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ギザで一番小さいピラミッド、磨かれた東の壁の奥に2つの空洞

2026 10/03
歴史・考古学
2026年4月25日2026年10月3日
夕日に照らされたピラミッドと石材のイラスト
🕑この記事は約8分で読めます

編集・パクト

4500年前に造られた巨大な石の山には、まだ誰も足を踏み入れていない秘密の通路が眠っているかもしれない。

エジプト・ギザの3つのピラミッドのうち、最後に建てられた末っ子の「メンカウラー王のピラミッド」で、研究者たちが長年疑っていた「もう一つの入口」の存在を後押しする証拠が見つかった。

ただし、先に釘を刺しておくと、これは「入口が確認された」という話ではない。壁の奥に空洞があることを突き止めた、その手前の段階だ。

それでも、長年の謎に一歩踏み込んだことは間違いない。

目次

メンカウラー王のピラミッドと「東面の謎」

夕暮れのギザのピラミッド群

ギザ三兄弟の末っ子、メンカウラー王のピラミッド

ギザ台地に並ぶ3つの大ピラミッドは、エジプト第4王朝の時代に築かれた。いちばん大きいのがクフ王のピラミッド、次がカフラー王、そして3つの中でいちばん小さいのがメンカウラー王のピラミッドだ。

高さは現在で60メートルあまり。論文によると、もともとは全体を花崗岩で覆う設計だったが、実際に覆われたのは下から16〜18段までで、いまは根元の7段ほどが残っている。

メンカウラー王は紀元前2530年前後にエジプトを治めたとされる王で、晩年に自分の墓となるこのピラミッドの建設を始めたと伝えられる。

完成しないまま王が亡くなったため、息子のシェプセスカフが上部を未完成の日干しレンガで仕上げたとも言われており、3兄弟の中でも一番ドラマのある建造物だ。

異様に磨かれた東側の壁

このピラミッドにはずっと不思議に思われてきた場所がある。東側の壁面に、高さ4メートル・幅6メートルほどの異様に磨き上げられた花崗岩の区画があるのだ。

同じように丁寧に磨かれた仕上げは、ピラミッド北側の正規の入口にしか見られない。大きな石の表面の中で、ここだけが異常にツルツルと光っている。

2019年に立てられた「第2の入口」仮説

この違和感に注目したのが、研究者スタイン・ファン・デン・ホーヴェンだった。彼は2019年、磨かれた東面の裏には未発見の「第2の入口」が隠れているのではないかという論文を発表した。

ピラミッドは普通、北側に1つの入口を持つ。東側にもう1つ入口があるとすれば、これまで知られていない部屋や通路が眠っている可能性が出てくる。

ただし2019年の段階では、あくまで石の表面の様子から立てられた仮説に過ぎなかった。

2015年に始まった「ScanPyramids」計画

発掘現場で一輪車を押す人

ピラミッドを傷つけずに透視する

仮説を確かめるには、ピラミッドの中をのぞき込まなければならない。だが世界遺産に穴を開けるわけにはいかない。

そこで動き出したのが、カイロ大学とミュンヘン工科大学(TUM)を中心とした国際プロジェクト「ScanPyramids」だ。

このプロジェクトは2015年にスタートし、宇宙線を使ったミューオン透過画像、地中レーダー、超音波など、医療機器のような非破壊検査の手法を組み合わせてピラミッドの内部構造を調べてきた。

建物にメスを入れずレントゲン写真を撮るような感覚だ。

2017年、クフ王ピラミッドで見つかった「巨大空間」

最初の大きな成果は2017年にやってきた。

ScanPyramidsはクフ王のピラミッドで、長さ約30メートルにもおよぶ「ビッグボイド」と呼ばれる未知の巨大空間を発見し、世界中のニュースで取り上げられた。

このとき活躍したのが、宇宙からふりそそぐ宇宙線「ミューオン」を使った透視技術だ。

ミューオンは厚い石の中もすり抜けるため、ピラミッドの裏側に検出器を置いておくと、空洞があるところとないところで通り抜ける量が変わり、それが「影」となって浮かび上がる仕組みだ。

ピラミッド内部の謎が、現代の物理学であらためて明らかになり始めた瞬間でもあった。これ以降、ScanPyramidsはギザ台地の他のピラミッドにも調査範囲を広げていく。

2023年、全長9メートルの隠し通路を確認

2023年には、同じくクフ王のピラミッドで、北面のすぐ内側に長さ約9メートル・幅・高さ2メートルほどの隠し通路の存在が正式に確認された。

これは2016年から疑われていた構造で、内視鏡カメラを差し込んで実際の通路の姿が撮影された。

この成功で、ScanPyramidsの手法は「ピラミッドの中を高い精度で見抜ける」と世界に認められた。

そして次なる狙いとして、長年気になっていたメンカウラー王のピラミッドの東面に研究の目が向けられた。

メンカウラー王のピラミッドの東面を調べた

壁に刻まれたヒエログリフ

レーダー・超音波・電気抵抗の三段重ね

研究チームが東面に向けたのは、3種類の調査機器だった。

地面や壁の中を電波で探る地中レーダー(GPR)、振動の反射で内部を測る超音波、そして電気の流れにくさから空洞を見つける電気抵抗トモグラフィ(ERT)の3つだ。

論文によると、いちばん苦労したのは電気抵抗の測定だった。外装に使われたアスワン産の花崗岩は電気をとても通しにくく、電極をうまく当てられない。

そこでチームは、薄いステンレスの網でできた軽くて曲がる電極を使い、傾いたピラミッドの壁にも置けるようにした。

そこでチームが導入したのが「イメージ・フュージョン」と呼ばれる手法だ。3つの機械から集めたデータを1枚の画像に重ね合わせ、複数の検査結果が同時に「ここに何かある」と示した部分だけを抽出する。

単独の機械なら「たまたまそう見えただけ」という誤検出が起こりうるが、性質の違う3つの手法が同じ場所を指せば、そこに本当に空洞がある確からしさはぐっと高まる。

この重ね合わせこそが、今回の調査の精度を支える肝だった。

ちなみに、ScanPyramidsが得意とするもう一つの武器が、宇宙線を使った「ミュオグラフィ」だ。宇宙から絶えず地球に降りそそぐ素粒子ミューオンは、分厚い石の中もすり抜けていく。

ただし、通り抜ける物質が薄いほど多く通過するため、ピラミッドの裏側に検出器を並べておくと、空洞のある場所だけミューオンが多く届き、内部の空間が「影絵」のように浮かび上がる。

今回のメンカウラー王の調査では壁の表面付近が対象だったため主に3つの機器が使われたが、こうした複数の透視技術の蓄積が、ピラミッド研究を静かに前へ進めている。

キク

メンカウラー王のピラミッドの磨かれた東の壁を3種類の機械で調べたら、裏に何が見つかったんだろう?

深さ1.4メートルと1.13メートルに潜む2つの空洞

結果ははっきりしていた。磨かれた花崗岩の裏側に、空気で満たされた空洞があることを示す2つの異常が見つかったのだ。

1つは外壁から深さ約1.4メートルのところから始まり、大きさは約1.5メートル×1メートル。もう1つは深さ約1.13メートルからで、約0.9メートル×0.7メートルだった。

論文は、深さ1.13メートルの空洞は空気で満たされた単純な空洞である可能性が高いとする一方、深さ1.4メートルの空洞は、周りの花崗岩のブロックの影響もあって解釈がより複雑だとしている。

研究結果は学術誌『NDT & E International』(2025年・第155巻)に掲載され、論文にはザヒ・ハワス博士をはじめ、エジプトと欧米の研究者が名を連ねた。

幻の入口仮説に強い後押し

論文にも加わったTUMの非破壊検査の専門家、クリスティアン・グロッセ教授はコメントで「もう一つの入口があるという仮説は、非常にもっともらしい。今回の結果は、それを確認することへ大きく一歩近づけてくれた」と述べている。

断定ではなく、あくまで「仮説を強く後押しする証拠が得られた」という慎重な言い回しであることに注意したい。

それでも、空洞が本当に入口の一部なのか、儀式に使われた小さな部屋なのか、あるいは建設工事の途中で生まれた隙間なのかは、まだ分かっていない。

論文は、見つかった空洞をどう解釈するかはエジプト学者のあいだで議論されるべきだとしている。

そのうえで、赤外線サーモグラフィ、微小重力の測定、宇宙線ミューオンといった別の非破壊の方法でさらに調べることを勧めている。

キク

メンカウラー王のピラミッドの壁の奥で見つかった空洞が、入口なのか、小さな部屋なのか、工事でできた隙間なのかは、まだ分かっていないんだね。

参考文献:
Helal K, Grosse CU, Hawass Z, et al. Detection of two anomalies behind the Eastern face of the Menkaure Pyramid using a combination of non-destructive testing techniques. NDT & E International, 2025; 155:103331. DOI: 10.1016/j.ndteint.2025.103331
NDT & E International 原論文
Hidden voids found in Menkaure pyramid hint at secret entrance(ScienceDaily)

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この記事の編集者

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科学メディア「シルミー」の運営者。子供の頃から宇宙や生き物の図鑑を読みあさり、大人になった今も科学ニュースを追いかける日々。海外の学術メディアから面白い研究を見つけて、日本語でわかりやすく届けることをライフワークにしています。

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