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広がり続けるはずの宇宙が、約200億年後に一点へ潰れるという計算

2026 10/02
宇宙・天文
2026年2月26日2026年10月2日
膨張から収縮へ向かう宇宙の姿のイラスト
🕑この記事は約9分で読めます

編集・パクト

夜空の星は、何百年経ってもだいたい同じ場所で光っている。だから宇宙は静かで変わらないものに見えるが、宇宙全体は広がり続けていて、遠くの銀河は少しずつ私たちから遠ざかっている。

この広がりが永遠に続くのかどうかは、宇宙定数Λという量の符号で決まる。

論文の整理では、Λが0以上なら宇宙は永遠に膨張し、Λがマイナスなら宇宙の大きさはいつか最大になったあと、ゼロまで縮んで終わる。

この最期をビッグクランチと呼ぶ。

2025年9月、スペインのドノスティア国際物理学センター、アメリカのコーネル大学、中国・上海交通大学の李政道研究所などの研究者3人が、Λがマイナスである可能性が高いとする論文を宇宙論の専門誌JCAPに発表した。

モデルの最良適合値で計算すると、宇宙は約110億年後に最大の大きさに達してから縮み始め、いまから約200億年後に一点に潰れる。

膨張から収縮までを合わせた宇宙の寿命は約333億年になる。ただし、これは1つのモデルの最良適合値にもとづく計算で、観測で確かめられた未来ではない。

キク

宇宙の広がり方って、ずっと同じじゃなかったのかな?

目次

『宇宙は永遠に広がり続ける』——そう信じられてきた

無数の銀河が写った深宇宙

宇宙が広がっているのは、NASAによると、約138億年前のビッグバンのあと、しばらくは重力で膨張が遅くなっていたが、誕生から約90億年後に膨張が加速に転じたためだ。

この加速を起こしている未知のものが、ダークエネルギーと名づけられている。

ダークエネルギーが宇宙定数Λだけでできているなら、これまでの観測はΛがプラスであることを示し、宇宙は永遠に膨張を続けることになる。

今回の論文は、Λがマイナスの場合を調べた。このとき宇宙の大きさ(スケール因子)は最大になったあと縮み、ゼロになって終わる。

論文はこの時点を宇宙の終わりと定義している。

論文の題は『The Lifespan of our Universe(私たちの宇宙の寿命)』。

著者は、ドノスティア国際物理学センターのフアン・ニャン・ルー氏、上海交通大学 李政道研究所のユーチェン・チウ氏、コーネル大学と香港科技大学のS・H・ヘンリー・タイ氏の3人だ。

最良適合値から求めた宇宙の寿命は約333億年で、現在の宇宙の年齢は約138億年である。

100年前に見つかった膨張、1998年に見つかった『加速』

宇宙が広がっていることを観測で確かめたのは、1929年のエドウィン・ハッブルだ。

NASAによると、ハッブルは助手のミルトン・ヒューメイソンが測った銀河の赤方偏移と、ケフェイド変光星で求めた距離を比べ、遠い銀河ほど速く遠ざかっていることを示した。

それまでは、重力によって膨張はしだいに遅くなると考えられていた。

ところが1998年、2つの研究チームが、遠い超新星が予想より暗く、つまり予想より遠くにあることに気づき、宇宙の膨張が時間とともに速くなっていると結論づけた。

この発見により、ソール・パールムッター、ブライアン・シュミット、アダム・リースの3氏は2011年のノーベル物理学賞を受けた。

宇宙の約7割を占める『ダークエネルギー』

ダークエネルギーの正体は分かっていない。NASAは、宇宙の約68.3〜70%がダークエネルギーだとしている。

有力な候補の1つが、アインシュタインの方程式に出てくる宇宙定数だ。NASAの解説では、宇宙定数は空間にいつもある真空のエネルギーに当たる可能性がある。

アインシュタインは宇宙が静止していると考えて宇宙定数を入れ、宇宙の膨張が確かめられてからこれを取り下げた。

論文のモデルでは、ダークエネルギーは宇宙定数Λと、アクシオンという非常に軽い粒子の場の合計になる。Λがプラスなら宇宙は永遠に膨張し、マイナスならいつか縮んで終わる。

宇宙の終わり方は宇宙定数の符号で決まる

青く光るプレアデス星団

論文は、最も単純で可能性の高い筋書きを2つ挙げている。どちらも宇宙定数Λの値で決まる。

Λが0以上なら、宇宙は今の膨張を永遠に続け、寿命は無限になる。Λがマイナスなら、宇宙の大きさは最大になったあとゼロまで縮み、ビッグクランチで終わる。

異変——ダークエネルギーが『弱まっている』かもしれない

論文のきっかけは、DES(ダーク・エネルギー・サーベイ)とDESI(ダーク・エネルギー分光装置)の観測結果だ。

論文によると、2つを合わせると、ダークエネルギーの状態方程式のwが-1ではないことが4.2σの水準で示される。

wが-1なら宇宙定数のとおりに一定、-1でなければダークエネルギーは時間とともに変わっていることになる。

DESIは、銀河の分布から宇宙の膨張の歴史をたどる観測だ。

2025年に公開されたDR2は、3年分のデータにもとづき、1400万個を超える銀河とクエーサーを使ってバリオン音響振動(BAO)を測った。

この論文のモデルでは、現在のwは約-0.74になる。-1より大きいことは、ダークエネルギーが昔より弱まっている方向に当たる。

ただしDESI自身も、未知の系統誤差がなければΛCDMモデルが挑戦を受けている、という慎重な書き方をしている。

新説の核心——宇宙定数はマイナスかもしれない

論文が使うのは、アクシオン・ダークエネルギー(aDE)モデルだ。

非常に軽いアクシオン粒子の場と宇宙定数Λを組み合わせたモデルで、DESやDESIが示す「wが-1ではない」という結果を説明できる。

アクシオンの場は、宇宙の膨張が速いうちは凍りついたように動かず、ダークエネルギーとして働く。膨張が遅くなると転がり始め、持っていたエネルギーを物質のエネルギーに移していく。

観測データに合わせてモデルのパラメータを探すと、Λがマイナスのほうがはるかにあり得ると分かった。

最良適合値では、ダークエネルギー全体のうちΛの分が-1.61、アクシオンの分が2.33(合計0.72)で、アクシオンの質量は約2.93×10の-33乗電子ボルトになる。

マイナスのΛは宇宙を縮める向きに働く。アクシオンのエネルギーが時間とともに物質へ移って減っていくと、宇宙の膨張率(ハッブルパラメータ)がゼロになる時点が来て、それ以降は収縮に転じる。

約200億年後に一点へ、計算上の宇宙の寿命は333億年

最良適合値で数値計算すると、宇宙の大きさは現在の約1.69倍で最大になる。それは、いまから約110億年後だ。

その後は縮みに転じる。計算は、宇宙の大きさが現在の1000分の1になった時点で打ち切られ、そこまでを合わせた宇宙の寿命は約333億年(33.3 Gyr)になる。

現在の年齢が約138億年なので、いまから約200億年後に終わる計算だ。

収縮の段階が寿命全体に占めるのは約25%で、膨張の段階のほうがずっと長い。

NASAによると、太陽は約50億年ほど先に赤色巨星にふくらみ、水星と金星をのみ込み、地球ものみ込む可能性がある。

これは、計算上の宇宙の終わりよりはるか前の話だ。

宇宙の現在から終わりまでの流れを示した図

でも、まだ『かもしれない』の段階

この計算は、宇宙の運命が決まったという話ではない。論文は、寿命の見積もりが、低い赤方偏移(近い時代)でw>-1という最近の観測と、aDEモデルが正しいことに左右されると強調している。

観測の側の証拠も決定的ではない。DESIの発表によると、時間とともに変わるダークエネルギーがΛCDMより好まれる度合いは、使う超新星のデータによって2.8〜4.2σと幅がある。

モデルのパラメータにも大きな不定性がある。最良適合値のΛの分(-1.61)は、平均値(-0.69)の1σの範囲から外れている。

平均値を使って計算すると、寿命は約403億年(40.3 Gyr)に延びる。また、ハッブル定数に局所測定に近い値を使うと、寿命は約10億年短くなる。

論文自身も、Λがちょうど0の場合がDESIのデータと矛盾しないことを認めている。

それでも、この論文は、永遠の膨張のほかに、Λがマイナスという選択肢が現在のデータと両立しうることを数字で示した。

DESやDESIの結果が確かめられ、モデルが検証されれば、パラメータと寿命はもっと正確に決まる、と論文は述べている。

キク

宇宙が縮んで終わる筋書きも、ありうるってことか。でも333億年は1つのモデルの計算で、まだ確かめられた未来じゃないんだね。

参考文献:
一次ソース: Hoang Nhan Luu, Yu-Cheng Qiu, S.-H. Henry Tye, 『The Lifespan of our Universe』, Journal of Cosmology and Astroparticle Physics (JCAP), Vol.2025, No.09, 055 (2025年9月18日) DOI:10.1088/1475-7516/2025/09/055(プレプリント: arXiv:2506.24011)
arXiv:2506.24011(論文全文)
DESI DR2 Results II(DESI Collaboration, 2025)
What Is Dark Energy?(NASA)
研究機関: ドノスティア国際物理学センター、コーネル大学、上海交通大学 李政道研究所、香港科技大学
観測データ: DESI(暗黒エネルギー分光装置, DR2)、DES(ダーク・エネルギー・サーベイ)
参考: 加速膨張の発見は1998年(2011年ノーベル物理学賞: S. パールムッター、B. シュミット、A. リース)

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この記事の編集者

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科学メディア「シルミー」の運営者。子供の頃から宇宙や生き物の図鑑を読みあさり、大人になった今も科学ニュースを追いかける日々。海外の学術メディアから面白い研究を見つけて、日本語でわかりやすく届けることをライフワークにしています。

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