MENU
  • テクノロジー
  • 人体・医学
  • 宇宙・天文
  • 歴史・考古学
  • 生き物・自然
  • 検索 🔍
Shirmee/シルミー
知りたいを満たす
  • テクノロジー
  • 人体・医学
  • 宇宙・天文
  • 歴史・考古学
  • 生き物・自然
  • 検索 🔍
Shirmee/シルミー
  • テクノロジー
  • 人体・医学
  • 宇宙・天文
  • 歴史・考古学
  • 生き物・自然
  • 検索 🔍
  1. ホーム
  2. テクノロジー
  3. ALSで失った声が脳の256電極で復活! 12.5万語を99%の精度で話す

ALSで失った声が脳の256電極で復活! 12.5万語を99%の精度で話す

2026 6/16
テクノロジー
2026年6月16日
🕑この記事は約8分で読めます
シルミー

はかせ、口を動かせない人でも、考えただけで話せる機械があるって本当?

はかせ

本当ですよ。ALSで全身が麻痺したケイシー・ハレルさんは、脳に256本の電極を埋めて、もう3,800時間以上もそれでしゃべっているんです

カリフォルニア大学デービス校のチームが2026年6月15日、Nature Medicine誌に世界初の「BCIパワーユーザー」の3年間を報告した。脳に電極を入れた45歳の男性が、自宅で12.5万語の語彙を99%の精度で操っている話だ。

目次

2023年夏、45歳の男性が下した決断

脳の構造を映し出すMRI画像

ALSで奪われた「話す」という当たり前

ケイシー・ハレルさんは環境活動家として働いていた。だが2023年、45歳だった彼の体は筋萎縮性側索硬化症(ALS)によって動かなくなりつつあった。

ALSは脳から筋肉への指令を運ぶ神経細胞が壊れていく病気だ。手足だけでなく、口や舌、声を出すための喉の筋肉まで失われていく。ハレルさんは車椅子の操作も食事も誰かに頼るしかなく、声を絞り出しても周囲は何と言っているのか聞き取れなくなっていた。

そんなとき、UCデービスの神経外科准教授デビッド・ブランドマン氏たちが声をかけてきた。脳に電極を入れて、もう一度話せるようにする臨床試験に参加してみないか、という打診だった。当時のハレルさんの状態を考えれば、決して軽い決断ではない。頭蓋骨に穴を開け、生涯にわたって異物を脳に置き続けることになる。

「業界は今、大きく変わろうとしている。その中に自分も入りたいと思った」とハレルさんは振り返る。当時、脳に直接機械をつなぐブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)は研究室の外でほとんど動いた例がなかった。実験室で短時間動くだけのデモを、家のリビングで毎日使える道具に変えられるのか。その最初の答えになることをハレルさんは選んだ。

5時間の手術で埋め込まれた256本の電極

2023年7月、ハレルさんは5時間に及ぶ手術を受けた。ブランドマン氏たちが彼の脳の「発話運動野」と呼ばれる場所に、64本の電極を持つ配列を4枚、合計256本挿し込んだ。

発話運動野は、唇や舌、喉をどう動かすかを指示している脳の領域だ。実際の口は動かなくても、「話そう」と思った瞬間に発火するニューロンの信号はここに残る。研究チームはその信号を拾うことに賭けた。

4枚の配列はそれぞれ2枚ずつまとめられ、頭の外側に出した「ペデスタル」と呼ばれるコネクターにつながった。シャンプーハットのようにケーブルを着脱できるこの構造が、後にハレルさんの自宅利用を支えることになる。配列1枚は数ミリ四方しかなく、毛のように細い電極が剣山のように刺さっている。1本1本がニューロン数個分の活動を拾える解像度を持つ。

脳の信号を言葉に変える「39音素」の地図

脳内のニューロンが発火する様子

音の最小単位を一つずつ読み解く

声を取り戻すには、脳の活動をリアルタイムで文字に変換しなければならない。UCデービスの神経工学者ニコラス・カード氏たちが選んだのは、英単語を「音素」に分解するという回り道だった。

「アメリカ英語の音はすべて39個の音素でできている」とカード氏は説明する。たとえば「cat」は /k/・/æ/・/t/ の3音素。脳が「k」と発音しようとしたときに発火する細胞のパターンさえ覚えれば、あとはレゴブロックのように単語を組み立てられる。

「まず脳のデータから音素を出し、そこから単語にする。二段階に分けたから精度が伸びた」とカード氏は語る。これまでの研究は「単語ごと」に脳信号を覚えさせていたため語彙が限られていたが、音素単位なら原理上あらゆる言葉が話せる。新しい単語が出てきても、辞書を更新するだけで対応できる仕組みだ。

音素を文字や単語に組み直す部分には、文章の前後関係から「次に来るのはどの単語か」を予測する言語モデルが組み合わされている。スマートフォンの予測変換のように、脳から拾った曖昧な音素列を最もそれらしい英文へ整えてくれる。

初日に50語、3年で12万5,000語へ

手術から約1か月後、ハレルさんは初めて装置に接続された。その日のうちに50語の語彙でしゃべることができ、しかも認識精度は99.6%に達した。たった数時間のチューニングでこの数字が出るとは、開発者たちも予想していなかった。

その後3年間でチームはアルゴリズムを磨き続け、語彙は12万5,000語まで拡大。当初97.5%だった精度はいま99%に到達している。ハレルさんが頭に浮かべた単語のうち、100語に1語しか取りこぼさない計算だ。

もう一つの不安は瘢痕組織だった。脳に電極を埋めると、異物として周囲に傷跡のような細胞が積もり、信号が拾えなくなる例がある。だがハレルさんの脳では、3年経っても電極の感度はほとんど落ちていない。なぜ彼の脳だけが電極を「受け入れ続けている」のかは、まだはっきり分かっていない。研究チームはこの謎を、次の被験者を選ぶための重要な手がかりとして追いかけている。

3,800時間の使用が変えた家族の風景

父親が娘に絵本を読み聞かせる様子

自宅で一人で使える「初のパワーユーザー」

Nature Medicine誌に報告された数字の中で、研究者たちが最も誇るのは「22.6か月で3,800時間」という使用時間だ。しかもこれは、研究員が立ち会わずハレルさんが自宅で使った時間だけを抽出したものだ。

「彼は発話BCIの初のパワーユーザーだ」とチームのスタヴィスキー氏は語る。これまでBCIの臨床研究は、被験者が研究室に通って数時間使うだけのものが多かった。家のリビングで毎日動くことを前提に設計された装置は、世界でほぼ初めてだ。

当初は研究員がハレルさんの自宅を訪れ、装置を頭にケーブルでつないでいた。今ではシステムが自動化され、介護パートナーが朝に「装着」するだけで起動する。「目を覚ましたらケーブルをつないでもらって、あとはそのまま動かす」とスタヴィスキー氏は説明する。

7歳の娘に絵本を読み聞かせる父親

装置はしゃべるだけのものではない。マウスカーソルも動かせるようになり、ハレルさんは自分のパソコンでメールを送り、ウェブを見て、環境活動家としての仕事を続けている。さらに「プライバシーモード」を入れれば、しゃべった文章は自動で消える。

もう一つ追加されたのが、7歳の娘と話すための「悪態フィルター」だ。脳から漏れた荒い言葉を装置が自動で除去してくれる。「娘に絵本を読んであげられて、彼女の読書を手伝えるようになった」とハレルさんは語る。装置を介して父娘の物語が積み上がっていく光景は、これまでの「研究室内のデモ」にはなかった景色だ。

「私は家族のために働いてお金と保険を稼ぎ続けられる。会いに来るのをためらっていた友人とも、また話せるようになった」。ALS患者の多くが諦めるしかなかった親としての役割を、彼はBCIで取り戻している。日常会話だけでなく、仕事のメールや活動家としての発信まで、声を介さずに自分の意思で動かせる範囲が広がり続けているのが大きい。

次の目標は「感情の宿った声」

装置は今、合成音声で話している。スタヴィスキー氏たちが次に目指すのは、ハレルさん本人の声、しかも喜怒哀楽の抑揚を持った声を取り戻すことだ。脳の活動から直接、自然なリズムやイントネーション、皮肉のニュアンスまで含む音声を作る「ブレイン・トゥ・ボイス」と呼ばれる試みだという。

ただし、誰もがハレルさんと同じ結果を出せるかはまだ分からない。ユトレヒト医療センターのマリスカ・ファンステーセル氏はオランダでALS女性に7年間BCIを使ってもらったが、最後は脳の変性で動かなくなったと指摘する。ミシガン大学のジェーン・ハギンズ氏も、進行性疾患を抱える人ほど入院や手術を避けたがる傾向が強い、と述べる。

それでもハレルさん本人の言葉は揺るがない。「自分にこのシステムが少しは役に立つだろうと、静かに自信は持っていた。だが、ここまで多くを取り戻せるとは、100万年経っても想像できなかった」。

シルミー

娘さんに絵本を読んであげられるって、めっちゃ素敵だね!

BCIはまだ頭蓋骨に穴を開ける手術が必要で、誰もが選べる治療ではない。だがハレルさんが3,800時間かけて作った「自宅で生活の道具になるBCI」という前例は、これから同じ道を選ぶ人と研究者の両方に、進むべき方向を具体的な数字で示している。ここから先は、よりたくさんの患者で同じ結果を再現できるかが、次の3年の宿題になる。

参考文献:
This man with ALS is “the first power user” of a brain implant that lets him speak
出典: MIT Technology Review

ショート動画でも配信中!チャンネル登録よろしくね!
テクノロジー
ALS BCI Nature Medicine UCデービス ケイシー・ハレル ブレイン・コンピューター・インターフェース 医療テック 発話運動野 神経工学 筋萎縮性側索硬化症 脳インプラント 脳科学 障害者支援 音素
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
  • ブラックホールじゃない!? 死んだ星の中に新しい宇宙が生まれる「グラバスター」説
  • アルツハイマーが銅で逆転!? 脳のゴミ排出を直したら記憶が44%回復

この記事を書いた人

シルミー編集者のアバター シルミー編集者

科学メディア「シルミー」の運営者。子供の頃から宇宙や生き物の図鑑を読みあさり、大人になった今も科学ニュースを追いかける日々。海外の学術メディアから面白い研究を見つけて、日本語でわかりやすく届けることをライフワークにしています。

関連記事

  • 次のコロナも一発で防ぐ? AI設計のDNAワクチン、初の人体試験で安全確認
    2026年6月8日
  • 音速の壁を再突破! NASA X-59が「静かなトン」で空を解禁
    2026年6月7日
  • ピアノの音色はタッチで変わる! 100年の謎を1000コマ撮影で解明
    2026年5月29日
  • 普通のノートPCが量子コンピュータに勝利! 覆された「最強」の常識
    2026年5月22日
  • 電気を通せない粒子でLEDを実現! ケンブリッジ大が98%の効率で達成
    2026年5月19日
  • 常識を破った”説明不能”の超ステンレス! 海水から水素を作る新合金
    2026年5月11日
  • 髪の毛の1/7の銅線が中性子星級プラズマに! HZDRが撮影成功
    2026年5月4日
  • 量子テレポートで光が270m瞬間移動! 30年の夢ついに実現へ
    2026年5月2日

コメント

コメントする コメントをキャンセル

人気記事
  • セロハンテープが「キーッ!」と鳴く理由が判明 音速超える亀裂のイタズラ
  • 2026年3月3日、皆既月食で月が真っ赤に! 見える場所は?
  • バクテリアががん細胞を食べる!? 腫瘍の中から破壊する新治療法
  • 大西洋の海底に500kmの巨大な谷! グランドキャニオンを超える裂け目の正体
  • カラスに卵を奪われた有名ワシ夫婦、再び新しい卵を産んだ!
Shirmee

知りたいを満たす科学メディア

宇宙・テクノロジー・人体・歴史・物理・生物など幅広い科学トピックを、わかりやすく深掘り。最新の研究や発見を、知的好奇心を刺激する記事でお届けします。

カテゴリー
  • テクノロジー
  • 人体・医学
  • 宇宙・天文
  • 歴史・考古学
  • 生き物・自然

キャラクター紹介

シルミー
シルミー

はかせの実験で生まれたスライム。「なんで?」が口ぐせ。

はかせ
はかせ

なんでも知ってる博士。やさしく教えてくれる。

SNS

X YouTube Instagram TikTok
  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー

© Shirmee/シルミー.

目次
X YouTube Instagram TikTok