WOH G64は、大マゼラン雲にある赤色超巨星だ。半径は太陽の約1540倍と見積もられてきた。
2013年半ばから2014年半ばの約1年のあいだに、この星の色が大きく青い側へ変わったと、天文学者たちが報告した。
この観測結果は、アテネ国立天文台などの国際チームが30年ぶんの記録を解析してまとめたもので、2024年に論文の原稿が公開され、2026年2月に学術誌『Nature Astronomy』に掲載された。
星の一生は、ふつう何百万年といった、気の遠くなるほど長い時間をかけて進みます。
キクたった1年で色が変わったWOH G64って、地球からどれくらい遠くにある星なんだろう?
まず、WOH G64とはどんな星か
WOH G64があるのは、天の川銀河のとなりにある小さな銀河、大マゼラン雲。地球からおよそ16万光年という、途方もない距離にある。
1980年代から、WOH G64は大マゼラン雲で最も極端な赤色超巨星とされてきた。塵による減光の大きさ、大きさ、明るさ、質量放出率が際立っていたためだ。
以前の見積もりでは、半径は太陽の約1540倍で、赤色超巨星の中でも最も大きい部類だった。
生まれたときの質量は太陽の25〜28倍と見積もられてきた。今回の解析では、28倍の進化経路に近いとされた。明るさは光度の対数で5.45、つまり太陽のおよそ28万倍とされる。
1年で「赤」から「黄」へ変わった


天文学者たちは、この星を30年にわたって見張ってきた。
変化の前、WOH G64は約850日の周期で明るさが変わる変光星(ミラ型)と分類されていた。ただし論文は、この変光の主な原因は星自体の脈動ではなく、星を取り巻く塵による減光の変化とみている。
2011年には大きく暗くなる出来事もあった。
地道に集めた明るさの記録を解析すると、2013年から2014年にかけての約1年間で、星がそれまでとまるで違う振る舞いを見せ始めたことが分かった。
この1年の変化は、V帯(可視光)の急な増光によるものだった。一方、赤い光のI帯はほぼ一定で、色(V−I)は約1.8等級、青い側に動いた。
ここで多くの人が誤解しがちなのだが、赤から黄色への変化は「冷えた」のではなく「熱くなった」ことを意味する。
星の色は表面温度で決まり、赤いほど低温、黄・白・青と高温になる。論文は、表面温度が1000K(ケルビン)以上上がったと考えると、観測された明るさと色の変化を説明できるとしている。
分光観測では、星の型が後期M型の赤色超巨星から、後期G型か初期K型の黄色ハイパージャイアントに変わったことが示された。
論文は、新しい解析で現在の半径を約800倍と見積もっている。以前の約1540倍の約半分だ。
ただし、こうした値は確定値ではなく目安であり、塵に深く覆われた星の光度を正確に決めるのは難しい、と論文は断っている。


黄色ハイパージャイアントになったという結論
論文は、WOH G64が赤色超巨星から黄色ハイパージャイアントに移ったと結論している。
赤色超巨星は、多くがII型超新星爆発で一生を終える前の最終段階とされ、黄色ハイパージャイアントは、赤色超巨星が外層を失ったあとの段階として議論されてきた。
ただし論文は、この星の将来は予測できないと明言している。軌道などの物理量がよく分かっておらず、単独の星としての物理と連星の相互作用のどちらが進化を動かしているかも分からないためだ。



赤い巨大な星WOH G64が、もっと熱い黄色の巨大な星に変わったとしても、この先どうなるかはまだ予測できないんだね。
変化の理由と、その後
WOH G64の変化は、急ではあったが、なめらかなものだった。
研究チームは、WOH G64が、高温の星が寄り添う珍しい「共生連星」だと結論している。
共生連星は、冷たい巨星と高温の星が互いに影響し合う連星だ。論文は、大マゼラン雲と小マゼラン雲の赤色超巨星の約2割に高温の伴星があるとしている。
論文は変化の理由として2つの可能性を挙げている。
伴星と外層を共有する段階で外側の大気の一部が吹き飛ばされたか、30年を超える大きな噴出が終わって落ち着いた状態に戻ったか、だ。
さらに論文の最新版によれば、2025年の観測で、WOH G64は2016〜2021年に見られたB[e]型の特徴ではなく、赤色超巨星と矛盾しない光学的特徴を示していた。
2025年には10か月で2等級暗くなり、観測されたなかで最も暗いI帯の状態にもなった。単独の星の物理で説明するなら、濃い星風が戻り、新たな噴出が始まったと考えられる。
この解釈には異論もある。英国キール大学のジャコ・ファン・ローン博士らは、2024年11月から2025年12月に南アフリカ大型望遠鏡(SALT)で得た光学スペクトルを調べた。
博士は「SALTで得た新しいスペクトルには、高温の伴星の存在に加えて、酸化チタンの明確な分子吸収帯が見える。これは、WOH G64が現在は赤色超巨星であり、赤色超巨星でなくなったことは一度もないのかもしれないことを意味する」と話している。
両チームとも、WOH G64に伴星があるとみている点は共通している。報道によれば、黄色ハイパージャイアントほど高温の星は酸化チタンを保てない。
論文の著者は、WOH G64を、巨大な星の最終段階と連星の役割を実時間で調べられる機会と位置づけている。
連星の黄色ハイパージャイアント HR 5171A
HR 5171Aは、天の川銀河にある黄色ハイパージャイアントだ。2014年の論文は、距離を約3.6キロパーセク(約1万2000光年)と見積もっている。
干渉計による観測から、半径は太陽の約1300倍(誤差は±260倍)と求められ、黄色ハイパージャイアントとしては驚くほど大きいと論文は述べている。
この論文は、主星の手前に新しく見つかった伴星が、約1304日の周期で回る接触(または過接触)食連星だと結論した。
二つの星が外層を共有する共通外層段階の連星で、黄色ハイパージャイアントの理解には連星の役割が重要かもしれない、と論文はまとめている。
巨大な星は中心で重い元素を作る


大質量星は、中心で核融合を進めて、より重い元素を作っていく。NASAの解説によれば、質量が太陽の5倍以上の星では、ヘリウムから炭素ができ、さらに酸素などを経て、最後には鉄ができる。
鉄の芯ができると、中心が崩れ始める
鉄は最もコンパクトで安定した元素で、鉄の原子核を壊すのにも、鉄を融合してより重い元素を作るのにも、エネルギーが要る。
つまり、核が鉄になると、星を支えるエネルギーは中心から出てこない。
中心からエネルギーが出なくなると、1秒足らずで、星は最後の重力崩壊に入る。核の温度は1000億度を超え、核が跳ね返って衝撃波になる。
これが超新星爆発として見える。
鉄より重い元素の多くは、超新星爆発のような不安定な条件でできる。爆発した物質は宇宙空間に押し出され、超新星残骸になる。
参考文献
Muñoz-Sanchez G, et al. 『The dramatic transition of the extreme red supergiant WOH G64 to a yellow hypergiant』 Nature Astronomy, 2026. DOI: 10.1038/s41550-026-02789-7 / arXiv:2411.19329
Chesneau O, et al. 『The yellow hypergiant HR 5171 A』 Astronomy & Astrophysics 563, A71, 2014. DOI: 10.1051/0004-6361/201322421 / arXiv:1401.2628
Keele University (2026-01): Keele-led team reveals massive star WOH G64 is still a red supergiant
ScienceAlert (2026-02): Changes to One of The Largest Known Stars May Signal Destruction
NASA Imagine the Universe: The Life Cycles of Stars









