規則的なサウナ入浴は、これまでの研究で高血圧や心臓突然死、肺炎などの病気の少なさと関連づけられてきたが、その仕組みはよくわかっていない。
東フィンランド大学とトゥルク大学などの研究チームは、成人51人に30分のフィンランド式サウナに1回入ってもらい、その前後で血液を調べた。
参加者は、症状はないが心血管の危険因子を1つ以上持つ中年の男女だ。サウナの直後には血液中の白血球が増え、好中球とリンパ球は30分後にはサウナ前の水準に戻っていた。
対照群を置かずに、1回の入浴の前後を比べた実験で、続けたときの健康への効果は調べていない。論文は2026年に学術誌『Temperature』に載った。
キクサウナに1回入るだけで、血液の中の白血球ってどれくらい変わるんだろう?
30分入るだけで血中の白血球が一斉に動いた


採血は3回で、サウナの約2時間前、終了直後、終了30分後に行った。入浴中には採っていない。
白血球は、好中球、リンパ球、そして単球・好酸球・好塩基球をまとめた「MXD細胞」の3つの区分で数えた。男女を合わせてみると、終了直後にはこの3区分がどれも有意に増えていた。
総白血球数は、男性で1リットルあたり61億個から67億個に、女性で62億個から67億個に増えた。
ただし、白血球の中の種類ごとの割合は、サウナの前後で変わらなかった。論文は、特定の種類だけが増えたのではなく、白血球全体が増える反応だったとみている。
男女別にみると、男性の好中球は有意に変わらなかった(1リットルあたり38億個から39億個)。
終了から30分後には、好中球とリンパ球はサウナ前の水準に戻っていた。一方、MXD細胞は30分後も高いままで、女性では総白血球数もまだやや高かった(1リットルあたり65億個)。
フィンランド式サウナで51人を測った実験の中身


参加者は、フィンランド中部のユヴァスキュラ市で地域の保健センターを通じて集めた女性27人・男性24人で、平均年齢はどちらも50歳だ。
症状はないが、喫煙歴、脂質異常、高血圧、肥満、糖尿病、冠動脈疾患の家族歴といった心血管の危険因子を1つ以上持つ人が対象で、心血管の病気がある人は除いた。
実験の前には心臓の専門医が診察した。
サウナは乾いた空気のフィンランド式で、30分のうち最初の15分のあとに2分間のシャワーを挟んだ。大学の発表によると、このシャワーは冷水だった。
室温の設定は80℃で、実際の平均は73℃、湿度は10〜20%だった。1人ずつ入り、医師が見守った。参加者はサウナ中とその後30分の休憩中に、水を500ml飲んだ。
耳で測った体温は、平均36.4℃から38.4℃に上がった。ふだんのサウナの習慣で3つの群に分けても、反応に差はなかった。
論文の筆頭著者で連絡先の著者は、トゥルク大学のアカデミー研究員Ilkka Heinonen氏。東フィンランド大学で研究を率いたのは、循環器内科医のJari Laukkanen教授だ。
著者は7人で、掲載誌は体温調節の医学・生理学を扱う『Temperature』の13巻2号、DOIは10.1080/23328940.2026.2645467。
研究グループはこれまでの住民調査で、規則的なサウナ入浴が全身の炎症の指標であるCRPの低さと関連することを報告しており、今回はサウナの健康効果の仕組みを探ることが目的だった。
なぜ白血球は「湧いて出た」ように見えるのか
サウナのあとに増えた白血球は、どこから来たのか。
Heinonen氏は「これは、サウナ入浴によって白血球が組織から血液中へ余分に送り出され、入浴後にまた組織へ戻ることを示しているのかもしれない。こうして白血球が周期的に血液中に出ることは体にとって有益だ。いったん貯蔵場所を出ると、体の中を見回り、病原体に対応しやすくなるからだ」と述べている。
汗をかいて血液が濃くなれば、それだけで白血球の濃度は上がって見える。そこで研究チームは、一人ひとりの血漿量の変化で数値を補正した。
水を飲めたこともあり血漿量は平均では変わらなかったが、ヘモグロビンとヘマトクリットは上がっていて、多少は血漿が減っていたとみられる。
補正したうえでも白血球は増えていたので、論文は血液が濃くなっただけではなく、白血球が実際に血液中に動員された反応だと結論している。
ただし、どの組織から出てきたのかはわかっていない。
運動でも同じ「動員」が起きる
大学の発表によると、白血球が血液中に出てくる現象は運動中にも起きる。発表はこれを、体全体で白血球による見回りを強め、免疫の守りを高めるしくみだと説明している。
ただし今回の研究は、サウナと運動を比べたものではない。
サイトカインは白血球ほど跳ねなかった
サイトカインは、免疫の働きを調整する信号の役目をする物質だ。
研究チームは37種類のサイトカインを測ったが、サウナで有意に変わったのはsCD30とペントラキシン3の2種類だけで、どちらも下がった。
MMP-2は上がる傾向があった(p=0.052)。
一方で、体温の上がり方とサイトカインの変化のあいだには、18の有意な相関があり、とくにサウナ直後に多かった。
IFN-γやIL-2、IL-8など16項目は体温が大きく上がった人ほど増える方向に、キチナーゼ3様タンパク質1とgp130の2項目は逆の方向に動いていた。
白血球の変化と体温の変化のあいだには、こうした関連はなかった。
Laukkanen教授は「興味深いことに、いくつかのサイトカインの濃度は、サウナ入浴中に体温がどれだけ上がったかに応じて変化していた。白血球数と体温の変化のあいだには、同じような関連は見られなかった」と述べている。
論文のタイトルは「フィンランド式サウナの熱は、サイトカインより強い免疫細胞の反応を起こす」というものだ。
ただし論文は、サイトカインの変化が体にとって最終的に何を意味するのかは、この結果からはわからないとしている。また、耳で測った体温が体の深部の温度を表すとは言えないとも断っている。
一時的な増加は何を意味するか
論文によると、安静時に白血球の数が多いのは、ふつう全身の炎症や健康状態の悪さのしるしだ。
一方、サウナのような刺激に対する一時的な増加は、免疫による見回りが強まったことを反映している可能性が高いと、論文は考察している。
今回測ったのはサウナ1回への急な反応で、ふだんの安静時の状態を表すものではない。
ただし、これは白血球の数の変化から考えた仕組みで、感染症にかかりにくくなる、治りが早くなるといった効果を確かめたわけではない。
白血球がどの組織から出てどこへ戻ったのか、サイトカインがどの細胞に働いたのかもわかっていないと、論文自身が書いている。
1回の反応と、続けたときの健康は別の話
今回の実験は、サウナに1回入った直後の反応を見たものだ。大学の発表も、研究は1回のサウナとその直後の影響に限られるので、長い目で見た健康への効果について確かな結論は出せないとしている。
規則的なサウナ入浴と病気の少なさの関連はこれまでも報告されてきたが、今回の結果は、その仕組みの一部を考える手がかりにとどまる。
実験は51人で、サウナに入らない対照群は置いていない。
論文は限界として、単球・好酸球・好塩基球を分けて数えていないこと、T細胞の種類やNK細胞などは調べていないこと、水を飲まずに血漿が大きく減った場合にどうなるかはわからないことを挙げている。
冷水浴と組み合わせたときに反応がどう変わるかも、今後の課題だとしている。



サウナ1回で白血球が増えるのは分かったけど、病気にかかりにくくなるかや、続けたときの効果はまだ分かってないんだね。
参考文献:
一次ソース: Heinonen IHA, Koivula T, Hollmén M, Immonen J, Kunutsor SK, Jalkanen S, Laukkanen JA. Acute Finnish sauna heat exposure induces stronger immune cell than cytokine responses. Temperature, 2026;13(2):186. DOI:10.1080/23328940.2026.2645467
論文本文(オープンアクセス): Europe PMC PMC13251515
研究機関の発表: University of Eastern Finland「Sauna bathing may boost immune responses」
研究機関: 東フィンランド大学/トゥルク大学 / 二次ソース: ScienceDaily









