前立腺がんの腫瘍組織を調べたところ、90%からマイクロプラスチックが検出された。しかも健康な組織と比べて2.5倍の量が蓄積していた。アメリカの研究チームが発表したこの結果は、西洋諸国で初めて前立腺がん組織内のプラスチック粒子を直接測定したものだ。
腫瘍に集中するプラスチック粒子

見つかったのは髪の毛の太さよりはるかに小さい微粒子。最も多かったのはペットボトルや食品容器に使われるポリエチレンテレフタラート(PET)。次いでポリカーボネート(CDやメガネのレンズ)、ポリスチレン(発泡スチロール)。日常的に使っている製品由来のプラスチックが、血液やリンパ液に乗って前立腺に到達していると考えられる。
90%という検出率は偶然では済まされない数字だ。ただし「プラスチックががんを引き起こした」のか「既にできた腫瘍にプラスチックが集まりやすい」のかは、まだ分かっていない。
体内にプラスチックが入り込む3つのルート

食事と飲料水が最大のルートだ。ペットボトルの水には1リットルあたり数百個のプラスチック粒子が含まれるという報告がある。食物連鎖を通じて魚介類にも蓄積し、特に貝類は蓄積量が多い。プラスチック容器を電子レンジで温めると、粒子が溶け出す可能性もある。
呼吸からも入る。合成繊維の服から舞う微細な繊維くず、室内のホコリ――その多くが合成繊維由来のマイクロプラスチックだ。密閉性の高い現代の住宅では濃度が高くなりがちだ。
体内に入った粒子のうち小さいものは腸の壁を通り抜けて血液中に入り込む。プラスチックは自然分解されないため、前立腺、肝臓、腎臓、肺に長期間留まり続ける可能性がある。
毎日使ってるものから知らないうちに体に入ってるんだ…
がんとの因果関係は未解明

相関関係と因果関係の壁
「腫瘍に多い」は相関関係であり因果関係ではない。プラスチックが細胞をがん化させたのか、腫瘍に血流の関係で集まりやすいだけなのか。次のステップは数千人規模の大規模疫学調査と、10〜20年の追跡研究だ。
添加物のホルモン撹乱作用
プラスチック粒子だけでなく、含まれるフタル酸エステルやビスフェノールA(BPA)にはホルモンの働きを乱す作用がある。前立腺がんは男性ホルモンの影響で成長するホルモン依存性のがんであり、プラスチック由来の化学物質が関与している可能性は否定できない。
大腸がんの腫瘍組織からも高濃度のマイクロプラスチックが報告されており、肺がんについても呼吸由来の粒子が慢性炎症を引き起こすリスクが指摘されている。
今からできること
完全にゼロにはできないが、摂取量を減らすことは可能だ。ペットボトルを控えてガラスや水筒を使う。温かいものはプラスチック容器を避ける。定期的な換気で室内のマイクロプラスチックを含むホコリを外に出す。
個人の努力だけでは限界がある。ヨーロッパでは使い捨てプラスチック食器の販売禁止が広がり、企業も生分解性素材への切り替えを進めている。因果関係が証明されるまでには時間がかかるが、予防原則の観点から今からできることを始める意味はある。
参考文献:
Microplastics found in 90% of prostate cancer tumors, study reveals
出典: ScienceDaily


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