この観測を行ったのは、米ペンシルベニア州立大学の研究チームです。
2026年にGeophysical Research Lettersで発表されたこの論文は、70年以上も仮説のままだった「コロナ放電」を自然のなかで初めて確認したものだ。
そもそもコロナ放電ってなに?

葉っぱの先端から飛び出るかすかな光
コロナ放電とは、とがった先端で起きる弱い放電のことで、可視光や紫外線(UV)でかすかに光る。
木の葉の先は、とがっているせいで電気が集まりやすい。一回の発光はコンマ数秒から数秒ほどで、人の目にはほぼ見えない。
70年以上、直接は確かめられていなかった
嵐のとき森のてっぺんでコロナ放電が起きているはずだ、という考えは70年以上前からあった。ところが、自然の中で直接確かめた人はいなかった。
論文の要旨は、木の上でコロナ放電が起きるという仮説は長くあったものの、直接の観測も、性質の測定も、定量化もされていなかったと述べている。
バンで嵐を追いかける
紫外線だけを拾う望遠鏡
チームは、紫外線カメラと大気の電気を測るセンサーをつないだ望遠鏡を作り、バンで嵐を追った。
この装置には「Corona Observing Telescope System」という名前がついた。
ニュートン式望遠鏡に紫外線カメラをつなぎ、位置の記録、大気の電気のセンサー、水銀ランプによる校正をひとつにまとめている。
ポイントは、このカメラが太陽の紫外線には反応せず、コロナ放電や雷、山火事といった特定の波長のUVだけを拾うように作られていることだ。
論文によれば、とらえたのは波長260ナノメートルの紫外線だった。
フロリダでは3週間ハズレ続けた
博士課程学生のパトリック・マクファーランド氏とウィリアム・ブルン教授は、雷雨の多いフロリダを調査地に選んだ。
ところが現地の嵐は短命で、すぐに消えてしまった。マクファーランド氏とブルン教授は3週間嵐を追ったが、使えるデータは得られなかった。
ノースカロライナで訪れた決定的な2時間
ペンシルベニアへ戻り始めたところで、州間高速道路95号線のすぐ西側に、大きくて長く続く嵐が発達した。
チームはノースカロライナ大学ペンブローク校の駐車場に機材を設置し、バンから約30メートル(100フィート)先のスイートガムの高い枝に望遠鏡を向けた。
雷雨は2時間近く続き、激しい雨と何度もの落雷をともなった。この間に、スイートガムの枝先で859回のコロナ放電が記録された。
嵐の勢いが弱まる頃、近くのテーダマツ(ロブロリーパイン)でも93回が記録された。
「半世紀以上にわたって、科学者たちはコロナが存在すると理論づけてきたが、これでそれが証明された」と、論文の筆頭著者のマクファーランド氏は話している。
ほかにフロリダからペンシルベニアまでの4回の雷雨、4種類の木でも同じような結果が得られた。
コロナ放電は波長260ナノメートルの光子を約10の11乗個放出し、これは約1マイクロアンペアの電流に相当すると、論文は見積もっている。
「肉眼ではほとんど見えませんが、私たちの機器を通すと、雷雨が頭上を通るあいだ、きらめくコロナが一面に広がる光景が見えてきます」と、マクファーランド氏は話している。

森が空気を掃除している可能性

なぜ葉の先端で光るのか
雷雲の底は大きなマイナスの電気を帯びている。すると地面の側にプラスの電気が誘い出され、木の幹を伝って上へ、上へと集まっていく。
葉先は細い毛のような小さな構造で、そこでは電場が強くなり、可視光とUVでかすかに光る放電が起きる。
観測では、嵐が真上にある間、狭い視野に入った枝のすべての葉のあいだを、放電が不規則に移り変わっていた。
キク葉先の放電で出た紫外線って、そのあと空気に何かするのかな?
UV光からヒドロキシルが生まれる
コロナ放電が出すUVは、空気中の水蒸気の分子を壊し、ヒドロキシルが生じる。
ヒドロキシルは大気の主要な酸化剤で、空気中の化学物質と反応して、取り除きやすい物質に変える。
反応する相手には、木が出す化合物や、人間が出す汚染物質が含まれ、強力な温室効果ガスのメタンもその1つだ。
チームは以前の実験で、木の枝に高電圧で低電流のパルスをかけ、コロナ放電のUVとヒドロキシルの発生が強く結びつくことを確かめている。
そこから、森の木々の樹冠で、ヒドロキシルの大きな供給源になりうると考えている。
まだ残っている大きな謎
一方、実験室でも野外でも、コロナが起きた葉には小さな傷みが見つかった。
放電が木にとって害なのか、得になることがあるのか、木がこれに耐えたり利用したりするよう適応しているのかは、まだわかっていない。
研究チームは、樹木生態学者や生物学者と共同研究を始めている。
調査は米国国立科学財団(NSF)の支援を受けた。
論文にはマクファーランド氏、ブルン教授のほか、ジェナ・ジェンキンス氏(助研究教授)、デイビッド・ミラー氏(元准研究教授で、現在はペンシルベニア州立大応用研究所)が名を連ねる。
もっとも、これで全部が解けたわけではない。森全体でコロナ放電がどれだけの量のヒドロキシルを生み、大気の掃除にどこまで効いているのか。
「森が空気を掃除している」という考えは、野外ではまだ確かめられていない。
今回の観測で測ったのは放電の回数と電流で、要旨と公式発表には、野外でヒドロキシルの量や大気の浄化への効果を測った結果は出てこない。
現時点では「その可能性が見えてきた」段階だと受け止めておきたい。



放電は見えたけど、森が空気を掃除してるっていうのは、まだ可能性の段階なんだね。
参考文献:
McFarland PJ, Brune WH, Miller DO, Jenkins JM. Corona Discharges Glow on Trees Under Thunderstorms. Geophysical Research Letters, 2026; 53(4). DOI: 10.1029/2025GL119591
Geophysical Research Letters 原論文
Scientists just captured trees glowing with electricity during storms(ScienceDaily)









