
異様に磨かれた東側の壁
このピラミッドにはずっと不思議に思われてきた場所がある。東側の壁面に、高さ4メートル・幅6メートルほどの異様に磨き上げられた花崗岩の区画があるのだ。
同じように丁寧に磨かれた仕上げは、ピラミッド北側の正規の入口にしか見られない。大きな石の表面の中で、ここだけが異常にツルツルと光っている。まるで分厚い辞書の中で、特定の1ページだけが強くこすられて光沢を持っているような違和感だ。
2019年に立てられた「第2の入口」仮説
この違和感に注目したのが、研究者スタイン・ファン・デン・ホーヴェンだった。彼は2019年、磨かれた東面の裏には未発見の「第2の入口」が隠れているのではないかという論文を発表した。
ピラミッドは普通、北側に1つの入口を持つ。東側にもう1つ入口があるとすれば、これまで知られていない部屋や通路が眠っている可能性が出てくる。ただし2019年の段階では、あくまで石の表面の様子から立てられた仮説に過ぎなかった。
2015年に始まった「ScanPyramids」計画


ピラミッドを傷つけずに透視する
仮説を確かめるには、ピラミッドの中をのぞき込まなければならない。だが世界遺産に穴を開けるわけにはいかない。そこで動き出したのが、カイロ大学とミュンヘン工科大学(TUM)を中心とした国際プロジェクト「ScanPyramids」だ。
このプロジェクトは2015年にスタートし、宇宙線を使ったミューオン透過画像、地中レーダー、超音波など、医療機器のような非破壊検査の手法を組み合わせてピラミッドの内部構造を調べてきた。建物にメスを入れずレントゲン写真を撮るような感覚だ。
2017年、クフ王ピラミッドで見つかった「巨大空間」
最初の大きな成果は2017年にやってきた。ScanPyramidsはクフ王のピラミッドで、長さ約30メートルにもおよぶ「ビッグボイド」と呼ばれる未知の巨大空間を発見し、世界中のニュースで取り上げられた。
このとき活躍したのが、宇宙からふりそそぐ宇宙線「ミューオン」を使った透視技術だ。ミューオンは厚い石の中もすり抜けるため、ピラミッドの裏側に検出器を置いておくと、空洞があるところとないところで通り抜ける量が変わり、それが「影」となって浮かび上がる仕組みだ。
ピラミッド内部の謎が、現代の物理学であらためて明らかになり始めた瞬間でもあった。これ以降、ScanPyramidsはギザ台地の他のピラミッドにも調査範囲を広げていく。
2023年、全長9メートルの隠し通路を確認
2023年には、同じくクフ王のピラミッドで、北面のすぐ内側に長さ約9メートル・幅・高さ2メートルほどの隠し通路の存在が正式に確認された。これは2016年から疑われていた構造で、内視鏡カメラを差し込んで実際の通路の姿が撮影された。
この成功で、ScanPyramidsの手法は「ピラミッドの中を高い精度で見抜ける」と世界に認められた。そして次なる狙いとして、長年気になっていたメンカウラー王のピラミッドの東面に研究の目が向けられた。
2026年、メンカウラー王ピラミッドの新発見


レーダー・超音波・電気抵抗の三段重ね
研究チームが東面に向けたのは、3種類の調査機器だった。地面や壁の中を電波で探る地中レーダー(GPR)、振動の反射で内部を測る超音波、そして電気の流れにくさから空洞を見つける電気抵抗トモグラフィ(ERT)の3つだ。
これらは1台でも単独で使える機材だが、ピラミッドのような分厚い石の塊が相手では、それぞれの機械にどうしても得意・不得意が出てしまう。電波が苦手な層もあれば、振動が伝わりにくい場所もある。
そこでチームが導入したのが「イメージ・フュージョン」と呼ばれる手法だ。3つの機械から集めたデータを1枚の画像に重ね合わせ、複数の検査結果が同時に「ここに何かある」と示した部分だけを抽出する。3人の医師が別々の検査結果を持ち寄り、全員が一致して指さした場所だけを病巣と判断するイメージだ。
深さ1.4メートルと1.13メートルに潜む2つの空洞
結果ははっきりしていた。磨かれた花崗岩の裏側に、2つの空気で満たされた空洞が確認されたのだ。
1つは外壁から深さ1.4メートルのところにあり、高さ約1メートル・幅約1.5メートル。もう1つは深さ1.13メートルに位置し、約0.9メートル×0.7メートルの大きさだった。中型の犬小屋ほどの空間が、壁のすぐ奥に2つ並んで眠っている計算になる。
空洞があるという情報自体はこれまでも噂されてきたが、複数の手法で位置と大きさを正確に押さえたのは今回が初めてだ。研究結果は学術誌NDT & E International(2025年・第155巻)に掲載され、論文にはザヒ・ハワス博士をはじめエジプトと欧米の研究者が名を連ねた。
幻の入口仮説に強い後押し
論文の責任者でTUMの非破壊検査の専門家、クリスティアン・グロッセ教授はコメントで「2023年のクフ王ピラミッドの隠し通路に続き、ScanPyramidsはギザでまた大きな成果にたどり着いた。私たちの調査手法は、貴重な構造を傷つけずに内部を高い精度で読み解ける。第2の入口の仮説はとてもありそうな話で、それを確認する大きな一歩になった」と述べている。
磨かれた東面・2019年の仮説・2026年に確認された2つの空洞という3つのピースが、ようやく一直線につながり始めた。それでも、空洞が本当に入口の一部なのか、儀式に使われた小さな部屋なのか、あるいは建設工事の途中で生まれた隙間なのかは、まだ分かっていない。
調査はエジプト考古最高評議会と観光・考古省の監督下で続けられている。次のステップとしては、より細かい解像度での再スキャンや、髪の毛より細い内視鏡カメラを石のすき間から差し込んで実際の空洞内を撮影する案が検討されているという。クフ王ピラミッドで2023年に隠し通路の内部映像を撮ったときと同じ手順だ。
もし映像で「人の手で作られた構造」だと判明すれば、それは紀元前2510年頃の石工たちが残したメッセージそのものになる。4500年以上沈黙してきたメンカウラー王のピラミッドは、いまその一部の口を開きはじめたところだ。
4500年も誰も気づかなかった部屋なんて、ロマンしかないよ!
東面の磨かれた花崗岩は、長らく考古学者の頭を悩ませる謎のページだった。次の調査でその扉が本当に開けば、メンカウラー王の物語に新しい1ページが書き加えられることになる。
参考文献:
Hidden voids found in Menkaure pyramid hint at secret entrance
出典: ScienceDaily (Technical University of Munich)










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