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地球最古の動物はカイメンだった!? 5億年前の岩から見つかった化学の指紋

2026 4/18
歴史・考古学
2026年3月1日2026年4月18日
🕑この記事は約6分で読めます

カイメンと聞いてもピンとこない人が多いかもしれない。海底にじっとくっついている、まるで植物のような生き物だ。だが、れっきとした動物である。MITの科学者たちは、5億4100万年以上前の岩石の中から、このカイメンが作り出す特殊な化学物質の「指紋」を発見した。

目次

岩の中に残された化学の指紋

古代のカイメンの化石イメージ
Photo by Joseph Corl on Unsplash

ステロイドが語る太古の生命

研究チームが注目したのは、26-メチルスチグマスタンという舌を噛みそうな名前の化学物質だ。これは現代の普通海綿類(demosponge)が作り出すステロイドの一種で、他の生物はほぼ作らない。つまり、この物質が岩の中にあれば、そこに昔カイメンがいた証拠になる。

ただし、問題があった。この化学物質、実は藻類の一部も作り出すことがあるのだ。そこでMITチームは徹底的に調べ上げた。現代のカイメンを採取し、実験室で藻類も育て、それぞれが作る化学物質のパターンを細かく分析した。

生きた海綿と実験室での検証

研究チームは世界中の海から数十種類の現代カイメンを集めた。それぞれの体内にどんな化学物質が含まれているかを最新の機器で測定する。すると、普通海綿類だけが特定のパターンで26-メチルスチグマスタンを作ることが分かった。

シルミー

カイメンって地味だけど、すごく大事な生き物だったんだね

さらに念を入れて、藻類も何種類も培養して同じ検査をした。藻類が作る化学物質のパターンは、カイメンとは明らかに違っていた。これで「岩の中の化学物質=カイメンの証拠」という図式が完成した。

5億年前の岩石が証言する

準備が整ったところで、いよいよ古代の岩石の出番だ。研究チームが調べたのは、エディアカラ紀と呼ばれる時代の地層から採取された岩石。今から5億4100万年以上も前、恐竜どころか魚すらまだ存在しなかった時代だ。

分析装置にかけると、岩石の中から見事に26-メチルスチグマスタンが検出された。しかもその化学的なパターンは、現代のカイメンが作るものとぴったり一致していた。これは偶然ではない。太古の海に、確かにカイメンが生きていた証拠だ。

なぜカイメンが最古の動物候補なのか

海底に生息する現代のカイメン

Photo by Feri & Tasos on Unsplash

動物の定義とカイメンの特殊性

そもそも何をもって「動物」と呼ぶのか。植物は光合成で自分で栄養を作るが、動物は他の生物を食べなければ生きられない。カイメンは海水中の微生物やプランクトンを濾し取って食べる。体には無数の小さな穴があり、水を吸い込んでは吐き出す。まるで生きたフィルターだ。

さらにカイメンの体は、多細胞動物の基本設計を備えている。異なる種類の細胞が協力して一つの体を作る。これは単細胞生物にはできない芸当だ。動物の進化の出発点として、カイメンは理にかなった候補なのだ。

化石に残らない生き物の痕跡を追う

カイメンには硬い骨も殻もない。だからほとんど化石にならない。通常、古代の生物を調べるには化石を探すのだが、カイメンの場合はそれが使えない。そこで科学者たちが頼るのがバイオマーカーと呼ばれる化学物質の痕跡だ。

生物が死んでも、その体を構成していた化学物質の一部は岩石の中に閉じ込められる。何億年も経つと形は変わるが、基本的な構造は残る。今回MITチームが見つけた26-メチルスチグマスタンは、まさにそうした「化学の化石」だった。

他の候補生物との比較

実は地球最古の動物候補はカイメン以外にもいる。クラゲの仲間や扁形動物なども、古くから存在した可能性が指摘されてきた。ただし、これらの生物も化石にはなりにくい。

今回の発見が重要なのは、カイメン特有の化学物質という「動かぬ証拠」を示した点だ。他の候補生物についても、今後同じような化学分析が進めば、どれが本当に最古なのかがはっきりするかもしれない。

この発見が示す生命進化の物語

化学物質の分析をする研究室

Photo by New Material on Unsplash

カンブリア爆発の前夜

5億4100万年前といえば、生物学でいうカンブリア爆発の直前にあたる。カンブリア爆発とは、突如として多種多様な動物が化石記録に現れる現象だ。三葉虫やアノマロカリスといった奇妙な生き物たちが、まるで爆発したように誕生した。

だが今回の発見は、その爆発の前からすでに動物がいたことを示している。カイメンという地味な生き物が、静かに海底で暮らしていた。そしてその子孫たちが進化して、やがて多様な動物の世界が開かれた。

酸素濃度と動物の出現

なぜこの時期に動物が登場したのか。一つの仮説は、海中の酸素濃度が関係しているというものだ。動物は呼吸で大量の酸素を必要とする。古代の地球は酸素が少なく、動物が生きるには厳しい環境だった。

だが6億年ほど前から、光合成をする生物が増えて酸素が徐々に増えていった。ある閾値を超えたとき、カイメンのような初期の動物が生き延びられる環境が整った。化学物質の痕跡は、そんな地球環境の変化の記録でもある。

今後の研究への期待

MITチームの手法は、他の時代や場所の岩石にも応用できる。もっと古い岩石から同じ化学物質が見つかれば、動物の起源はさらに遡ることになる。逆に、どの岩石からも見つからなくなる時代を特定できれば、動物がいつ誕生したのか、より正確に絞り込める。

また、カイメン以外の古代生物についても、特有の化学物質を探す研究が進むだろう。生命の歴史は化石だけでなく、目に見えない分子の世界にも刻まれている。

地球最古の動物がカイメンだったかどうか、まだ完全に確定したわけではない。だが少なくとも、5億年以上前の海にカイメンがいたことは間違いなさそうだ。その小さな体が、やがて私たち人間を含む全ての動物へとつながる進化の糸口だったのかもしれない。

参考文献:
MIT study finds Earth’s first animals were likely ancient sea sponges
出典: ScienceDaily

アイキャッチ画像: Photo by Shelter on Unsplash

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この記事を書いた人

シルミー編集者のアバター シルミー編集者

科学メディア「シルミー」の運営者。子供の頃から宇宙や生き物の図鑑を読みあさり、大人になった今も科学ニュースを追いかける日々。海外の学術メディアから面白い研究を見つけて、日本語でわかりやすく届けることをライフワークにしています。

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