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  3. Wordleで99%勝つ戦略を発見! 鍵は『情報量』の最大化

Wordleで99%勝つ戦略を発見! 鍵は『情報量』の最大化

2026 7/12
テクノロジー
2026年6月21日2026年7月12日
🕑この記事は約10分で読めます
シルミー

はかせ、Wordleで99%勝てる戦略が数学で発見されたんだって! 「情報量」を最大にするのが鍵なんでしょ?

はかせ

考え方はその通りです。ただ『発見』というより、以前から知られていたエントロピー戦略を、学生が授業課題としてきちんと検証・論文化した、というのが正確なところなんですよ

5文字の英単語を6回以内で当てる人気パズル「Wordle」。この攻略を、シャノンエントロピーという情報理論の指標で数値化した研究が、学術誌Northeast Journal of Complex Systemsに発表された。米ビンガムトン大学の授業課題から生まれた成果だ。最初に一つ補足しておくと、「情報量を最大化してWordleを解く」という考え方そのものは、数年前から愛好家や解説者の間で知られてきた手法だ。今回の研究の値打ちは、まったく新しい発見というより、その手法を学生が課題として丁寧に実装し、従来のやり方と比較して論文の形にまとめた点にある。その前提で中身を見ていきたい。

目次

Wordleと「情報量」で正解を追う考え方

単語当てパズルと情報理論のイメージ

5文字を6回で言い当てる単純なルール

Wordleは、毎日更新される5文字の英単語を6回以内で当てるパズルだ。ニューヨーク・タイムズ社が運営し、世界中で多くの人が毎日プレイしている。プレイヤーが単語を入力すると、各文字に色が付く。緑は位置も文字も正解、黄は文字は合っているが位置が違う、灰色はその文字が含まれない。この3色のヒントを頼りに、正解にたどり着く仕組みだ。

シンプルなルールに隠れた数学的な奥行きが、研究者を引きつけた。ビンガムトン大学のCongyu「ピーター」Wu助教は、この日常の遊びを情報理論の教材に活用した人物だ。学生たちに「情報理論を現実の課題に応用してみせよ」と投げかけ、その題材の一つとしてWordleが選ばれた。

「正解しそうな単語」より「情報量が多い単語」

多くのプレイヤーが選びがちなのは、英語で頻繁に登場する文字(A、E、Rなど)を含む単語を最初に置く方法だ。これに対して、情報理論を使う戦略は別の発想に立つ。「次に推測すべきは、正解の確率が高い単語ではなく、最も多くの情報を与えてくれる単語だ」という考え方だ。

研究に加わったDonald Stephens氏は、「地味だが重要な気づきは、推測は正解である必要はなく、ただ情報量が多ければよい、ということだ」という趣旨で語っている。答えに直接当てに行くより、残りの候補を大きく削れる単語を投げるほうが、結果的に早く正解にたどり着ける——という発想の転換である。ここが人間の直感とずれるところだ。私たちはつい「今回の推測で当てたい」と考えてしまうが、Wordleは6回のチャンスがある。序盤は当てることより、候補を効率よく絞ることに徹したほうが、終盤で確実に仕留められる。急がば回れ、を数学的に裏づけた考え方とも言える。

この考え方自体は目新しいものではなく、Wordleが流行した頃から、情報理論を使った攻略として動画や記事で紹介されてきた。今回の研究は、それを学生が自分たちの手でプログラムに落とし込み、実際にどれだけ効くのかを検証した、という位置づけだ。

鍵を握る「シャノンエントロピー」

ここで登場するのがシャノンエントロピーだ。1948年に数学者クロード・シャノンが提唱した、不確実性を測る指標で、現代の通信工学やデータ圧縮の土台にもなっている。もともとは、電話線でノイズに埋もれた信号をどう復元するか、という問いのために生まれた概念だ。Wordleの攻略とは一見まったく無縁の世界に見えるが、「与えられたヒントから何をどれだけ学べるか」を数値化するという根本の発想は、驚くほど共通している。

イメージで言えば、「20の質問」ゲームで、一発で候補を半分に絞れる質問こそ情報量が最大、というのと同じ理屈だ。「大きいですか、小さいですか」のような、答えがどちらでも候補が大きく減る質問ほど、効率よく正解に近づける。逆に、めったに当たらない質問は、外れたときに得られる情報が少ない。Wordleでは、ある単語を推測した結果として残る候補のばらつきが大きいほど、その推測は情報量が多いとみなされる。プログラムは毎ターン、候補となる単語について「もしこれを当てたら、平均してどれだけ候補が減るか」を計算し、最も削減効果の大きい単語を提案する。プレイヤーは色のヒントを入力するだけで、次に推測すべき単語が返ってくる、という仕組みだ。人間が頭の中で全単語を検討するのは難しいが、コンピューターなら数千の候補を一瞬で計算できる。

面白いのは、この戦略が、しばしば「正解にはまずなりえない」奇妙な文字の組み合わせを提案する点だ。たとえば序盤に母音を多く含む単語を投げれば、答えそのものでなくても、「どの母音が含まれていないか」を一気に絞り込める。チェスで、駒をすぐ取りに行く一手より、盤面全体を有利にする一手を選ぶのに似ている。目先の得より、状況をよくする一手を優先する感覚だ。人間の直感は「正解の可能性」を優先しがちだが、コンピューターは「正解までの距離」を淡々と計算で示してくれる。情報理論は、その距離を測るための物差しであり、感覚ではなく数字で最善手を教えてくれる。

「99%対90%」という数字の読み方

研究チームは、この情報理論ベースの戦略を、文字の頻度を重視する従来型の戦略とコンピューターシミュレーションで比較した。従来型は、英語でよく使われる母音や子音を含む単語から始める方式で、Wordle上級者の多くが感覚的に採っているやり方でもある。その結果、従来型の戦略の正解率が約90%だったのに対し、情報理論ベースの戦略は約99%に達した、と報告されている。単純計算で9ポイントの差だ。90%でも十分高く見えるが、6回で当てきれない場面が10回に1回は出る、ということでもある。

ただし、この数字の読み方には注意が要る。「99%」「90%」が具体的にどんな条件で出た数字か——何回シミュレーションしたのか、どの単語リスト(辞書)を使ったのか、Wordleの「ハードモード」を適用したのか——といった前提は、慎重に確認する必要がある。前提が変われば数字も動きうるため、「99%対90%」を動かしようのない事実として受け取るのは早い。あくまで「同じ条件で比べたとき、情報理論の戦略のほうが成績が良かった」という報告として理解するのが適切だ。

とはいえ、正解候補を効率よく削っていくアルゴリズムが、感覚的な文字頻度アプローチより有利になりやすい、という方向性自体は理屈が通っている。最初の推測が一見「変な単語」に見えても、長い目で見れば少ない手数で答えに近づける、という発想は、情報理論の考え方として筋が通っているからだ。人間はどうしても「早く正解を当てたい」という気持ちが先に立ち、当たりそうな単語を選びがちだ。だが、遠回りに見える「情報を稼ぐ一手」のほうが、結果的に近道になることがある。この直感に反する部分こそ、情報理論を使う戦略の面白さと言える。

授業課題が学術論文になるまで

この研究は、最初から論文を目指していたわけではない。ビンガムトン大学のThomas J. Watson工学・応用科学カレッジの授業で、Wu助教が学生に出した課題が出発点だった。テーマは「情報理論を現実のタスクに応用してみせよ」。学生たちは題材としてWordleを選び、シャノンエントロピーをゲーム攻略に組み込むコードを書き上げていった。

ふつうなら期末レポートで終わっていたかもしれない。だが、そのアイデアと結果は、教室の外に持ち出す価値があると判断され、研究レベルにブラッシュアップされた。最終的に、Donald Stephens氏、Mallak Alqaisi氏、Talal Aladaileh氏を含む共著で、学術誌に正式発表された。授業の課題が、指導教員の後押しを受けて、査読を経た一つの研究成果として世に出た形だ。学生にとっては、教科書で学んだ概念を、自分の手で動く形にし、しかもそれが「論文」という目に見える成果に結びついた、貴重な経験になったはずだ。共著者のTalal Aladaileh氏は、この授業について「ただ概念を教えるのではなく、実際に役立つ形で応用するよう学生を後押ししてくれる」という趣旨のコメントを寄せている。

Wu助教は、このプロジェクトを、情報理論が実用的な課題で力を発揮する好例だと位置づけている。本人の言葉を借りれば、チームの貢献は「静的な計測指標であるシャノンエントロピーを、人気のタスクをうまくこなすための動的な解決策へと変換した」点にある、という。教科書の中にあった概念を、身近なゲームの攻略という形で具体的に動かしてみせた——そこにこの取り組みの面白さがある。

「発見」ではなく「検証」として受け止める

ここで改めて確認しておきたいのは、この研究が「Wordleを情報理論で解く手法を世界で初めて発見した」ものではない、という点だ。手法自体は以前から知られていた。だからこそ、この成果は「新発見」というより、「授業の課題が、きちんと検証された一つの研究として形になった好例」として受け止めるのが正確だ。それでも、身近な遊びを入り口にして、情報理論の考え方を頭で理解するだけでなく実際に手を動かして確かめてみせた、という教育的な価値は大きい。学んだことを使える形にする——研究の原点がそこにある。次にWordleを遊ぶとき、「正解しそうな単語」ではなく「候補を大きく削れそうな単語」を選んでみると、少し違った景色が見えてくるかもしれない。

シルミー

「当てに行く」より「候補を削る」ほうが結果的に早いって、逆転の発想でおもしろい! これ授業の課題から生まれたんだね

はかせ

そう。手法自体は前からあったけれど、学生が自分の手で実装して検証した——そこに価値があるんです。99%という数字も条件つき。数字だけでなく、その裏の考え方を楽しむのがいいですね

身近なパズルの背後に、80年近く前に生まれた情報理論の考え方が息づいている。今回の研究は、その考え方を学生が授業の中で実際に動かし、一つの論文にまとめ上げた記録だ。派手な「大発見」ではないけれど、教科書の概念が身近な遊びと結びつく瞬間には、学ぶことの面白さが詰まっている。身近な題材だからこそ、情報理論という一見とっつきにくい分野の考え方が、すっと腹落ちする。難しい数式を追わなくても、「候補を効率よく削る」という感覚で、その本質の一端に触れられるのだ。次に灰色の四角を見つめるとき、その一手が「正解を狙う手」なのか「情報を稼ぐ手」なのか、少し意識してみると、パズルの見え方が変わるかもしれない。

参考文献:
Aladaileh, T., Stephens, D., Alqaisi, M., & Wu, C. (2026). Solving Wordle Using Information Theory. Northeast Journal of Complex Systems, 8(1), Article 6. DOI: 10.63562/2577-8439.1146

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この記事を書いた人

シルミー編集者のアバター シルミー編集者

科学メディア「シルミー」の運営者。子供の頃から宇宙や生き物の図鑑を読みあさり、大人になった今も科学ニュースを追いかける日々。海外の学術メディアから面白い研究を見つけて、日本語でわかりやすく届けることをライフワークにしています。

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