ねぇはかせ、下着に付けておならを測る装置ができたって聞いたんだけど…そんなの測って、いったい何の役に立つの?
それがね、笑い話じゃないんだ。おならに含まれる水素は腸の中の微生物しか作らないから、それを測り続ければ、腸内細菌がいつ、どれくらい発酵しているかがわかるんだ。
健康な大人では1日に平均32回おならが出ていた、という結果も出ているよ。ただ、まだ少ない人数で調べた段階なんだ。
アメリカのメリーランド大学のチームが、下着にスナップで留めて、おならに含まれる水素を測り続ける小さな装置「スマート下着(Smart Underwear)」を開発し、2025年に学術誌『Biosensors and Bioelectronics: X』で発表した。
健康な成人38人の試験では、食物繊維の一種イヌリンをとったあとの水素の増加を、94.7%の感度でとらえた。
大学の発表によると、健康な成人のおならは1日平均32回で、医学文献でよく挙げられる14回(±6回)のおよそ2倍だった。
ただし、調べたのは少人数の健康な人だけで、病気の診断に使える段階ではない。
おならの水素は、腸内細菌の活動を映す


おならの主な成分
おならの主な成分は、多くの人では水素、二酸化炭素、窒素で、人によってはメタンも含まれる。
消化器の専門家が2017年にまとめた北米の合意文書によると、健康な人の腸には平均約100ミリリットル(30〜200ミリリットル)のガスがあり、硫化水素などもわずかに含まれる。
腸のガスの出どころは、飲み込んだ空気、腸の中での化学反応、血液からしみ出すガス、微生物の代謝の4つだという。
ガスは、細菌が働いた証
消化しきれなかった食物繊維などの糖質は大腸まで届き、腸内の微生物に発酵されて、水素などのガスになる。水素とメタンは、腸内の微生物による発酵でしか作られない。
人の細胞は水素を作らないので、おならの水素を測り続ければ、腸内細菌がいつ、どれくらい活発に発酵しているかを直接たどれる、というのが研究チームの考えだ。
水素は吐く息とおならの両方から出ていくが、おならの方が水素の濃度がはるかに高く、検出に向いているという。


下着に留めて、おならの水素を測り続ける装置


下着の外側に留める小さなセンサー
これまで、ふだんの生活の中で腸内細菌の働きを時間ごとに追う方法は限られていた。
便や血液で腸内細菌の代謝物を調べることはできるが、採れる回数が少なく、細菌が食事に1時間ごとにどう反応するかまでは追えない。
そこで、メリーランド大学細胞生物学・分子遺伝学科のブラントリー・ホール助教(assistant professor)らは、ふつうの下着にスナップで留める小さな装置を作った。
電気化学式のセンサーで、おならに含まれる水素を昼も夜も記録する。論文によると、おならの水素を連続して測る身につける装置は、これが初めてだという。
「腸のガス版・血糖モニター」
ホール氏は「腸のガス用の持続血糖モニターのようなものだと考えてほしい」と話している。論文では2つの試験を行った。
1つ目は、健康な成人19人が1週間、起きている間に装置を着ける使用感の試験で、参加者は1日11時間以上着け続け、不快感の訴えはまれだった。
2つ目は健康な成人38人の試験で、食物繊維の少ない食事を4日間続けてもらい、3日目に砂糖だけのグミ、4日目に食物繊維の一種イヌリンを6グラム含むグミを食べてもらった。
装置はイヌリンのあとの水素の増加を94.7%の感度(38人中36人)でとらえ、多くの人で増加は食べてから3〜4時間後に始まった。


健康な成人では1日平均32回
大学の発表によると、装置で測った健康な成人のおならは1日平均32回で、医学文献でよく挙げられてきた1日14回(±6回)のおよそ2倍だった。
個人差は大きく、少ない人で1日4回、多い人で59回だった。著者らは論文で、この幅の広さは「1日のおならの量の中央値で人の生理を十分に表せる」という前提に疑問を投げかけると書いている。
ただし報道によると、この数字は健康な成人19人が起きている間に装置を着けた試験から出たもので、においや音があったかどうかは測っていない。
「出ている」と「気づく」は別
古い見積もりが少なかった理由について、大学の発表は、これまでの研究が少人数での体に負担のかかる方法か、自己申告に頼っていたためだと説明している。
自己申告では見落としや記憶違いが起きるうえ、寝ている間のおならは記録できない。また、おなかの感覚の鋭さには個人差が大きく、同じくらいおならが出ていても、感じ方は人によってまったく違うという。
38人の試験では、砂糖だけのグミを食べた日にも約3分の1の人がおなかの不快感を訴えたが、その日の水素の増加はわずかだった、と論文の解説記事は伝えている。


土台にある水素呼気試験
腸内のガスを測って体の状態を調べる方法は、病院ではすでに使われている。腸でできた水素やメタンは血液に溶けて肺に運ばれ、吐く息に出てくる。
これを測るのが呼気試験だ。北米の合意文書は、呼気試験を、乳糖などの糖質がうまく消化できない状態や、小腸で細菌が増えすぎる状態(SIBO)の診断に役立つとしている。
乳糖の試験では25グラム(牛乳約500ミリリットル分)をとってもらい、吐く息の水素が最初より20ppm以上上がれば陽性とみなす。
飲み込むカプセルという別の方法
腸のガスを測る方法には、飲み込む電子カプセルもあり、2018年には腸の中でいくつかの種類のガスを測るカプセルを人で試した初期の試験が、学術誌Nature Electronicsに発表されている。
スマート下着の特徴は、ふだんの生活の中で何日も続けて測れることだ。論文は、人による違いと、同じ人の中での時間ごとの変化の両方をとらえられるとしている。
メタンと便秘の関連、そして残る課題


呼気のメタンと便秘
ガスの種類と体の状態の関係も調べられてきた。北米の合意文書によると、人では呼気試験でメタンが陽性になることが便秘と関連し、便秘の重さはメタンの量と相関していた。
合意文書は、便秘や腸の動きが遅い人では、呼気のメタンが多すぎないか調べることを勧めている。ただし、これは呼気試験で見られた関連で、スマート下着で測ったデータではない。
今回の装置で調べたのは水素だ。
まだわかっていないこと
試験の対象は、使用感の試験が19人、検証の試験が38人と少なく、どちらも健康な成人だけだ。消化器の病気がある人で同じように使えるかは、まだわからない。
検証に使った食物繊維も、イヌリン1種類を1回の量だけだった。ふつうのおならの量の基準もまだない。
ホール氏は「ふつうのおならの出方がどんなものか、実はわかっていない。その基準がないと、本当に出すぎなのかどうかを判断しにくい」と話す。
チームは今後「Human Flatus Atlas」という研究で、全米の数百人を対象に、昼夜のおならのパターンと食事や腸内細菌の構成との関係を調べる。
なお、ホール氏と筆頭著者のサンティアゴ・ボタシーニ氏はこの装置の特許を出願し、技術のライセンスを受けた会社Ventoscityを共同で設立している。
おならの水素を測り続けると、腸内細菌がいつ発酵しているかを追えるんだ。1日平均32回という数字も、実際に測ってみて出てきたものだよ。
ただ、まだ健康な人を少し調べた段階で、ふつうが何回なのかもこれから調べるんだ。
4回の人も59回の人もいるなんて、人によってこんなに違うんだね。ふつうが何回なのか、早く知りたいな!
メリーランド大学のスマート下着は、おならに含まれる水素を、ふだんの生活の中で測り続けるための装置だ。
健康な成人38人の試験では、食物繊維をとったあとの水素の増加を94.7%の感度でとらえ、健康な成人のおならは1日平均32回(4〜59回)という結果も報告された。
一方で、対象は少人数の健康な人に限られ、病気の人で役立つかどうかや、ふつうの量の基準は、これから調べる段階にある。
参考文献:
一次ソース: Botasini, Hall et al., Smart underwear: A novel wearable for long-term monitoring of gut microbial gas production via flatus(Biosensors and Bioelectronics: X, 2025)DOI:10.1016/j.biosx.2025.100699
関連: 腸内ガスを測る摂取型電子カプセルのヒト試験(Nature Electronics, 2018) / 消化器疾患における水素・メタン呼気試験の北米コンセンサス(Am J Gastroenterol, 2017)
発表: University of Maryland(Maryland Today、2026年2月11日)









