新種を報告したのはミュンヘン大学(LMU)とバイエルン州立自然科学コレクション(SNSB)を中心とする国際チームで、論文は2026年に学術誌PeerJ(DOI: 10.7717/peerj.20945)に掲載された。
発見地はアルゼンチンのチュブ州にあるカニャドン・カルカレオ層で、後期ジュラ紀の竜脚類の化石が少なかった南半球から見つかった標本として注目されている。
始まりは羊飼いの偶然の発見だった
パタゴニアの牧場に眠っていた巨大な骨
最初の発見は、アルゼンチン・チュブ州の牧場でのことだった。羊飼いのディオニデ・メサさんが化石を見つけ、2001年3月に研究者のラウフト氏に知らせた。
発掘が始まったのは2002年で、発掘現場では地表に仙骨(腰の骨)が露出していた。
標本の大部分は2011年に現地から運び出され、2018年には近くで頸椎3個が追加で見つかった。見つかった骨は、首・背中・腰・尾にわたり、同じ一頭のものとみられる。
キクビカラコサウルスって名前には、どんな意味が込められているんだろう?
「大きな動物」と「ディオニデさん」が合体した名前
今回付けられた学名はBicharracosaurus dionidei、日本語にすると「ビカラコサウルス・ディオニデイ」となる。
属名の「ビカラコ」はスペイン語の口語で「大きな動物」を意味し、メサさんが化石の大きさを言い表すのに使った言葉だ。
これにギリシャ語で「トカゲ」を意味するサウルスが付いている。
ビカラコサウルスは、竜脚類のうちマクロナリアというグループに入る。
種名の「ディオニデイ」は、最初に化石を見つけた羊飼いディオニデ・メサさんへの敬意を込めて付けられた。
1億5500万年前、ゴンドワナ大陸を歩いていた
骨の形と骨の組織を調べた結果、この個体は成熟した大人だったとみられる。
肋骨2本の薄片を調べると、1本には少なくとも7本の成長の記録(年輪のような線)があった。毎年1本できたと仮定すると、少なくとも7年は生きたことになる。
2本とも最も外側に、成長がほぼ止まったことを示す層があり、この個体は成熟に達していたと考えられる。
化石が見つかった層の年代は、後期ジュラ紀のオックスフォード期からキンメリッジ期にあたる。プレスリリースは、約1億5500万年前の南の超大陸ゴンドワナに生きていたと説明している。


見つかった骨と大きさの推定
掘り出されたのは脊椎30個以上と腰の骨
回収されたのは、頸椎7個、背椎10個、仙椎5個、尾椎9個の合わせて31個の脊椎と、頸肋骨4本、背肋骨10本、腸骨(骨盤の骨)の破片だ。
頭の骨は見つかっていない。論文は、軽い頭の骨は埋まる前に水流で流され、重い骨は肉食動物に散らされた可能性があるとしている。
プレスリリースは、最大級の竜脚類よりは小さいものの、全長は推定で約20m(65フィート)だったと伝えている。論文の本文には全長の推定値の記述が見つからず、推定の方法は確かめられなかった。
2つの系統が混ざった不思議な骨格
ディプロドクスとブラキオサウルスが混ざった姿
この化石は、別々の系統に似た特徴を併せ持っている。
たとえば一部の骨は、タンザニアで見つかっている首の長い恐竜ギラファティタン(ブラキオサウルス科)の骨によく似ていた。
一方で背中の脊椎は、北米のディプロドクスやその仲間に近い形をしていた。
論文によると、同じ地層から以前ディプロドクス科の可能性があるとして報告された背骨(MPEF-PV 1324)があり、この化石の後ろ側の背椎とよく似ている。
「ブラキオサウルス科の可能性」という慎重な結論
論文は2つの既存のデータセットを使って系統解析を行い、ビカラコサウルスはどの解析でもマクロナリアに入った。
ブラキオサウルス科に入ったのは、形質に重みづけをした解析(EIW)の一部だけで、重みづけをしない解析(EW)では、ブラキオサウルス科の外にいる基盤的なマクロナリアになった。
もしこの位置づけが正しければ、南米のジュラ紀から見つかった初めてのブラキオサウルス科ということになる。
論文の結論は、確実なマクロナリアで、ブラキオサウルス科とみられる、というものだ。論文自身も、ブラキオサウルス科である可能性があると慎重に書いている。
ブラキオサウルス科とされる化石は、ヨーロッパ、北米、アフリカで見つかっていて、南米では可能性のある断片的な化石があるだけだった。
北半球に偏ってきた後期ジュラ紀の竜脚類研究
これまで後期ジュラ紀の竜脚類(草食巨大恐竜)の研究は、ほとんどが北半球の化石に頼って組み立てられてきた。
論文によると、後期ジュラ紀のゴンドワナ(南の大陸)で、関節した状態やまとまった竜脚類の化石が複数見つかっている地層は、タンザニアのテンダグル層と、このカニャドン・カルカレオ層の2つだけだ。
プロジェクトを率いた古生物学者オリバー・ラウフト教授は、「長い間、南の大陸で重要な産地はタンザニアの1か所だけでした」と語っている。
南半球の空白を埋める発見
南半球の進化史を見直すための比較材料
そこに今回、パタゴニアのカニャドン・カルカレオ層から30個以上の脊椎を伴う標本が登場した。
ラウフト教授はこう続ける。
「アルゼンチン・チュブ州にあるビカラコサウルスの産地は、私たちにとって大切な比較材料を与えてくれます。これにより、特に南半球での進化史について理解を継続的に補強し、見直していくことができるのです」
化石はアルゼンチン・トレレウのエヒディオ・フェルグリオ古生物学博物館に保管されている。
論文によると、化石の3Dスキャンデータはデータベースのモルフォソース(MorphoSource)で公開されている。
未解明のマクロナリア進化の謎へ
ビカラコサウルスが分類されたマクロナリアというグループには、ブラキオサウルスやティタノサウルス類など、巨大な草食恐竜の代表選手が顔をそろえている。
ただ、マクロナリアの初期の進化は、まだはっきりしていない。
論文は、ジュラ紀の竜脚類の分類が使うデータセットによって食い違うことを示し、マクロナリアの起源や初期の進化、分布についての仮説は慎重に扱うべきだとしている。
論文の題名にも「マクロナリアの初期進化の問題」という言葉が入っている。



羊飼いさんが見つけた骨が南半球の恐竜を知る手がかりになるけど、ブラキオサウルス科かどうかはまだ慎重に見ていく段階なんだね。
参考文献:
Reutter A, Carballido JL, Windholz GJ, Pol D, Rauhut OWM (2026) 「Bicharracosaurus dionidei, gen. et sp. nov., a new macronarian (Dinosauria, Sauropoda) from the Late Jurassic Cañadón Calcáreo Formation of Argentina and the problematic early evolution of macronarians」 PeerJ. DOI: 10.7717/peerj.20945(PMC: 全文)
This strange giant dinosaur may change what we know about Jurassic titans(ScienceDaily / SNSB)









