SNSを長く使う人ほど、孤独を感じやすい——そんな調査結果が、アメリカの大学生約6万5千人を対象にした研究から報告された。
数字のインパクトは大きい。だが同時に、この研究はもう一つ大切なことを教えてくれる。「関連がある」ことと「原因である」ことは、まったく別だということだ。
シンシナティ大学とインディアナ大学のチームが2026年に学術誌『Journal of American College Health』に発表したこの調査を、数字の中身と、その正しい読み方まで含めて追いかけてみよう。
6万5千人の大学生のデータ

全米の健康調査を使った
調査は、全米の大学で行われている健康調査(ACHA-NCHA)の2022〜2023年のデータを使った二次分析だ。
対象は18〜24歳の学部生64,988人。年齢や性別などの影響を差し引く統計の手法(調整済みロジスティック回帰)で、SNSの利用時間と孤独の関係を調べた。
孤独は、若者にこそ重い
「孤独は高齢者のもの」という思い込みがあるかもしれないが、実は世界的な調査は逆を示している。
メタとギャラップが142か国で行った2023年の調査では、「とても」または「かなり」孤独だと答えた人は、19〜29歳で27%と最も多く、15〜18歳も25%だった。
65歳以上は17%だった。孤独は、むしろ人生の入り口に立つ若い世代にこそ重くのしかかっている。この調査の対象がまさに大学生だったことは、偶然ではないのだ。
6万5千人が示した「使うほど孤独」の階段

使いすぎのグループで高かった
本題のSNSとの関係を見ていこう。研究チームは、学生たちのSNS利用時間を尋ね、週16時間以上——1日ならおよそ2時間以上——使う人を「使いすぎ」のグループとして切り分けた。
このグループに当てはまったのは、回答者のおよそ13パーセントだった。
そのうえで、SNSをまったく使わない学生と比べると、使いすぎのグループは孤独を報告する見込み(オッズ)が高かった。
論文の結論は「使いすぎの大学生は、孤独を経験する見込みが高い」というものだ。
16時間は「使いすぎ」の定義
16時間という数字は、研究者が「使いすぎ」を定義するために引いた線だ。そこで何かが急に変わるという意味ではない。
でも「SNSが孤独の原因」とは言えない

矢印は、逆にも引ける
さて、ここがこの記事でいちばん伝えたいところだ。「使う時間が長い人ほど孤独を感じやすい」という関連は確かに見えた。
では、SNSが孤独を生んでいる、と結論してよいのか。答えは「まだ言えない」である。理由は、この調査の作りにある。
これは、ある一時点で大勢の学生に一斉にアンケートを取り、その場のスナップショットを分析したものだ。
時間を追って「先にSNS漬けになり、あとから孤独になった」といった前後関係までは追いかけていない。つまり、どちらが先でどちらが後か、この調査だけでは決められないのだ。
考えてみれば、逆向きの筋書きも十分あり得る。すでに孤独を抱えた学生が、その寂しさを紛らわせようとSNSに長い時間を費やしている——そう考えても、同じ「使うほど孤独」というデータになる。
SNSが孤独を招いているのか、孤独がSNSへ向かわせているのか。実際には両方が少しずつ絡み合っているのかもしれない。
効果の大きさは、意外と小さい
もう一つ、冷静に見ておきたいのが「効果の大きさ」だ。
英米の約35万5千人を分析した2019年の研究では、デジタル機器の利用が若者の幸福度のばらつきを説明する割合は、わずか0.4パーセントほどにとどまった。
研究者たちは、その影響の小ささを、眼鏡をかけていることのほうが幸福度との関連が強く、じゃがいもを日常的に食べることともほぼ同じくらいだ、と比べてみせた。
SNSと心の状態のあいだに関連はある。だがそれは、生活を左右するほど巨大なものではなく、睡眠や運動といったほかの要因のほうが、はるかに大きく効いている。
この「桁の感覚」を持っておくことが、不安に振り回されないための盾になる。
なぜ画面は、人を寂しくさせうるのか

他人の「ハイライト集」を浴びる
因果は決着していない。それでも、SNSが孤独感と結びつく道筋そのものは、これまでの心理学の研究からいくつか見当がついている。
ここからは、今回の調査そのものの結果ではなく、関連する研究が示してきた一般的な知見として読んでほしい。よく挙げられるのが、社会的比較だ。
人は無意識のうちに自分と他人を見比べる。SNSに流れてくるのは、旅行や食事や仲間との集まりといった、いわば他人の「ハイライト集」である。
編集された楽しげな断片ばかりを浴び続けると、「みんな充実しているのに、自分だけ取り残されている」という感覚が育ちやすい。
この「取り残される不安」は、心理学で名前がつけられているほど、SNS時代に広く共有された感情だ。
「眺めるだけ」が効いてくる
もう一つ、使い方の質を指摘する研究の流れもある。
自分から投稿したりメッセージを送ったりする能動的な使い方と、ただ他人の投稿を眺め続ける受動的な使い方を分けて考えると、後者、つまり黙って見ているだけの時間が長いほど、比較や羨望を招いて気分を下げやすいという見方だ。
ある実験では、受け身でSNSを眺める時間が、妬みの感情を介して、その後の気分を下げることが示されている。
ただし、この能動・受動の線引きは大まかすぎるという批判もあり、能動的な利用でも孤独と結びつくという新しい報告も出てきている。
ここも、まだ議論の途中にある。
数字が指し示す、ささやかな処方箋

「1日30分」で変わった実験
では、SNSを減らすと何か変わるのか。
ペンシルベニア大学の学部生143人を対象にした2018年の実験では、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットの利用をそれぞれ1日10分までに制限したグループで、3週間のうちに孤独感や気分の落ち込みがはっきり減った。
制限しなかったグループでも、利用時間を記録するだけで不安や「取り残される不安」は減っていた。
時間より、つながりの質
そして、忘れたくないのは「一人でいること」と「孤独」は別物だということだ。
趣味に没頭したり、本を読んだり、体を動かしたり——自分一人の時間を楽しめる力があれば、たとえSNSと距離があっても寂しさに飲まれにくい。
他人のハイライトを追う時間を、自分の毎日を耕す時間に少し振り向ける。派手な結論ではないけれど、6万5千人の数字の向こうから見えてくるのは、案外そんな地に足のついた話なのかもしれない。
「使うほど孤独」という関連は本物。でも原因かどうかは未決着で、孤独だからこそSNSに向かう、という逆向きもあり得る。
だから犯人扱いより、つながりの質を見直すほうが建設的なんだ。
関連イコール原因じゃない、ってちゃんと分けて考えるの大事だね。まずは受け身のダラ見を、ちょっと減らしてみようっと!
参考文献:
一次ソース: Hill, Merianos et al., Exploration of excessive social media use with loneliness among U.S. College students(Journal of American College Health, 2026)
関連研究: Orben & Przybylski, The association between adolescent well-being and digital technology use(Nature Human Behaviour, 2019) / Verduyn et al., SNSの能動的・受動的利用と幸福感(Current Directions in Psychological Science, 2022) / Hunt et al., No More FOMO: Limiting Social Media Decreases Loneliness and Depression(Journal of Social and Clinical Psychology, 2018) / Meta-Gallup, The Global State of Social Connections(2023)









