MENU
  • テクノロジー
  • 人体・医学
  • 宇宙・天文
  • 歴史・考古学
  • 生き物・自然
  • 検索 🔍
Shirmee/シルミー
知りたいを満たす
  • テクノロジー
  • 人体・医学
  • 宇宙・天文
  • 歴史・考古学
  • 生き物・自然
  • 検索 🔍
Shirmee/シルミー
  • テクノロジー
  • 人体・医学
  • 宇宙・天文
  • 歴史・考古学
  • 生き物・自然
  • 検索 🔍
  1. ホーム
  2. 歴史・考古学
  3. アイスマンの腸から蘇った酵母! 5300年ぶりに焼いたパンは絶品だった

アイスマンの腸から蘇った酵母! 5300年ぶりに焼いたパンは絶品だった

2026 7/12
歴史・考古学
2026年7月5日2026年7月12日
🕑この記事は約10分で読めます
シルミー

はかせ、5300年前のミイラから酵母が見つかって、それでパンを焼いたって本当なの?

はかせ

正確には、アルプスの氷河で眠っていたアイスマン「エッツィ」の遺体から4種類の酵母が見つかって、それを育てたらパン作りに使える見込みが出てきた、という話なんですよ

2026年、イタリア北部のユーラック研究所(Eurac Research)のチームが学術誌『Microbiome』に発表した研究がある。凍りついた5000年前の遺体から、いまも生きている酵母が引き出せたという内容だ。しかも、その酵母を育てて発酵に使ったところ、材料が小麦粉と水と塩だけのサワードウを焼ける見込みがあることが予備的な試作で示された。ただし後で触れるように、見つかった酵母はパン作りのために飼われていた「パン酵母」ではなく、氷河のような冷たい環境に暮らす種類だ。そこがこの研究の面白さでもあり、慎重に読むべきポイントでもある。

目次

氷河から現れた5300年前の凍った男

アルプスの氷河の風景

登山者が偶然見つけた「アイスマン」

物語は1991年9月、オーストリアとイタリアの国境にあるエッツ渓谷から始まる。氷河をハイキングしていたドイツ人登山者が、氷から突き出した人間の頭と肩を見つけた。最初は最近の遭難者かと思われたが、慎重に掘り出してみると、そこにいたのは5300年以上前の男性の遺体だった。エジプトのピラミッドが建てられるより前、まだ人類が青銅を本格的に使い始める前の新石器時代を生きた人物である。

発見場所にちなんで「エッツィ(Ötzi)」、そして「アイスマン」の愛称で呼ばれるようになった。現在はイタリア北部の南チロル自治州、ボルツァーノの博物館で保管されている。博物館では遺体を良い状態に保つため、専用の低温室でおよそマイナス6度に保たれた環境で管理されている。氷河が数千年やってくれた冷凍保存を、いまは人の手で引き継いでいる格好だ。

氷河が守った奇跡の全身

エッツィがこれほど完全な形で残っていた鍵は、その保存環境にある。彼が横たわっていたのは標高の高い氷河の窪みで、遺体は凍結乾燥に近い状態が続いた。皮膚も内臓も、そして胃腸の中身までもがそのまま冷凍保管されてきたのだ。これは考古学的にとてつもない幸運だった。ふつう5000年も経てば、遺体の中の柔らかい組織はとっくに土に還る。ところがエッツィの場合、当時の食生活そのものが「タイムカプセル」として封じ込められていた。

その後の詳細な調査で、エッツィは背中に矢を受けて命を落としたことが分かった。誰かに襲撃されたのか、争いに巻き込まれたのか、真相は今も謎のままだ。だがこの突然の死のおかげで、彼はほとんど痛みや損傷を受けないまま氷河に埋もれ、後の人類にとって最高の研究対象になった。これまでにエッツィのゲノム解読、最後の食事の内容、腸内の寄生虫、皮膚に彫られた61箇所のタトゥーの位置まで、細かく分析されてきた。最後の食事にはアカシカの肉、アイベックスの肉、そして粒がまだ残る単粒コムギの粉が含まれていた。狩猟採集と初期の穀物栽培が交差する時代の食卓が、そのまま胃の中に残っていたわけだ。今回の酵母の話は、その積み重ねの最新の1ページになる。

遺体から見つかった4種類の氷河の酵母

焼きあがったサワードウブレッド

皮膚・胃・融解水から採れた4種の酵母

2026年、ユーラック研究所のモハメド・サルハン博士とフランク・マイクスナー博士のチームは、エッツィの遺体を最新のDNA解析技術で調べ直した。目的は、これまで細菌ばかり注目されてきた古代人の微生物の世界の中に、真菌類つまり酵母やカビが残っていないかを探ることだった。調べたのは腸の内容物だけでなく、皮膚の表面や胃、さらに遺体から溶け出した融解水にまで及んだ。その結果、4種類の酵母が見つかった。

見つかった酵母はグラシオザイマ(Glaciozyma)やムラキア(Mrakia)といった、氷河や南極のような冷たい環境に暮らす「低温適応酵母」の仲間だった。パン作りに使われるパン酵母(サッカロミセス)とは別のグループだ。研究チームは、これらの酵母がエッツィの生前から体に住んでいたわけではないと結論している。手がかりはDNAの傷み具合だ。今回の酵母のDNAは、他の古代の微生物と同じくらい古い壊れ方をしていた。現代の実験室で紛れ込んだ汚染菌ならDNAはもっと新しくきれいなはずで、そうではなかったことから、エッツィが亡くなった後に氷河の環境から遺体へ入り込んだ古い酵母だと判断された。つまり「アイスマンの生きた腸内フローラの一員」ではなく、「氷河の中で遺体とともに眠っていた酵母」というわけだ。それでも、数千年前の氷河に閉じ込められた酵母がいまも生きていたという事実の重みは変わらない。

冷蔵庫の中で「起こす」古代の生き物

面白いのはここからだ。研究チームは検出された酵母をDNAとして読み取るだけでなく、実際に培養して「生きた菌」として復活させることに挑戦した。冷凍状態から取り出した数千年前の胞子は、条件がそろえば発芽して増え始める可能性があるからだ。手法自体はシンプルで、酵母に栄養と水を与え、静かに揺り起こす。ただし最初の何回かは全く反応せず失敗した。温度、糖分、時間の与え方を細かく調整するうちに、やがて微かな泡が見え始め、酵母は再び分裂を始めた。数千年ぶりの生命活動である。

ここで注目したいのは、氷河という天然の冷凍庫が持つ保存力の高さだ。低温適応酵母はもともと冷たい環境で生き抜くようにできているとはいえ、数千年という途方もない時間を凍ったまま過ごし、それでも発芽して増える力を残していた。乾いた種が水を得て芽吹くように、時間だけが止まっていた小さな生き物が、現代の実験台の上で再び動き出したのだ。氷河や永久凍土が、微生物にとってどれほど強力なタイムカプセルになりうるかを示す一例だと言える。

「製パンに使える見込み」を予備的に示した

研究チームは、復活させた酵母がパン作りに使えるかどうかも試している。材料は小麦粉と水と塩、そして遺体から採れた酵母だけで、市販のイースト菌は足さない。3ヶ月にわたる試行錯誤の末、酸味のあるサワードウを焼くところまでこぎつけた。サルハン博士は「本当に、本当にいいサワードウができた」と語っている。ただしこれはあくまで予備的な試作で、氷河の低温適応酵母が通常のパン発酵にそのまま向いていると証明されたわけではない。今後の発酵産業への応用可能性を示した、最初の一歩と受け止めるのが正確だ。

それでもこの実験の意味は小さくない。古代の遺体から得た生きた酵母が、現代でも発酵の力を発揮しうることを実際に確かめた点で、微生物学と食品史の両方に新しい糸口を開いた。ただし発表はまだ査読の段階を経たばかりの新しい成果であり、他の研究室による再現や検証はこれから積み上がっていく。派手な話題性に引っ張られすぎず、「氷河に眠っていた微生物がいまも生きて残りうる」という発見の芯の部分を押さえておきたい。

3000年前の塩坑の坑夫と共通する「全粒粉と食物繊維」

古代の穀物と粉

研究チームはさらに、エッツィの腸内微生物の全体像を、他の古代人の腸内微生物と比較した。比較対象になったのは、オーストリア中部にあるハルシュタットの岩塩鉱で発掘された約3000年前の人糞化石だ。青銅器時代の坑夫たちが仕事場の奥で用を足していた場所から、化石化した便がまとまって見つかっていた。比較の結果、エッツィと塩坑の坑夫たちの腸内には、共通して食物繊維や全粒穀物の分解が得意な細菌が数多く住んでいた。

逆に言えば、彼らは現代のヨーロッパ人よりずっと粗い穀物や野菜を主食にしていたことになる。白いパンやパスタしか食べない生活とは、腸の中身が根本的に違ったわけだ。全粒の穀物や繊維質の多い野菜は、噛み砕いても腸まで届く成分が多く、それをエサにする細菌が腸内で栄えていたと考えられる。時代も地域も違うエッツィと塩坑の坑夫が、腸内細菌の顔ぶれという点で近かったのは、両者がともに「未精製の食べ物」を土台に暮らしていたからだ。

もう一つ印象深いのは、エッツィの腸内細菌の顔ぶれが、現代のアフリカや南米の先住民族のそれと似ていた点だ。工業化された食生活が広がる前の人類は、地域や時代を超えて、似たような腸内フローラを持っていたらしい。食べているものが腸の生態系をここまで左右するという事実は、現代の私たちの食卓を考えるうえでも示唆に富んでいる。

現代人の腸は「痩せた生態系」になっているのか

白いパン、精製された砂糖、加工食品。こうした「新しい」食べ物が定着する前は、私たちの祖先の腸内はもっとにぎやかで多様な菌の街並みだった。エッツィの5300年前の腸は、その街並みの最も鮮明な記録の一つになる。近年、腸内フローラの多様性が下がると、アレルギーや炎症性腸疾患、肥満のリスクが上がるという研究が積み重ねられている。

ただし「昔の人の腸に戻すこと」がそのまま健康法になるかは、慎重に見る必要がある。腸内環境は食事だけでなく気候・衛生・生活習慣が複雑に絡み合って決まるもので、単純に古代の食事を真似れば健康になるという単純な話ではない。それでも、現代人の腸が歴史的に見て「痩せた生態系」になっている可能性は、エッツィの腸からもはっきり読み取れる。過去の腸内を知ることは、いまの自分たちの体を映す鏡にもなるのだ。

5300年前の胞子から広がる研究の未来

今回の酵母復活は、単なる「珍しい実験」で終わらない可能性を秘めている。凍った遺体から生きた微生物を蘇らせる技術は、他のミイラや氷河の遺物、洞窟内の凍結遺物にも応用が効く。地球温暖化で永久凍土が溶け出し、閉じ込められていた古代の微生物が再び環境に出てくることが懸念されているが、そうした微生物を安全に調べる手法とも直接つながるテーマだ。さらに実用の面でも、5300年前の酵母を使ったパンやビールを、フードイベントや博物館の体験企画として提供する動きが出てくるかもしれない。「アイスマンが生きていた時代の空気を含んだパン」を、私たちが自分の口で味わえる日は、そう遠くない場所まで来ている可能性がある。5000年という時間の隔たりを、酵母という小さな生き物がひとまたぎにしてしまう——そんな不思議さこそ、この研究の一番の魅力だろう。

シルミー

5300年前のパン、食べてみたい! どんな味なのか想像がつかないよ〜

1991年に登山者がふと氷から突き出した肩を見つけた瞬間から、35年。氷河が守ってくれた1体の遺体が、ゲノム、食事、寄生虫、タトゥー、そして今回の生きた酵母まで、次々に「時間の凍結封」を解いていく。エッツィが眠りから覚めるたびに、私たちの祖先の暮らしがひとつずつ像を結び直していく。氷河に眠っていた小さな酵母から生まれた一片のサワードウは、古代と現代を結ぶ「時間の橋」になったのかもしれない。

はかせ

私も食べてみたいですね。氷河の中で眠っていた小さな酵母が、いつか私たちのキッチンでパンになるかもしれない。5000年前と今が、酵母を通してつながろうとしているんです

参考文献:
Fungal communities in the gut of the Iceman and their revival (Microbiome, 2026)
DOI: 10.1186/s40168-026-02417-6
Scientists find yeast in ancient Iceman’s guts—and make bread
出典: Phys.org / Eurac Research

ショート動画でも配信中!チャンネル登録よろしくね!
歴史・考古学
DNA解析 ミイラ 新石器時代 考古学 食物繊維
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
  • 死者の眼球を24時間保つ装置が完成! 眼球移植への大きな一歩
  • 深い眠りと成長ホルモンをつなぐ脳回路をマウスで発見! 筋肉・脂肪・脳との意外な関係

この記事を書いた人

シルミー編集者のアバター シルミー編集者

科学メディア「シルミー」の運営者。子供の頃から宇宙や生き物の図鑑を読みあさり、大人になった今も科学ニュースを追いかける日々。海外の学術メディアから面白い研究を見つけて、日本語でわかりやすく届けることをライフワークにしています。

関連記事

  • 4000年前の都市は『格差が縮んだ』! ヨーク大解析が覆す文明の常識
    2026年8月1日
  • 英で48万年前『ゾウ骨ハンマー』発見! 石斧を研ぎ直す古人類の職人技
    2026年7月28日
  • 人類の祖先は北アフリカ生まれ? エジプト17百万年前の化石が定説を覆す
    2026年7月25日
  • 恐竜絶滅の犯人隕石が『種類』まで判明! ニッケル同位体で追う指紋
    2026年7月18日
  • 巨石文明は誰かに消された? DNAが暴く5000年前の『住民総入替』
    2026年7月10日
  • 北海の海底クレーターは隕石痕だった! 24年論争に決着、津波100m超
    2026年7月1日
  • 火を「運んでた」原始人! 179万年前の南ア洞窟に残る焼けた骨
    2026年6月26日
  • T.rexは40年かけて巨大化! 化石17体の隠れた年輪が暴く成長物語
    2026年6月23日

コメント

コメントする コメントをキャンセル

人気記事
  • セロハンテープの「キーッ!」の正体は『超音速の衝撃波』だった
  • 大西洋の海底に500kmの裂け目! 途中で成長を止めた「谷」の意外な正体
  • がんを内側から狙う細菌の夢 『数を数えて一斉に動く』菌をつくる挑戦の最前線
  • 皆既月食の月はなぜ『血の色』になるのか 次に日本で見られるのは2029年元旦
  • アルツハイマーが銅で逆転!? 脳のゴミ排出を直したら記憶が44%回復
Shirmee

知りたいを満たす科学メディア

宇宙・テクノロジー・人体・歴史・物理・生物など幅広い科学トピックを、わかりやすく深掘り。最新の研究や発見を、知的好奇心を刺激する記事でお届けします。

カテゴリー
  • テクノロジー
  • 人体・医学
  • 宇宙・天文
  • 歴史・考古学
  • 生き物・自然

キャラクター紹介

シルミー
シルミー

はかせの実験で生まれたスライム。「なんで?」が口ぐせ。

はかせ
はかせ

なんでも知ってる博士。やさしく教えてくれる。

SNS

X YouTube Instagram TikTok
  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ

© Shirmee/シルミー.

目次
X YouTube Instagram TikTok