キク夜空の星って、どうしてちかちかして見えるんだろう?
冬の夜、空を見上げると、星がちかちかと光っています。まるで星が、明るくなったり暗くなったりしているようです。
先に答えを言います。星の光が地球の空気を通るとき、空気のゆらぎで曲げられ、強くなったり弱くなったりするからです。
じつは、ほとんどの星は、一定の光でかがやいています。NASAの解説も、そう書いています。ここからは、大阪大学の解説などを使って、じゅんばんに見ていきます。
光は、空気のむらで曲がる
光は、屈折率という性質が同じ物の中では、どこまでもまっすぐ進みます。
ところが、屈折率が場所によってちがうと、光の進む向きが曲げられます。光が曲がる話は、虹の色の順番の記事でも見ました。虹では、日光が雨つぶの中で曲がってはね返ります。
空気の屈折率は、気圧や温度、湿度で変わります。星の光は、あたたかい空気や冷たい空気に入るたびに、少しだけ曲がります。
上の空へ行くほど、空気はうすくなります。でも、うすくなるだけでは、ちかちかは起きません。時間がたっても変わらない、ただの並び方だからです。
大事なのは、時間とともに動くことです。屈折率がむらになり、しかも時間とともに変わると、光の進む向きも時間とともに変わります。
NASAの解説は、こうした空気の動きを「乱流」と呼ぶこともあると書いています。星の光の一部はまっすぐ届き、一部は少しそれてしまうのです。
上空11kmの、小さな空気のかたまり
では、空気のむらは、どんな形をしているのでしょうか。
温度や密度のちがう空気がふれあうと、上へ向かう風と下へ向かう風が入りみだれます。すると、温度と密度のちがう空気のかたまりが、できては消えます。このかたまりを気団といいます。
またたきに大きくかかわるのは、上空11km付近にできる、10〜20cmほどの気団です。大阪大学の解説は、そう書いています。
この気団が、レンズのように働きます。密度の高い気団や低い気団が、凸レンズや凹レンズのような働きをするのです。
その結果、地面の上には、星の光が集まって強くなる所ができます。広がって弱くなる所もできます。これが、星がきらきら点滅して見える原因です。
ウィスコンシン大学マディソン校のジェームズ・ラティスさんも、同じように説明しています。温度のちがう所は、あたたかい空気や冷たい空気の「あわ」のようなものだと話しています。
あわは、ふつう上がったり下がったりしています。だから、星の光の通り道は、いつも不規則にずれ続けるそうです。そのずれを、私たちはまたたきとして見ているのです。
星は点、惑星は円盤


夜空には、星ほどちかちかしない明かりもあります。金星などの惑星です。同じ空気を通ってくるのに、なぜちがうのでしょうか。
カギは、見かけの大きさです。星はとても遠くにあるので、点のような光とみなせます。
ラティスさんは、太陽のほかの星は、大きさのない点に見えると話しています。そのため、星の光は、とても細い束になって目に届きます。
大阪大学の解説も、とても小さな点に見える光ほど、気団のゆらぎの影響を大きく受けると書いています。ラティスさんの言葉では、細い束がぴくぴく動くと、星がまたたくのです。
一方、惑星は星よりずっと近いので、円盤の形が見えます。だから、目に届く光は、もっと太い束です。束の中のそれぞれの光は、空気の中で少しずつちがう道を通ってきます。
大阪大学の解説は、金星などの惑星を、たくさんの点の光の集まりとみています。それぞれの点のゆらぎは、重なり合って平均されます。そのため、金星全体の明るさの変化は、あまり気にならないのです。
惑星もまったくまたたかないわけではなく、星ほどにはまたたかない、ということです。



惑星は点の光の集まりだから、ゆらぎが平均されて目立たないんだね!
地平線に近い星ほど、よくまたたく


Photo: XS Xue / Unsplash
またたきの強さは、いつも同じではありません。空気が安定しているときは、ゆらぎが小さくなります。だから、またたきは弱くなります。
見る方向でも変わります。地平線に近い星は、真上の星よりも、よくまたたいて見えます。地平線に近い星の光は、長い距離の空気を通ってくるからです。
NASAの解説も、同じことを書いています。地平線の近くの星と自分のあいだには、高い所の星よりずっと多くの空気があるのです。
同じようなことは、夜景でも起こります。街灯の光が目に届くときも、星と同じようにきらきらします。
風がふいたり、ビルなどの熱気で上へ向かう風ができたりします。すると、空気の密度が時間とともに変わり、明かりがきらきらして見えるのです。
天文台は、空気のゆらぎとたたかう


画像: NOIRLab/AURA/NSF / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)
星を調べる人にとって、空気のゆらぎはやっかいものです。天文台で鮮明な写真をとるときは、建物や地面から出る熱による空気のみだれが影響します。
そこで、天文台は山頂に置いて、地面の影響を少なくします。寒くても、ストーブは使わないようにします。街に近い山では、街灯やネオンサインもじゃまです。だから、人里はなれた山の上がよいのです。
それでも、ゆらぎからは、のがれきれません。国立天文台によると、標高4000mで空気がうすいマウナケア山頂でも、例外ではありません。
ここにあるすばる望遠鏡は、天体の細かい形を見分ける高い力を持っています。それでも、大気のゆらぎがじゃまをするのです。
そこで使われるのが、補償光学という仕組みです。目印にする星の明るさが、大気のせいで刻々と変わるようすを見はります。そして光のみだれを計算して、すぐに直すのです。
近くに目印の星がないときは、強いレーザーを空に向けて出します。高さ90kmの空気の中にあるナトリウムの原子を光らせて、人工の「星」をつくります。これを作る仕組みを、レーザーガイド星生成システムといいます。
空気の外へ出てしまう方法もあります。ハッブル宇宙望遠鏡は、高さ600kmの真空の中にあるので、大気の影響をまったく受けません。
ラティスさんも、空気のない月から見ると、星はまったくまたたかないと話しています。
明るさが本当に変わる星もある
ここまでの話では、ちかちかのもとは、地球の空気でした。ただし、明るさが本当に変わる星もあります。大阪大学の解説によると、こうした星は変光星と呼ばれます。
たとえばパルサーと呼ばれる星は、中性子星が自転しているため、明るさが周期的に変わります。
2023年に発表された別の研究
2023年に、ノースウェスタン大学のチームが計算で調べた研究があります。この研究では、星そのものにも、生まれつきのかすかな「またたき」があると考えられています。
研究の発表文によると、星の表面のガスの波が、生まれつきのまたたきを起こすと考えられています。ただし、今の地上の望遠鏡では感じとれないとみられています。
チームは、重い星の中心から表面へ、エネルギーが波のように伝わるようすを計算しました。重い星とは、太陽の約1.2倍以上の質量をもつ星のことです。こうした星では、ガスがかきまざる対流の層が、中心にあります。
研究を率いたのは、エヴァン・アンダースさんです。アンダースさんによると、この波によるまたたきはとてもかすかで、目では見えないと考えられています。将来の強力な望遠鏡なら、見つけられるかもしれないと話しています。
論文は、2023年7月27日に学術誌「Nature Astronomy」に掲載されました。重い星では、明るさの細かいゆらぎが、どこにでも観測されています。その原因は、中心の対流が起こす波ではないかという仮説がありました。
ところが計算では、波による明るさの変化は、観測されたゆらぎより小さくゆっくりだと考えられました。そのため論文は、観測されているゆらぎは別の仕組みで生まれているはずだと推論しています。まだ確かめられていない話です。
チームは、波の周波数を一様に上げて、耳で聞こえる音にもかえています。
夜空のちかちかは、星からの合図ではなく、星の光が通ってきた空気の動きを映したものでした。地平線の近くの星と真上の星を見くらべると、頭の上の見えない空気の動きを、少しだけ感じられるかもしれません。



月から星を見たら、本当にまったくまたたかないの?
ウィスコンシン大学マディソン校のラティスさんは、空気のない月から見ると、星はまったくまたたかないと話しています。地球では、星の光がたくさんの空気を通って目に届くからです。
記載されている箇所: ウィスコンシン大学マディソン校の解説



空気が落ち着いている夜なら、星はまたたかなくなるの?
大阪大学の解説は、空気が安定しているときはゆらぎが小さくなるので、またたきは弱くなると書いています。またたきがなくなるとは書いていません。
記載されている箇所: 大阪大学の解説



補償光学を使えば、空気のゆらぎはなくなるの?
国立天文台の解説は、補償光学で大気のゆらぎをその場で補正し、すばる望遠鏡が本来の見分ける力を出せると書いています。ゆらぎがどこまで残るかは書かれていません。
記載されている箇所: 国立天文台の解説




参考文献:
主な資料: 大阪大学 理学研究科・理学部 Q&A, なぜ夜景や星はキラキラ点滅してるように見えるのですか?(PDF)
主な資料: University of Wisconsin–Madison News, Curiosities: Why do stars appear to twinkle in the night sky?(2010年11月1日)
基礎知識: NASA StarChild, Why do stars twinkle?(2000年10月)
基礎知識: 国立天文台「宇宙と光のこと」, レーザーで星をつくる(2015年11月24日)
別の研究: Anders et al., The photometric variability of massive stars due to gravity waves excited by core convection(Nature Astronomy, 2023)DOI:10.1038/s41550-023-02040-7
別の研究の発表文: Northwestern Engineering, What Does a ‘Twinkling’ Star Sound Like? Take a Listen.(2023年7月27日)
アイキャッチ画像: Photo: Nathan Anderson / Unsplash









