はかせ、朝早く起きる人は糖尿病になりにくいって本当なの?
ピッツバーグ大学の研究チームが、腕につける端末の心拍データを使って、朝型と関係する遺伝子の型をもつ人に2型糖尿病が少ないという関連を見つけたんだよ。
論文の筆頭著者は17歳の高校生なんだ。ただし「早起きすれば防げる」とまでは、まだ言えないところが大事なんだよ
今回、朝型と関係する遺伝子の型をもつ人ほど2型糖尿病が少ないという関連が、24時間の心拍リズムを手がかりに示された。
アメリカの大規模な研究プログラムに集まった、腕につける活動量計(Fitbit)の心拍記録と遺伝情報、診療記録を使った観察研究で、病気との関連を調べた解析の対象は1万5960人だ。
きっかけを作ったのは、早起き生活を送る高校生の素朴な疑問だった。ただし先に言っておくと、これは関連を見つけた研究で、「早起きすれば糖尿病を防げる」と確かめたものではない。
朝型か夜型かは生まれつきの傾向が大きい


人が一番活発に動ける時間帯の好みを、クロノタイプと呼ぶ。朝型か夜型か、という日常語とほぼ同じ概念だ。
論文によると、クロノタイプは遺伝の影響を受けた生まれつきの好みで、これまでのゲノム研究で、関係する遺伝子の型がいくつも見つかっている。
チャン君によると、研究チームが注目したのは、クロノタイプと病気のなりやすさの関係だった。
これまでの研究から、クロノタイプは概日リズム(サーカディアンリズム)をずらすことを通じて、病気のなりやすさに関わると考えられているという。
クロノタイプと似た言葉に、この概日リズムがある。概日リズムは、体の働きがおよそ24時間の周期で上下する波のことだ。
朝型の人は夜型の人より、メラトニンというホルモンのリズムが朝寄りにずれていることが知られている。
ただ、生まれつきのクロノタイプと違い、概日リズムは周りの環境に合わせてずれを調整できる(同調する)。
論文は、そのため概日リズムのずれのほうが、医療で手を打ちやすい目印になるかもしれないと書いている。


夜型と病気の関連はこれまでも指摘されてきた
これまでの研究でも、夜型の人には依存や気分の不調、睡眠の病気、代謝の病気が多いという報告が、別々に出ていた。2型糖尿病も、クロノタイプとの関連が強い病気の一つだ。
一方で、朝型の遺伝子の型が2型糖尿病のリスクに影響するかを遺伝情報から調べた先行研究(メンデルランダム化解析)では、関連は見つかっていなかった。
課題は、概日リズムそのものを大勢の人で測る方法がなかったことだ。
心拍の1日のリズムを体内時計の目安にする


概日リズムを直接測るには、何度も採血してホルモンの濃度の変化を追う必要がある。ケリー助教も、連続採血を使う従来の手法は手間のかかる作業だったと振り返る。
論文によると、こうした方法は大人数を長く追う研究には向かず、概日リズムのずれが健康にどう響くかを大勢で調べた研究は少なかった。
そこでチームが目をつけたのが、ウェアラブル端末の心拍データだ。活用したのは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が主導するAll of Usリサーチプログラム。
参加者が提供した医療記録や遺伝情報を医学研究に活かす仕組みで、参加者が任意で共有したFitbit(腕につける活動量計)の記録も集まっている。
論文によると、その数は5万人以上分にのぼる。
心拍は、1日の中でゆるやかに速くなったり遅くなったりする。
チームは参加者ごとに、記録のある全期間の心拍を、1週間の中の5分刻みの時刻ごとに平均し、それを24時間周期の波(サイン波)に当てはめて、波が1日のどの時刻にずれているかを示す「位相」を割り出した。
この位相を心拍フェーズ(HRP)と名付けた。30日分を超える記録があり、波によく当てはまった3万1422人では、平均は9.48時間(標準偏差1.57時間)だった。
遺伝情報のある2万2653人で、これまでに概日リズムと関係すると報告された110の遺伝子の型を調べると、7つが心拍フェーズと関連していた。
上位4つは、これまでの大規模研究で朝型と最も強く結びついてきた、1番染色体のRGS16・RNASEL遺伝子付近の領域に集まっていた。
ほかに、歩数が少ない人ほど心拍フェーズが遅く、年齢が高い人ほど早いという、クロノタイプの研究と同じ傾向も見られた。
ただし、このデータには本人が答えた朝型・夜型のアンケートがない。心拍フェーズとクロノタイプの関係を直接確かめるのは今後の課題だと、著者らは書いている。
17歳の高校生が筆頭著者
この論文の筆頭著者は、ボート部で早起きの生活を続ける高校生、ザッカリー・チャン君(17歳)だ。
ペンシルベニア州ピッツバーグのフォックス・チャペル・エリア高校の11年生(日本の高校2年生にあたる学年)で、中学2年生にあたる学年から、ボートの練習や大会のために朝4時半から6時の間に起きる生活を続けてきた。
練習のない日にも早く目が覚めるようになって、こんな疑問を持った。「この早起きは、自分の健康に何か影響しているのか。もし影響しているなら、どんなふうに?」。
そこで、ピッツバーグ大学医学部のニール・ケリー助教を指導役に、その答えを探し始めた。
共著者には、同大学医学部で精神医学のコリーン・マクラング教授、内科学のセイェド・メフディ・ヌーライ准教授らが加わった。
論文の役割分担によると、チャン君は研究の構想、データの解析、論文の執筆に加わっている。
「睡眠は健康の中で過小評価されている要素だと思う。とくに高校生にとっては」と話すチャン君は、ボートのために何年も早起きを続けるうちに、自分も朝型になった気がするという。
朝型の遺伝子と糖尿病リスクの関連


次にチームは、遺伝情報と診療記録もそろった1万5960人で、3272の病気や状態と心拍フェーズの関係を一度に調べた。
歩数、年齢、性別、遺伝的な祖先の違いを調整したうえで、統計的に意味のある関連が見つかったのは22件。
心拍フェーズが遅い(夜型寄りの)人ほど、依存や気分の不調、睡眠の病気、代謝の病気の記録が多い傾向があった。逆に、妊娠に関わる一部の状態は、心拍フェーズが早い人に多かった。
これまで別々の研究で指摘されてきた夜型と病気の関連と、おおむね合う結果だ。
2型糖尿病に絞った解析では、1万5960人のうち2161人に2型糖尿病の記録があった。
心拍フェーズが遅いほど2型糖尿病が多く(オッズ比1.09)、血糖の指標HbA1cが5.6%を超える人が多い傾向(オッズ比1.07)や、診断される年齢が若い傾向(ハザード比1.17)も見られた。
そのうえでチームは、朝型と関係する遺伝子の型として、心拍フェーズとの関連が最も強かったrs1144566という部位に注目した。
この部位にT型をもつ人(795人)は、C型だけの人(1万5128人)より心拍フェーズが早く、2型糖尿病のオッズはT型1つあたり0.69倍と低かった。
診断される年齢も遅い傾向があり、歩数には差がなかった。なお、ピッツバーグ大学の発表とそれを伝える記事では番号が「rs1144666」となっているが、論文の表記はrs1144566だ。
チームはさらに、遺伝子の型を手がかりに因果の向きを推し量る「メンデルランダム化」という方法で解析し、rs1144566が心拍フェーズを通して2型糖尿病のリスクに影響している可能性を示した。
ただし著者ら自身、1つの遺伝子の型だけを使ったこの解析から因果を言うには注意が必要だと書いている。rs1144566はRGS16という遺伝子の中にあり、タンパク質のアミノ酸を1つ変える。
RGS16は、試験管の実験でインスリンの分泌やすい臓のβ細胞の増殖に関わることが報告されている。体内時計を通さない別の経路で糖尿病のリスクに関わっている可能性も残る。
論文は2026年3月、The Journal of Physiologyに掲載された。


「早起きすれば防げる」とは まだ言えない
生まれつきのクロノタイプと違って、概日リズムは動かせる。ケリー助教は、早起きや朝の運動などでリズムをずらせることが、ほかの研究で示されていると話す。
ただし今回の研究は、生活を変えて心拍フェーズを早めれば糖尿病が減るかを試したものではない。
ケリー助教自身、「朝の運動で心拍フェーズが健康を守る方向に動くと言うのは、まだ早すぎる」と話している。
一方で、夜更かしをして活動を遅い時間に回すことが健康上の悪い結果と関連することは、データが支持しているとも述べる。
そのうえで「私自身は、今回分かったことをもとに、自分の行動を変えてみようと思っている。誰も特定の結果を保証することはできない」とも語る。
論文は限界として、結果は関連にとどまり、ほかの集団で確かめる必要があること、測っていない要因が影響している可能性、食事の影響を調整できなかったことを挙げている。
参加者の4分の3以上はヨーロッパ系の祖先をもつ人だった。
チームは今後、研究室でこれらの遺伝子の型を調べて仕組みを探り、概日リズムを意図的にずらす取り組みが健康に良い影響を与えるかを、前向きな研究で確かめるという。
「早起きしたら必ず防げる」わけじゃないんだね。でも、腕の端末の心拍で体内時計の目安が分かるのはおもしろい!
そうなんだ。今回分かったのは関連までで、生活を変えて糖尿病が減るかは、これから確かめるところなんだよ。体のことで気になることがあったら、お医者さんに相談してね
参考文献:
Chan Z, et al. Heart rate phase is an indicator of chronotype-relevant circadian shifts associated with human disease: an All of Us Research Program analysis. The Journal of Physiology, 2026. DOI: 10.1113/JP290337
The Journal of Physiology 原論文
論文本文(PMC): PMC13082182
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Heart rate rhythms reveal early bird genetics may help shield against type 2 diabetes(Medical Xpress)









