キク電線にとまってる鳥って、どうしてしびれないんだろう?
町の電線には、ハトやスズメがずらりと並んでとまっています。電線には電気が流れているはずです。それなのに、鳥たちは平気な顔をしています。
先に答えを言います。両足が同じ1本の電線にのっていて、足と足の間に電圧の差がないからです。電気がひと回りする道ができないので、鳥の体には電気がほとんど流れません。
ここからは、物理の解説サイト「HyperPhysics」をもとに見ていきます。イリノイ大学の物理のQ&A「Physics Van」も使います。鳥が感電する場合については、アメリカ地質調査所(USGS)などの資料も使います。
両足が同じ電線の上にある


HyperPhysicsは、電圧のしくみが分かる例として、電線の鳥をあげています。鳥が高い電圧の電線にとまっても平気なのは、両足が同じ電圧のところにあるからです。
もうひとつ大事な点があります。電線の鳥は、地面とつながっていません。高い電圧にふれても、電気が地面や別の電圧の所へ流れていく道がなければ、感電しないのです。
Physics Vanの回答も、同じことを言っています。鳥に害が出るほど電気が流れるには、電気がひと回りできる道が要ります。この道を回路といいます。
電線にカバーがあるからではない
「電線はカバーで包まれているから平気なんだろう」と思う人もいるかもしれません。じつは、鳥が平気な理由はカバーではありません。
Physics Vanも、はじめは電線のカバーを理由のひとつにあげていました。ところが、この答えはまちがいだったと、あとで自分で直しています。
直すきっかけは、電力会社で働いていた電気の技術者からの指摘でした。その人によると、電柱の電線は、まわりをカバーで包んだ線ではありません。包むと、電気をたくさん流したときに熱くなりすぎてしまうからです。
空中の電線はふつう、はがねの芯のまわりに、アルミの線をより合わせたものです。古い電線には、銅の線もまだ残っています。
電気を止めているのは「がいし」
では、電気が電柱へもれないのはなぜでしょうか。電線を電柱や鉄塔からはなして支える、焼き物のがいしが、その役をしています。
鉄塔の送電線では、最大で50万ボルトの電気を止めるために、長いがいしを使うことがあります。その長さは、3〜12フィートになることもあります。およそ0.9〜3.7メートルです。
つまり、鳥の足もとの電線は、むき出しのままのことが多いわけです。カバーがなくても、鳥がほかの電線にふれなければ、電気は鳥の体を流れません。



カバーのせいじゃないなら、感電するかどうかは何で決まるのかな?
感電の強さを決めるのは電流
HyperPhysicsによると、感電がどれだけひどいかを決めるいちばんのものは、体を流れる電流です。
その電流は、電圧と、体の中を通る道の抵抗(電気の流れにくさ)で決まります。
HyperPhysicsには、人の体に1秒間電気が流れたときの目安の表があります。1ミリアンペアで、ぴりぴりと感じ始めます。100〜300ミリアンペアになると心室細動が起き、続けば命にかかわります。
同じ電圧でも、ある条件ではぴりっとするだけなのに、別の条件では命にかかわることもあります。電気の安全の条件を決めるのがむずかしい理由のひとつは、ここにあるとHyperPhysicsは書いています。
電線の鳥にあてはめると、どうなるでしょうか。電線の電圧が高くても、体を流れる電流が小さければ、ひどい感電にはならないわけです。
足の間を流れる電流は、ほんのわずか
ここで、こんな疑問がわくかもしれません。電流は流れやすい道を通るはずです。それなら、鳥の体のほうが流れやすいのではないでしょうか。
Physics Vanの答えはこうです。抵抗がとても小さいのは、鳥ではなく電線のほうです。電流はそのまま電線を流れ続け、鳥の体へ回り道する電流は、ほとんどありません。
ただし、まったくのゼロではありません。電線の抵抗もゼロではないので、両足の間でも、ほんの少しの電流は鳥の体へ回り道します。読者からのこの指摘を、回答者も認めています。
交流でためたり放したりする電流
電線の電気は、直流ではなく交流です。そのため鳥の体は、1秒に60回も電気をためたり放したりします。ヨーロッパの電線では、1秒に50回です。
回答者は、鳥を直径20センチの球とみなして、この電流を大まかに見積もりました。電線が10万ボルトなら、約400マイクロアンペアになると考えられるそうです。0.4ミリアンペアにあたる量ですが、測って確かめられていない計算の値です。
くらべると、人では交流でおよそ10ミリアンペアから危なくなり始めます。回答者は、高い電圧の電線でもこの電流はたぶん問題にならないと考えられる、と見ています。



電気はほとんど電線のほうを走っていて、鳥の体にはちょっとしか回ってこないってことなんだね!
2本の電線にまたがると感電する


では、鳥はいつでも安全なのでしょうか。そうではありません。Physics Vanによると、大きな猛禽類では、感電はかなりよくある問題です。たとえば、アカオノスリやハクトウワシです。
大きな鳥は、2本の別々の電線に、片足ずつのれるほど体が大きいのです。2本の電線の電圧がちがうと、鳥の体の両はしに電圧の差ができます。すると、感電して死ぬことがあります。
飛び立つときにも、あぶない場面があります。タカやフクロウなどの大きな鳥は、よく電柱のてっぺんにとまります。飛び立つときに翼の先が2本の電線にふれると、命にかかわることがあります。
体が「橋」になる
USGSの野生動物の病気の手引きは、鳥の体を「橋」にたとえています。翼や足が、電気の来ている2か所の間に橋をかけると、その橋を電気が流れます。電気の来ている所と、地面につながった金属の間でも同じです。
羽毛は電気を通しにくいものです。けれど皮ふや爪やくちばしでふれたり、羽がぬれていたりすると、電気が通ることがあります。よくある通り道は、左右の翼の手首どうしの間や、片方の翼と足の間です。
そのショックで、心臓や血管がひどく傷つき、たいていは死んでしまいます。
Physics Vanには、ロサンゼルスの近くで起きた山火事の話も出てきます。電線に当たって燃えたアカオノスリが落ちて、かれ草に火がついた可能性があるという話です。回答者は、タカが電気の通る所2か所にふれたのだろうと考えていますが、まだ確かめられていない推測です。
同じ電線の仲間となら平気
同じ電線にとまった鳥どうしなら、くっついても平気です。回路がつながらないからです。ところが、もう1本の別の電線にいる鳥とくっつくと、感電してしまいます。
木の枝も同じです。1本の電線にふれるだけなら何も起きません。でも2本にまたがると、電気の近道ができてしまいます。電線がとけて切れることさえあるそうです。
電気で虫を退治する電撃殺虫器も、このしくみを使っています。カバーのない金網が2枚、すぐ近くに並んでいます。虫が電圧のちがう2枚に同時にふれると、電気が流れて焼けるのです。
電圧の低い電線のほうが、鳥にはあぶない
USGSの手引きによると、多くの鳥は電柱を止まり木にします。とくに猛禽類がそうです。ときには、電柱に巣をつくることもあります。
鳥がいちばんよく感電する所は、決まっています。その電柱によく来る鳥の翼を広げた長さより、電線どうしの間かくがせまい所です。
ここで、意外なことがあります。配電線は、高い電圧の送電線より、電線どうしが近くにあります。そのため、電圧は低いのに、鳥は配電線のほうでよく感電するのです。
電柱には1〜3本の電線のほかに、ほかの物がついていることもあります。アース線や変圧器、地面につながった金属の支えです。止まりやすい所の近くに、電気の来ている部分と、地面につながった金属がいくつも並ぶことがあります。これが、いちばんあぶないつくりです。
鳥を守る電柱のつくり
アメリカ魚類野生生物局は、ワシと電線についての決まりを出しています。その中に、鳥に安全な電柱のつくりが書かれています。電線どうしや、電線と地面につながった部分の間を、広くあけたつくりです。
どのくらいあけるかは、鳥の体の大きさで決まります。左右の翼の手首の間や、頭から足までの長さより広くします。ワシの場合は、横に150センチ、たてに100センチです。
十分な間をあけられないときは、電気を通すむき出しの部分を、カバーでおおわなければなりません。
電線のスズメが平気なのも、ワシが感電するのも、もとは同じしくみです。体の2か所に電圧の差ができるかどうかで、同じ電線の上がまったくちがう場所になります。小さな鳥は1本の線だけにふれていられても、翼の大きな鳥は、別の線にもとどいてしまうことがあるわけです。
参考文献:
主な資料: HyperPhysics(R. Nave), Electric Shock
主な資料: University of Illinois Urbana-Champaign, Department of Physics(イリノイ大学 物理学科)Physics Van, Birds on High Voltage Lines
基礎知識: N. Thomas, U.S. Geological Survey(アメリカ地質調査所), Electrocution(Field Manual of Wildlife Diseases, 1999)
基礎知識: U.S. Fish and Wildlife Service(アメリカ魚類野生生物局), General Permit Conditions – Incidental Take of Eagles by Power Lines(2024)
アイキャッチ画像: Photo: Gary Olul / Unsplash










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