英グラスゴー大学などの研究チームが、医学誌『PLOS Medicine』に2026年7月2日付で論文を発表した。
英国の大規模コホート研究「UK Biobank」の参加者91,292人を追った観察研究だ。
手首の加速度計で測った座位のうち、30分以上途切れずに続いた時間(連続座位)が1日1時間長いごとに、がんによる死亡のハザード比は1.09だった。
一方、短く区切られた座位(中断座位)が長い人ほど、リスクは低かった。ただし観察研究なので、座り方ががんの原因だとは言えない、と著者ら自身が書いている。
研究を率いたのはグラスゴー大学のFrederick K. Ho氏らで、資金は米国がん協会と米国立衛生研究所(NIH)が出している。
キク途中でちょっと体を動かしたら、もう続けて座ったことにはならないのかな?
30分以上続く座位と、がん死亡との関連


研究チームは、30分以上続き、その90%以上の時間を座って過ごしたまとまりを「連続座位」、30分未満か、10%を超える時間で体を動かしていたまとまりを「中断座位」と定義した。
年齢・性別・民族、地域の貧困度、学歴、喫煙、飲酒と食事を補正したモデルでは、連続座位が1日1時間長いごとに、がんによる死亡のハザード比は1.09(95%信頼区間 1.06〜1.11)だった。
がんの罹患全体では1.03、肥満関連がんと2型糖尿病関連がんではそれぞれ1.05だった。
反対に、中断座位が1日1時間長いごとに、がんによる死亡のハザード比は0.82(95%信頼区間 0.78〜0.86)で、がんの罹患全体、肥満関連がん、2型糖尿病関連がんでもリスクが低い側だった。
ただし、これは中断座位の多い人ほどリスクが低かったという関連だ。
統計モデルで連続座位1時間を中断座位1時間に置き換えた場合の推定は、がん死亡のハザード比0.97(同0.87〜1.08)で、はっきりした差は見られなかった。
なお、座位を種類で分けずに合計で見ても、1日1時間長いごとにがんによる死亡のハザード比は1.12で、リスクが高い側だった。
そのうえで著者らは、座位を連続と中断に分けると関連の向きが分かれることから、がんリスクと関連するのは連続座位だと結論づけている。
30分という区切りは、これまでのランダム化比較試験やコホート研究でよく使われる定義に合わせて決めたもので、今回のデータから見つけた境目ではない。
連続座位とがんの関連は、調べた範囲でほぼ直線的で、中断座位では、少ない範囲ほどリスクの下がり方が大きく、多くなると頭打ちになる傾向だった。





座る時間を30分以上の連続と短く区切ったものに分けると、がんとの関連の向きが分かれるんだね。
91,292人を12年以上追ったUK Biobankコホート


データ源は英国のコホート研究「UK Biobank」だ。2013〜2015年に、参加者は利き手の手首に加速度計を7日間着けた。
有効なデータがあり、がんの病歴がない91,292人を、中央値12.38年(四分位範囲11.56〜13.15年)追跡した。
参加者の56.0%が女性で、平均年齢は56.0歳だった。
加速度計の記録は、ランダムフォレストという機械学習の手法を使った2段階の分類器で、10秒ごとに座位、軽い活動、中強度の活動、高強度の活動に分けた。
以前の検証では、座位と判定したときの的中率は0.88、座位でないと判定したときの的中率は0.97だった。
自己申告ではなく機器で測るため、思い出し違いや申告の偏りを受けにくいことを、著者らは強みに挙げている。
解析にはCox比例ハザードモデルを使い、年齢・性別・民族、地域の貧困度、学歴、喫煙、飲酒と食事(砂糖、加工肉、赤身肉、果物と野菜、脂の多い魚)を補正した。
BMIと持病の数をさらに補正した解析や、追跡の最初の2年を除いた解析でも、結果の傾向は大きく変わらなかった。23の部位別のがんについても、それぞれ解析している。
連続座位を体を動かす時間に置き換えた場合の推定
研究チームは「等時間置換モデル(isotemporal substitution)」という方法も使った。
1日24時間の中で、連続座位のある時間を、ほかの行動に同じ時間だけ置き換えたとき、リスクがどう変わるかを推定する統計モデルだ。
実際に人に行動を変えてもらった試験ではなく、観察データからの推定である。
連続座位1時間を軽い活動(家事のような日常の動きや、時速3マイル未満のゆっくり歩き)に置き換えると、がん死亡のハザード比は0.88(95%信頼区間 0.79〜0.99)、30分を中強度の活動(時速3〜4マイルの歩行)に置き換えると0.92(同0.86〜0.99)と推定された。
5分を高強度の活動(速歩きやランニングなど)に置き換えた場合は0.78だったが、信頼区間が0.46〜1.30と広く、統計的にはっきりした差ではなかった。
がんの罹患で見ると、5分の高強度の活動への置き換えで、2型糖尿病関連がんのハザード比が0.89と最も低かった。
著者らは、高強度の活動はほとんどの人、とくに座っている時間が長い人には難しいかもしれないと書いている。そうした人は高齢で、体が弱っていたり、複数の持病を抱えていたりすることが多いからだ。
そのうえで、軽い活動への置き換えのほうが現実的な目標になりうるとし、軽い活動もがんリスクの低さと関連していたと述べている。


部位別のがんでの結果


研究では、肥満関連がん(食道・肝臓・腎臓・骨髄腫・膵臓・大腸・胆のう・乳・卵巣・甲状腺)と、2型糖尿病関連がんをまとめた指標も調べた。
部位別には23種類のがんを個別に検討し、乳がん、肺がん、口唇・咽頭・喉頭のがん、非ホジキンリンパ腫、白血病で、全体と同じような関連が見られた。
たとえば乳がんでは、連続座位1時間あたりのハザード比が1.04、中断座位では0.92だった。
仕組みについて著者らは、これまでの実験研究を挙げている。長い座位を軽い運動や中くらいの運動で短く区切ると、食後の血糖とインスリンの上昇が抑えられることが、交差試験で示されている。
長い座位は慢性の弱い炎症や免疫の働きの低下とも関係するとされる。著者らは、肝臓や筋肉など脂肪組織以外にたまる脂肪や、インスリンとIGF-Iの働きの高まりも経路の候補に挙げている。
ただし、今回の研究ではこうした仕組みは調べておらず、今後の課題だとしている。
肥満かどうかで関連が変わるかも調べたが、合計の座位や連続座位と、BMIやウエストなどで見た肥満との間に、統計的に有意な交互作用はなかった。
これまでの研究との違い
座位時間とがんの関連は、以前から研究されてきた。加速度計を使った研究でも、米国の中高年8,002人の研究で、合計の座位時間と1回の座位の長さがともにがん死亡の高さと関連していた。
欧州の7,671人の研究では、長いまとまりで座る人ほどがんの罹患が多かった。そのうえで、中断座位と連続座位を分けて、がんとの関連の違いを示したのは今回が初めてだと著者らは述べている。
現在の座位行動の指針は、主に座っている合計時間を重視している。一方で、長い座位を活動で区切ることを勧めている保健機関もいくつかある、と論文は紹介している。
また、軽い活動は質問票では測りにくいこともあって、現在の身体活動の指針には含まれていないと著者らは指摘する。
著者らは「現在の健康指針は中強度や高強度の運動に重点を置いているが、私たちの結果は、軽い動きも見過ごすべきではないことを示している。今後は臨床試験によって、一律の助言を超え、座っている時間を区切るための一人ひとりに合った方法を作っていけるだろう」とコメントしている。
相関はある、しかし「原因」と断定はできない
今回の研究は観察研究で、ランダム化比較試験(RCT)ではない。連続座位が長い人ほどがんで亡くなるリスクが高いという関連は見られたが、連続座位ががんを引き起こすとは言えない。
著者らは、いくつかのハザード比は大きさが控えめで、個人の臨床判断のレベルで深読みすべきではないとも書いている。
論文が挙げる限界は次のとおりだ。まず、測りきれていない要因(交絡)が残る可能性がある。とくに、体の弱りや、動きを制限する持病は大きな交絡要因になりうる。
著者らは持病の数を補正してこれを減らそうとしたが、座りすぎ自体が持病を招くこともあるため、補正しすぎによる偏りが生じるおそれもあるという。
次に、UK Biobankの参加者は英国の人口を代表しておらず、健康な人が参加しやすい偏り(健康ボランティアバイアス)があり、一般の人より活動的だ。
参加者を集めたときの回答率は5.5%だった。
また、加速度計を着けたのは7日間だけで、長い期間のふだんの過ごし方を表しているとは限らない。仕事中か、テレビを見ているのか、運転中なのかといった、座っているときの状況もわからない。
同じUK Biobankの以前の研究では、自己申告のテレビ視聴はがんリスクの高さと関連したが、運転やパソコンの使用では関連しなかったという。



座り方を変えたら本当にがんで亡くなるリスクが下がるのか、これからどうやって確かめるんだろう?
次は介入研究での確認
著者らは、連続座位を多くとる人が、今後の対策の重要な対象になりうるとしている。そのうえで、今回の結果は介入研究で確かめる必要があると結論で書いている。
座る時間が長い人は多いので、控えめな関連でも公衆衛生上は意味を持ちうるが、費用のかかる対策を勧めるには、費用対効果の正式な分析が必要だという。
参考文献:
一次ソース: Zhou Z, Trost SG, Ryde GC, Parra-Soto S, Fang Z, Xu C, et al. Accelerometry-measured prolonged and interrupted sedentary behavior and cancer incidence and mortality: A cohort study of 91,292 UK Biobank participants(PLOS Medicine, 2026; 23(7): e1004767)DOI: 10.1371/journal.pmed.1004767
論文本文: PMC13327276(PubMed Central)
研究機関: グラスゴー大学(英国)/ プレスリリース: ScienceDaily(PLOS提供、2026年9月2日)









