甘い飲み物は控えたほうがよいとされるが、果汁100%のジュースはどうなのか。
2026年6月にオンライン公開された米国心臓協会の学術誌『Circulation』の論文が、この問いに数字で答えている。
トロント大学とハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院などの共同研究だ。
米国の子どもと若者を最大25年追跡するGrowing Up Today Study(GUTS)というコホートの解析で、砂糖入り飲料や果汁を多く摂った人ほど、のちに高血圧と診断された人が多かった。
飲料の量は子どもの頃から大人まで繰り返し尋ねた累積平均で、子ども時代の分だけを切り出した結果ではない。
キク甘い飲み物を毎日何杯くらい飲む人で、大人になってからの高血圧が多くなるんだろう?
砂糖入り飲料を1日2杯以上飲む人で、高血圧が52%多かった


対象は25,749人(女性55%)で、1996年に始まったGUTS 1(16,875人)と2004年に始まったGUTS II(10,918人)の2つのコホートを合わせている。
参加者は、看護師健康調査IIの参加者の子どもたちで、全米から集められた。
登録時の平均年齢は12歳、追跡終了時は36歳。参加者は1〜4年ごとに、妥当性が確認された食物摂取頻度調査票(FFQ)に答えて飲料の摂取量を報告した。
高血圧は2010〜2021年の調査で、医療者に診断されたことがあるかを本人が答える形で調べている。
飲料の摂取量は、調査のたびに更新した累積平均で評価した。登録時(子どもの頃)の摂取量だけで調べた感度分析でも、結果はおおむね同じだった。
追跡期間は最大25年で、この間に1,625人(6.3%)が高血圧の診断を受けたと報告した。診断された年齢の中央値は36歳(四分位範囲32〜38歳)だった。
統計解析にはCox比例ハザードモデルを用いた。
身体活動、画面を見る時間、睡眠時間、喫煙、総エネルギー摂取量、果物や野菜、全粒穀物、赤肉・加工肉の摂取量などで調整し、さらにBMIを加えたモデルでも調べている。
砂糖入り飲料(SSB)を1日2杯以上飲んでいたグループは、週3杯未満のグループに比べて、高血圧と診断されるリスク(ハザード比)が52%高かった。
ハザード比は1.52、95%信頼区間は1.27〜1.83で、傾向のP値は0.001未満だった。
BMIを加える前のハザード比は1.61で、BMIを加えるとやや小さくなったが、有意な関連は残った。
1日1杯増えるごとでは14%高かった(ハザード比1.14、95%信頼区間1.07〜1.22)。
ここでのSSBは、炭酸飲料、フルーツパンチ・レモネード・アイスティーなどの果汁入り飲料、スポーツドリンクを含む。
1日2杯未満の各区分(週3杯〜1日1杯未満など)では、週3杯未満との差は有意ではなかった。


飲み物ごとにリスクの上がり方は違う


飲料の種類別の結果は次のとおり。1日1杯増えるごとの差と、摂取量が最も多いグループを最も少ないグループと比べた差が混ざっている。
| 飲料の種類 | 比較条件 | 高血圧リスクの増加 |
|---|---|---|
| 砂糖入り飲料(SSB)全体 | 1日2杯以上 vs 週3杯未満 | +52% |
| 炭酸飲料(ソーダ) | 1日1杯増ごと | +23% |
| スポーツドリンク | 1日1杯増ごと | +36% |
| 果汁全般 | 1日1.5杯以上 vs 週1杯未満 | +35% |
| オレンジジュース | 1日1杯増ごと | +20% |
| リンゴジュース・その他 | 1日1杯増ごと | 有意差なし |
SSBの1杯は12オンス(約355mL)の缶またはグラス1杯、果汁の1杯は8オンス(約237mL)のグラス1杯と定義されている。
スポーツドリンクは1杯増えるごとに36%高く、炭酸飲料の23%より大きかった。一方、フルーツパンチは高血圧との関連が見られなかった。
論文は、スポーツドリンクが健康によいものとして売られることが多い点に触れ、糖に加えてナトリウムを含むため、エネルギーの摂りすぎやナトリウムの蓄積、体液バランスの変化を通じて高血圧に関わる可能性があるとしている。
ただし、この研究でその仕組みを調べたわけではない。




果汁は量が多いと高血圧と関連した
果汁100%のジュースは、1日1.5杯以上飲むグループが、週1杯未満のグループより高血圧のリスクが35%高かった(ハザード比1.35、95%信頼区間1.06〜1.71)。
1日1杯増えるごとでは12%高いが、信頼区間は1.00〜1.25で、ぎりぎりの結果だった。
種類別では、オレンジジュースは1日1杯増えるごとに20%高かった(ハザード比1.20、95%信頼区間1.02〜1.41)。
一方、リンゴジュースとその他の果汁では関連が見られなかった。
論文は、この差を、オレンジ風味の砂糖入り飲料が子どもの頃にオレンジジュースとして報告された誤分類のためかもしれないと説明している。
そうだとすると、オレンジジュースの結果はSSBの結果に近い形で出ていることになる。
論文は用量の影響も議論している。果汁の摂取量と高血圧リスクの関係を描いた曲線はJ字に近く、少量では関連が見られず、多い量でリスクが上がる傾向があった。
ただし、この曲線が直線から外れていることは統計的には有意ではなかった(P=0.09)ので、傾向として読む必要がある。
シニア著者のヴァサンティ・マリク氏(トロント大学准教授)は「果汁の摂取は、少量なら無害でも、多量では有害になりうる」と述べ、飲むなら100%果汁にして、量は控えめにするよう勧めている。
果糖の総量は高血圧と関連しなかった


総フルクトース摂取量は、高血圧と関連しなかった。
摂取量が最も多い5分の1と最も少ない5分の1を比べたハザード比は1.07、95%信頼区間は0.92〜1.25で、統計的な有意差はなかった(BMIを加えたモデル)。
研究チームは、果糖を含む食品ごとに栄養素の組み合わせ(食品マトリックス)が違うことが、この結果の理由だろうと考えている。
丸ごとの果物は、1日1.5杯以上のグループでハザード比0.79(95%信頼区間0.59〜1.06)と、リスクが低い傾向にあったが、統計的に有意ではなかった。
論文は、果汁には果物に含まれる食物繊維やポリフェノールが少ないことを指摘している。
AHAのボランティア専門家で、テキサス大学サウスウェスタン医療センターのアミット・ケラ氏(予防循環器科部長)は、果糖の総量より、それを含む食品の種類のほうが高血圧には重要らしく、砂糖入り飲料と果汁はリスクと関連し、丸ごとの果物は関連しないと述べている。
ケラ氏はさらに「果糖全般が出どころを問わず心血管の健康に有害だという誤解や、果汁は健康によいという誤解があった。この研究は、どちらも正しくないらしいことを示している」と述べた。
1杯を置き換えたら何%減るか
研究チームは、1日1杯を別の飲食物に置き換えた場合のリスクの差を、統計モデルで推定している。実際に置き換えてもらった試験ではない。
- SSB 1杯を丸ごとの果物に置き換え → 22%減
- 果汁 1杯を丸ごとの果物に置き換え → 19%減
- SSB 1杯を牛乳に置き換え → 13%減、水に置き換え → 9%減
- 果汁 1杯を牛乳または水に置き換え → 有意な差なし
- SSB 1杯を果汁に置き換え → 有意な差なし
数字の上では、SSB1杯を水に替えた場合(9%減、95%信頼区間3〜15%)より、丸ごとの果物に替えた場合(22%減、同11〜31%)のほうが減り幅は大きかった。
牛乳への置き換えで差が出た理由について論文は、牛乳に含まれるカルシウム、カリウム、生理活性ペプチドが血管の働きを支えて血圧を下げる可能性があるためではないかとしている。
相関か因果か: この結果をどう読むか
この結果は、甘い飲み物が高血圧を引き起こしたことを示すものではない。
この研究は参加者を追跡して調べた観察研究で、無作為化比較試験ではない。研究チームも、残る交絡(調整しきれなかった要因)の影響は否定できないとしている。
論文が挙げる主な限界は次のとおり。
1つは食事の測定だ。食事は質問票で調べており、測定誤差や思い出し違いが入りうる。累積平均を使って減らしているが、完全には防げない。
2つめは自己申告だ。高血圧は本人が答えた診断歴で、BMIも自己申告の身長と体重から計算している。論文は、過去の検証研究で自己申告の高血圧とBMIの信頼性は高かったとしている。
3つめは参加者の偏りだ。参加者の96%が非ヒスパニック系の白人で、ほかの人種・民族の集団にそのまま当てはまるとは限らない。
ただしケラ氏は、非ヒスパニック系の黒人やヒスパニック系の米国人は砂糖入り飲料の摂取量が最も多いため、この結果はそれらの集団でいっそう重要かもしれないと述べている。
考えられる仕組み: 論文の考察から


この研究は仕組みを調べたものではないが、論文の考察では、いくつかの経路が挙げられている。以下は確かめられた因果ではなく、解釈の候補だ。
1つは体重だ。論文は、SSBと果汁は液体のカロリーで、固形の食品より満腹感を得にくく、次の食事でのエネルギーの補正が不十分になりやすいとしている。
体重の増加は高血圧の確立した危険因子だ。
2つめは果糖の代謝だ。果糖は多くが肝臓で代謝され、尿酸の産生が増える。尿酸が高くなると血管の内皮の働きが落ち、血圧が上がるとされる。
果汁については、少量ならビタミン、ミネラル、ポリフェノールの利点が、多量で現れる果糖や余分なエネルギーの悪影響を打ち消す可能性がある、と論文は考察している。
論文によると、8オンスのオレンジジュース1杯は、オレンジ約3個分に相当し、一度に食べる量より多い。
比較の基準は、砂糖入り飲料が週3杯未満、果汁が週1杯未満のグループだった。1日2杯未満の各区分では砂糖入り飲料のリスクに有意な差はなく、はっきり高かったのは1日2杯以上のグループだった。
果汁は1日1.5杯以上で高く、それ未満の各区分では有意な差がなかった。
研究チームは、この結果は、子どもの頃から砂糖入り飲料と果汁の摂りすぎを控え、丸ごとの果物を中心にするという食事指針を支持するものだとしている。



果汁100%でもたくさん飲む人は高血圧が多かったけど、それが原因とまではまだ言えないんだね。
参考文献:
一次ソース: Nguyen M, AlEssa HB, Glenn AJ, et al., Consumption of Fructose-Containing Food and Beverage Sources in Childhood Through to Adulthood and Risk of Hypertension: A Prospective Cohort Study(Circulation, 2026) DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.125.077666
論文本文(著者原稿): PubMed Central
研究機関: トロント大学 Temerty Faculty of Medicine / ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院 / 発表資料: ScienceDaily(米国心臓協会の発表)









