はかせ、集中力が上がるサプリって、体にいいんだよね?
それが、そうとも限らないんです。実は27万人以上を調べた研究で、チロシンというアミノ酸が男性の寿命を縮めるかもしれないという結果が出たんですよ
チロシンは、肉や魚、大豆製品に多く含まれるアミノ酸だ。脳内でドーパミンやノルアドレナリンの材料になるため、「集中力が上がる」「やる気が出る」とうたってサプリメントとしても人気が高い。ところが、血液中のチロシン濃度が高い男性は、低い男性に比べて寿命が短い傾向があることが分かった。
27万人の血液データが明かした意外な関係


イギリスの大規模データベースを解析
この研究を行ったのは、アメリカ・ジョージア工科大学のトーマス・ラベンジ博士らのチームだ。研究チームは、イギリスのUKバイオバンクという巨大な健康データベースを使い、27万8,685人の血液サンプルを分析した。
UKバイオバンクには、40歳から69歳のイギリス人の遺伝情報、血液データ、生活習慣、病歴などが詳しく記録されている。研究チームはこのデータを平均12.5年間追跡し、血液中の約240種類の代謝物質と寿命の関係を調べた。
チロシン濃度が高いと寿命が短い傾向
分析の結果、男性では血液中のチロシン濃度が高いほど、死亡リスクが上昇することが判明した。特に、心血管疾患による死亡リスクが顕著に高かった。一方、女性ではこうした関係は見られなかった。
つまり、同じようにチロシンを摂取していても、男性と女性では体への影響がまったく違う可能性があるということだ。この性差がなぜ生まれるのかは、まだ完全には解明されていない。
ショウジョウバエでも同じ結果が
人間のデータだけでは偶然かもしれない。そこで研究チームは、ショウジョウバエを使った実験も行った。ショウジョウバエは寿命が短く、遺伝子操作もしやすいため、老化研究でよく使われる。
ハエの餌にチロシンを加えたところ、オスのハエの寿命は明らかに短くなった。一方、メスのハエには影響がなかった。この結果は、人間で見られたパターンとぴったり一致する。
なぜチロシンが男性の寿命を縮めるのか


代謝経路の違いが鍵を握る
チロシンはもともと体に必要なアミノ酸だ。神経伝達物質の材料になるだけでなく、タンパク質を作るときにも使われる。それなのに、なぜ寿命を縮める方向に働くのだろうか。
研究チームは、代謝経路の違いに注目している。チロシンは体内でさまざまな物質に変換される。その過程で生まれる物質の中に、心臓や血管に負担をかけるものがある可能性がある。
たとえば、チロシンから作られるドーパミンは、やる気や集中力に関わる重要な神経伝達物質だ。だが、ドーパミンが酸化されると、活性酸素という細胞にダメージを与える物質が生まれる。活性酸素は老化や病気の原因になることが知られている。
男女で代謝の仕方が違う
では、なぜ女性には影響がないのか。これはホルモンの違いが関係していると考えられている。女性ホルモンのエストロゲンには、抗酸化作用があることが分かっている。つまり、活性酸素によるダメージから体を守る働きだ。
男性にはエストロゲンがほとんどないため、チロシンの代謝で生まれた有害物質の影響をまともに受けてしまう。これが性差の原因ではないかと、研究チームは推測している。
プロテインやサプリを飲む人は要注意
チロシンは肉や魚、卵、大豆製品など、タンパク質が豊富な食品に多く含まれる。普通の食事で摂る分には、過剰摂取になることはまずない。
だが、プロテインパウダーやアミノ酸サプリメントを日常的に飲んでいる人は話が違う。特に、集中力アップをうたった「スマートドラッグ」や「ノートロピック」と呼ばれるサプリには、チロシンが高濃度で配合されていることが多い。
研究チームは、こうしたサプリを長期間飲み続けることのリスクについて、もっと調査が必要だと警鐘を鳴らしている。
今後の研究と私たちができること


因果関係の解明はこれから
今回の研究は、あくまで「チロシン濃度が高い男性は寿命が短い傾向がある」という相関関係を示したものだ。チロシンが直接の原因なのか、それとも別の要因が隠れているのかは、まだ断定できない。
たとえば、チロシン濃度が高い人は、もともとタンパク質を大量に摂る食生活をしているかもしれない。あるいは、特定の遺伝的体質を持っているのかもしれない。こうした可能性を排除するには、さらに詳しい実験が必要だ。
臨床試験で介入効果を確かめる
次のステップは、介入試験だ。これは、参加者を2つのグループに分け、一方にはチロシンを多く含む食事やサプリを与え、もう一方には与えないで、健康状態を比較する実験だ。
ただし、人間を対象にした介入試験には時間がかかる。寿命への影響を調べるには、10年以上の追跡調査が必要になる。動物実験で仕組みを詳しく調べながら、並行して人間のデータも集めていくことになるだろう。
サプリは本当に必要か考え直そう
今すぐ私たちができることは、サプリメントへの依存を見直すことだ。「集中力が上がる」「疲れが取れる」といった宣伝文句に惹かれて、何種類ものサプリを飲んでいる人は多い。だが、そのすべてが本当に必要なのか、一度立ち止まって考えてみる価値がある。
普通の食事で摂れる栄養は、食事から摂るのが基本だ。サプリはあくまで「補助」であって、主役ではない。特に、アミノ酸を高濃度で摂取するタイプのサプリは、長期的な安全性がまだ十分に検証されていないものも多い。
じゃあ、プロテインも飲まないほうがいいのかな?
普通の量なら問題ないと思いますよ。ただ、何杯も飲んだり、チロシンを単独で摂るサプリを併用したりするのは、今のところ避けたほうが無難かもしれませんね
健康のためにサプリを飲んでいるつもりが、逆効果になっていたら本末転倒だ。この研究は、「多ければ多いほどいい」という考え方に疑問を投げかけている。バランスの取れた食事と適度な運動、十分な睡眠。結局のところ、健康長寿の秘訣は昔から変わらないのかもしれない。
参考文献:
Popular brain supplement linked to shorter lifespan in men
出典: ScienceDaily
アイキャッチ画像: Photo by Daniel Dan on Unsplash










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